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秘密のクロマル  作者: はなまる
第四章 二人目のマスター
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第一話 13.8センチ

 結局私は丸二日間眠っていた。


 その割に消耗していないのは、エクーが宇宙人的知識で回復に努めてくれたのと、シュウくんのおかげだ。


 シュウくんは二日間、ほとんど私に付き添って存在力を渡してくれていたらしい。


『13.8センチ』


 それが私の今の大きさだ。


 不思議なことに、このサイズまで小さくなってしまったら、私以外の普通の大きな人たちに感じていたコンプレックスが、キレイさっぱり消えていた。


『生まれ変わったよう』と言えば聞こえが良いが、ただ単に諦めが付いたのかも知れない。中途半端な大きさだったから、人類の仲間に入れてもらえないことで、拗ねていたような気がする。


 ここまで来て、やっと腹が(くく)れた。


 そしてクロマルがシュウくんとマスター契約を結んでしまった。後戻りできないくらいシュウくんを巻き込んでしまった。


 クロマルとの契約は『成長期を終えた後に、約十五センチ』というものらしい。シュウくんは『僕、180センチ以上になるらしいよ!』などと嬉しそうに話していたけれど、問題はソコじゃない。


 人間は普通、ある日突然十五センチも小さくならないでしょう? 頭を抱えずにはいられない。親御さんに何と説明したら良いのやら。


 とはいえ、骨端が閉じる成長期の終わりまでは、まだ猶予期間はある。自分の問題として考えられる年齢になったら、改めて話し合おうと思う。


 私の存在力暴走が引き起こしたのは、悪いことばかりではない。なんと、シラタマがエクーとマスター契約を交わしてくれたのだ。


 シラタマは、クロマルのガールフレンドの白い猫。手足と耳の先だけが、薄いこげ茶のチャーミングなお嬢さんだ。


 エクーは『再びガルーラ乗りに戻れる日が来るとは……』なんて呟きながら、男泣きしていた。良かったねぇ、エクー!


 シラタマは、クロマルから溢れた私の存在力を吸収して成長したせいか、私にもとても懐いてくれている。


 女の子は身体も毛も柔らかくて、抱きついた時の感触が、クロマルとは全然違うの! 野良ガルーラだったので、お風呂に入れてからうちの子になってもらった。

 もともとキレイな猫だったけれど、洗ったら更にべっぴんさんになった。


 極上の白と黒のもふもふに囲まれた生活だ。好きな時にお腹の毛に、全身で埋まり込む。なんて幸せなんだろう!


 それから――。私、クロマルに乗れるようになったのですよ!


 ふよふよと浮かぶクロマルに乗って、家の中を飛び回るの、めちゃくちゃ楽しい!


 クロマルは、ずいぶんとスムーズに飛べるようになった。エクーの言っていた通り、夜な夜な一緒に夢の中でイメージトレーニングを繰り返している。



 ある日、エクーが真面目な顔をして言った。


「そろそろ、飛ぶ練習をはじめるとするか」


 クロマルに乗って飛ぶ練習? もう出来るようになりましたよ!


 天井付近を、ふよふよと漂っているクロマルを指差しながら、軽くドヤる。


「ガルーラが本気で飛んだら、こんなもんじゃないぞ?」


 私の三倍くらいの、ドヤ顔で言われた。


「家の中のガルーラなど、飼い猫のようなものだ」


 ガルーラが、宇宙怪獣に分類されることを、私はすぐに忘れてしまう。だってクロマルもシラタマも、見た目は本当に猫と区別がつかないんだもの。


 ともかく、エクーの宣言通り、私とクロマルの飛行訓練が開始されることになった。




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