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秘密のクロマル  作者: はなまる
終章
94/96

第五話 カルマイナの使節団

 二年後、エクーの星の使節団が地球にやって来た。


 ようやくの公式訪問。もうずいぶん前から、世界中が大騒ぎだ。


 何しろ(おおやけ)に告知されて、他の惑星の人々がやって来るのだ。ついこの間までテレビでUFOのスペシャル番組をやっていたのに、急に『本物が来ます』と正式発表されて、みんなすぐには信じられなかったみたい。


 連日カルマイナに関する、様々な噂が飛び交った。


 人々の一番の関心ごとは、当然ながら『異星人は何を目的で来るのか』。


 これには、カルマイナの代表者からのホログラムが公開された。穏やかに歌うように話すカルマイナの人たちは、あっという間に地球人を魅了した。


 けれど『あんなのは嘘っぱちだ! きっと侵略目的だ!』と思う人も少なくなかった。地球人が天体望遠鏡でもお目にかかれない遠い星から来る人たちだ。戦争になったら勝ち目はない。


 テレビでは『みなさん落ち着いて下さい。彼らは非常に友好的で、平和を愛する人々です』というテロップが、二十四時間エンドレスで流れている。


 各国同時の公式発表から三ヶ月、全世界はアリの巣をひっくり返したような騒ぎが続き、その混乱が収まらないうちに、使節団到着の日を迎えた。


 各国の代表が出迎える中、NASAのスペースシャトルが先導して、超巨大なシャンデリアのようなカルマイナの宇宙船団が見えた時は、世界中の人が度肝を抜かれた。


 そして、その巨大宇宙船よりも人々の視線を釘付けにしたのは、オレンジ色の光に包まれたガルーラと、色とりどりの風帯を棚引かせたガルーラ乗りの一団だった。



 一番先頭をゆく白いガルーラ。手足の先と耳の先だけが薄っすらと黒い。シラタマだ!

 乗っているのはもちろんエクー。錦糸で縁取られた飾り紐を頭に巻き、棚引く帯の銀糸の複雑な刺しゅうが、キラキラと風に舞う。


 他の人の衣装より、一段階豪華でいかにも特別感がある。久しぶりに見るエクーは、なんだか男っぷりが上がったようだ。


 切れ長の目、キリリとひき結んだ口元。晴れの舞台にあって余裕がある感じが、どうにも憎らしい。


 ま、負けるもんか。僕だって、あと十年もすれば、きっとあのくらいの貫禄を……。うん、頑張ろう……。


 一番後ろの、一際身体の大きな真っ黒いガルーラ。クロマルだ! 逞しくなったなぁ。

 赤い髪のガルーラ乗りの中にあって、唯一の黒い髪を隠すために、フードを目深に被っている。


 元気そうだ……。別れた時と、全然変わっていない。クロマルの放つ、オレンジ色の光を纏い、真っ直ぐ前を見据えている。


 補助棒の使い方だけは、ずいぶん上達したみたい。どんな旅をして来たのだろう。早く戻って、聞かせて欲しい。


 僕が二年間、ずっとずっと待ちわびた人。



 やっと、やっと帰って来た。



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