運命のネジ、キ動
「なあ、兄さん。いつまで、髪で顔隠すつもり何だ?」
4月の、太陽微笑む、穏やかな朝のことだった。
夢護迅は、テーブルに頬杖をつきながら、朝食を作る兄である、緑のタンクトップの引き締まった身体の男、夢護廻児に、語りかける。
「迅君……。僕は、目を隠していれば、爽やか男子でいられるけど、――解っているだろう、君ねぇ?」
そう言うと、夢護廻児は、キレ気味に、髪をたくし上げ、あまりにも男らしい、まるで、周囲の物を、干上がらせる様な熱い瞳を、15秒ほど、見せつけると、元に戻した。
「改めて見ると、まるで、叫びたくなるほど、熱い瞳だな」
「よし、今日は、プロテイン祭りだ。目玉焼きに、ウインナー、豆腐、納豆、ササミ、プロテインシェイク……」
「悪かった! アニキ!」
「その呼び方……。反省していないな……」
こうして、夢護廻児による、朝食が、出来上がった。
内容は、食パンに、程よい焦げ目がついた、目玉焼きを乗せた物、噛めば、音がなりそうな、薄皮のウインナー、刻みネギと、ポン酢の乗った豆腐、最後に、チョコ風味の、プロテインシェイクだった。
「「いただきます」」
そして、ある程度、食事に、手を付けた所で、夢護廻児が、夢護迅に尋ねる。
「そう言えば、父さん、僕を呼び出す頻度が、増えたけどさ、忙しいのかい?」
「未知の、幽星の調査や、カフェテリア財団の研究が忙しいってさ」
「そうかい。けどさ、僕も、財団の系列の、カフェのバイトで、忙しいんだ。それに、僕は、筋肉の世話しなくちゃならないんだ」
カフェテリア財団は、世界中に支部が、ある幽星を、管理、保護、研究する、団体で、様々な事業に、手を出している。
中でも最も力を注いでいるのは、学園事業で、様々な、幽星専門の人材を、人間、幽星、半幽星、問わず育成している。
「ごちそう様でした」
二人が食事を、終え、夢護廻児は、皿洗いに、夢護迅は、急ぎで、高校への支度を始める。
ピンポーン、と玄関のインターホンが鳴り、夢護廻児が、画面を確認すると、夢護迅を、呼び出した。
「おーい、迅君。君のガールフレンドが来てるよ」
「うるせえな、アニキ。ただの幼なじみだってば」
夢護廻児は、髪で隠れていて夢護迅からは、確認が出来ないが恐らく、生暖かい、気味の悪い目つきで、しかも焦がしたカラメルのような声で、言っていた事は、間違いなかった。
「開けたぞ、ながる」
「わーい! 会いたかったです! 迅君!」
夢護迅が、ドアを、開けると、透き通る様な、水色の髪の、美少女が、いきなり、抱きついてきた。
夢護迅の、幼なじみの、星王ながるだ。
「どうした、ながる? スキンシップが、激しすぎない!?」
夢護迅は、やんわりと、幼なじみの星王ながるを、身体から、引き剥がすと、星王ながるは、少し物憂げな顔で言った。
「もう、二度と会えなくなるかもしれないと、思うとね、最期に」
しかし、戸惑いつつも、夢護迅は、星王ながるの、真の意図を、知らず、こう答えてしまった。
「何いってんだよ、俺達、幼なじみだろ」
「ですよね……。ははは、行きましょっか、学校」
夢護迅と、星王ながるは、手をふる緑のタンクトップの、目隠れアニキこと、夢護廻児に、見送られながら、二人で、エレベーターに、乗り込んで行く。
通学路を、しばらく進むと、二人が
通う、カフェテリア財団専修高校が、見えてきた。
カフェテリア財団専修高校は、東京では名のしれた、幽星対策専門の高校で、幽星の研究者である、夢護迅の父親も、通っていた名門。
「ねぇ、あの、錆びた黒い大きなネジ頭の幽星……」
すると、星王ながるが、通学路のビル街で、暴れている怪物、またの名を幽星を、指さした。
その、幽星は、全身が、錆びに覆われており、ビル3階建て程の身長、そして特徴的なのは、円柱状の平べったい頭部で、まさに、螺子の巨人。
「あれ、もしかして、ネジキの、おっさん!?」
「あの、雷門ネジキさんが!?」
雷門ネジキ。
酔遁狂建設の、社長であり、自らは、悪徳建設会社と名乗っているが、過去に、幽星であるにも関わらず、流星王から、世界を救った人物でもある。
「クソっ、なんて硬い、装甲なんだ」
様々な、生徒や、星狩り(幽星を、狩る免許を、持った人間達の総称。ここでは大人達を、指す)
が、武装を、展開し、攻撃するが、ネジキには、殆ど攻撃が通っていない。
ネジキは、そんな、星狩り達を、
腹部にある自身のエネルギー源である幽流炉から、熱線を放出し、追い払う。
「ネジキさんが、可哀想です……」
「ながる、ネジキのおっさんが、操られてるとでも言いたいのか?……解った。戦おう」
「はい! 私が、サポートします!!」
夢護迅は、星王ながるが、うつむき気味に、瞳を、潤ませたのを見逃さず、ネジキと戦う事を決意したことを伝えると、星王ながるは、さっきまでの表情が、嘘のように明るくなった。
「よし、いくぜ!【起動 芥子の化身】!」