表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/46

第十九話:上空での戦い

 <強欲(パルテノス)>が腕を引いたことにより、嵐の中に確かな一本道が出来上がった。その道は『グラニーツァ』に通ずるとベルギアは言うが——


「うっ……どこまで続いてるのよこれ……」


 全長百数メートルに及ぶ巨体なだけあって、腕一つとっても相当な長さがあった。

 それに、<強欲(パルテノス)>もみすみす探索隊の侵入を許さなかった。


「あれは……?ベルギア様!!!」


 雲の様子に異変を感じたナシュイは、真っ先にベルギアに報告する。


「……総員!臨戦態勢に入れッッッ!!!」


 雲が割れ、無数の腕が暴風とともに舞い降りた。閉じられた両手の中に、他の()()()たちを連れて。


()()()()()?何故こんなところにッッ!!!」


 開かれた掌から現れたのは、翼を生やした彫刻の怪物、ガーゴイルだった。


「うわあ!!!何あれ気持ち悪い!!!!!」


 そのグロテスクな造形に、御琴をはじめとした数人の隊員は萎縮した。


「天空都市のかつての守護獣だ、今となっては、その存在意義も失われてしまったがな……」


 大小さまざまなガーゴイルたちが牙を剥き、眼光鋭く探索隊を射すくめる。


狼狽(うろ)たえるな!!!敵の手に落ちた者共に情けなど無用!一斉攻撃だ!!!!」


 ベルギアは先陣を切り、ガーゴイルの群れの中に飛び込んで行った。


「はああぁあぁッッッ…………!!!」


 得意の切断技で、迫り来るガーゴイルたちを一瞬にして粉砕するベルギア。


「射撃用意、撃てぇッッッ!!!!!」


 続いて弓隊長のナシュイが号令を出した。——彼女の弓を引く手に一切の迷いは無い。

 次々に放たれる風の矢は、ガーゴイルたちの翼を容赦無く貫いた。


(ゴァアァア…………ッッッ!!!)


 バランスを崩した怪物たちは谷底まで真っ逆さまだった。


「見捨てられて、こき使われて、ガーゴイルたちも苦しいと思う…………御琴、楽に()かせてあげよ」


「うん、分かった」


 相手は石造りの彫刻、御琴はいつもより硬めの氷塊を作り出した。それにホノカが火球を打ち付け、氷の移動速度に拍車がかかる。

 相容(あい)入れない()()の力、二人はその友情をもって合体技をものにした。


(ボッ…………ボォォォォ!!)


 ホノカの掌から小さな火球が放たれた。御琴に比べれば未熟な魔法だが、その<()()>の強さは彼女にも負けない。


(パキィィンッッッ!!!ビュゴォオオ!!!)


 猛スピードで飛ぶ氷塊が、ガーゴイルたちの眉間に命中した。唸り声一つ上げずに、そっと静かに目を閉じ、彼等のひび割れた体はバラバラになった。


「…………()()は初めてかい?」


 忽然(こつぜん)に姿を現したラードゥがホノカの肩を掴んだ。らしからぬ慎重な面持ちに気圧されて、ホノカは素直に頷く。


「そっか……嫌なら下がってなよ、残りは俺が()るからさ」


 ラードゥは懐から()()()を数本取り出すと、刃に風をまとわせて力強く投げた。


「はは、無事命中!」


 ガーゴイルの首根っこに深く刺さったナイフを見て、すまし顔をするラードゥ。しかし、ナイフを握るその手は微かに震えていた。


「ラードとナシュイ……やっぱりお似合いだね」


 唐突な御琴の耳打ちに、ラードゥは呆気に取られた。しかし体裁を繕うため、すぐさま反論の姿勢に移った。


「なっ!何を言ってるんだい?……それに俺は()()()じゃない、ラードゥだ!何べんも言わせないでくれ!!!」


 ——耳の先がほんのり赤く染まっているのを、彼は隠し切れていなかった。


「ごめんごめん!あ、この波で最後じゃないかな?私とホノカも頑張るから、お互い頑張ろ?」


「そうだねぇ……俺も殺し合いなんて大っ嫌いだしさ、早いとこ片付けよっか」

 

 うわべは取っ付きにくそうに見えるラードゥだが、時折見せる純粋さは——()()()()と瓜二つだった。




 各面々の活躍もあり、ガーゴイルたちは着実に数を減らしていった。

 為す(すべ)を失ったのか、<強欲(パルテノス)>の猛攻も止み、ベルギア一行から歓声が上がる。


「フハハハハ!やっと精魂尽きたか!!!」


 空全体に喜びの渦が巻き起こる。——しかし喜ぶにはまだ早い、とベルギアは皆に告げた。


「上を見てみろ!!!『グラニーツァ』はもう目の前だぞッッッ!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ