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ブラックマーケットに行こう

 電気、水は通っていると確認できた。よかった、トイレはできる。

 必要なものは冷蔵庫や洗濯機などの生活必需品だが、冷静に考えると金がない。

 現実的にブラックマーケットで例のビデオカメラを流すにしても先立つものが少なすぎる。自転車操業で資金ショートしそうだ。そう考えると生活必需品は後回しか? 飯なんかは外食すれば間に合うしな。

 ともすれば。まずは市場調査が一番の課題か? ブラックマーケットに行くのが最優先と見た。財布に十万円を突っ込んで、冷やかしに行くか。


 アパートに鍵を掛けて外に出る。もう陽が沈んでいっている、冷やかしがてら晩飯を食べよう。

 商店街に入る道を歩きながらブラックマーケットの場所を思い出す。確か商店街のダンジョン深度が深いところにズラッといたはず。

 ダンジョン深度とは最大値が拾≪じゅう≫まで定められているダンジョンの深刻度で、壱になるとダンジョンとして認定されるとかしないとか。詳しいことは覚えてない。

 巣鴨ブラックマーケットは壱未満でダンジョンに足の小指突っ込んでるぐらいの深度だ。世界でもあまり多くはないらしいが、点在していると以前聞いたことがある。


 財布を落とさないようにしながら霧島酒店、北側アーケード、そしてブラックマーケット本拠地である第二商店街の入り口に至る。

 比較的霧島酒店や耳島のオッサンの青果店などの普通の店舗が多い第一商店街に対して、第二はアングラに満ち満ちた司法の目の届かない違法なものなんてのも売ってる。奴隷とかはいないけどね。持ち込んだらオッサンが物理的に排除しちゃうだろうし。


 日も暮れて人口の明かりがぼんやり光る通路を通っていく。昔来た時のまま、閉店した店のシャッターの前での蚤の市形式は変わっていない。通行人は剣や盾、魔法用のスタッフを装備している者が多い。掘り出し物を探しているんだろうな。

 俺も人の波に逆らわないようにクラゲのようにフラフラと冷やかす。

 詐欺上等のスキル屋、モグリであろう鍛冶屋、大した腕でないであろう加工屋。昔と変わらず小悪党の見本市だな。


「お、ひょっとこじゃん」


 火男がなまったと言われている剽軽な顔をしたお面を見つけた。


「それがお好みかい?」


 シートに面を並べて、自身は椅子に腰かけている老婆が俺に話しかけてきた。婆さんも阿多福面を被ってノリノリだ。

 俺はひょっとこ面を手に取る。なるほど、肉も厚くて出来もいい。これはいいな、買うか。


「いくらだい?」


「ひょっとこは八百円だね。いい出来だろ? 旦那が趣味で作っててねぇ」


 財布から千円を出して二百円のお釣りをもらう。なるほど、だから場所代なんていらないここで商売してんのか。


「毎度。お兄さんはここは初めてかい?」


「昔来たきりだな、オススメの店なんてのはあるかい?」


 顔は見えないが婆さんの雰囲気が笑った気がした。


「おかしなことを聞くね。この場所は自分でいいものを見つけるのが楽しいってのに」


「それが騙されてもかい?」


「そうさ。ここは正規品じゃなくて夢を買う場所なんだよ。もしかしたらを楽しむためにハイランダーや業者はここを訪れる。じゃなきゃあそこのスキル屋はとっくにぶっ殺されてるさね」


 婆さんの指さす、先ほどのスキル屋を見る。今も口八丁手八丁でハイランダー相手に何かを売りつけているようだ。


「アンタもここで物を売るときは気をつけな。高くするなら掘り出し物を、遊びでやるならとびきり安くがここの流儀さ。これを守らないと耳島も護っちゃくれないよ」


「……ふーん。覚えとくよ」


 ひょっとこ面を被り、面屋の前から辞する。婆さんの言葉が俺の中で反芻する。

 高くするなら掘り出し物を、ねぇ……。



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