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秘密のクロマル  作者: はなまる
第四章 二人目のマスター
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第十三話 溢れる想い

「うむ。やはり幼い個体の出力は、抑えられているようだ。シュウの洩れている分は、何とかせんといかんな」


「えっ! 僕、洩れてるの? だから身長が伸びないの?」


「そうかも知れん」

「その漏れちゃったの、もしかして……」


「ああ、クロマルが回収している」


 クロマルがうちでごはんを食べなかった時って……。もしかして、シュウくんのダダ漏れ存在力をもらっていたのかなぁ。


「そういえば最近、僕のあとをやけに着いて来ていたかも」


 やっぱり! 私が不甲斐ないばっかりに。シュウくん、なんかごめんね!


「どうせ洩れちゃってた分でしょう? クロマルがもらってくれたなら良かった」


 シュウくんが、少し照れ臭そうに笑う。もう! なんて良い子なんでしょう!


 でも背が伸びないのは困るよね? エクー、どうにかならないの?


「一族の研究機関に問い合わせてみよう。地球人の特殊性についても、報告しなければならないし」


 ガルーラを介さずに存在力のやり取りをしている地球人は、エクーの一族にとっては、やはり大きな関心ごとなのだろう。


「宇宙は広いな。まだまだ驚きと発見に満ちている」


 エクーが珍しく、辺境宙域の冒険家らしいことを呟いた。


「ユエはこの星のことを、知っていたのかも知れんな。だから子供を抱いて、この星を目指した」


『ユエ』はクロマルのお母さんの名前で、エクーのパートナーだ。


 クロマルを地球に送り届けるために、燃え尽きることを選んだユエさん。遠い昔に、最初のガルーラの子供を守って燃えた、名前も知らない母ガルーラ。


 私はまだまだ若輩者で、子供を産んだことも、欲しいと望んだこともない。あなた達には、覚悟も経験も遠く及ばないだろう。


 けれど、クロマルと一緒に行ってみようと思う。行き着く先の、その向こう側まで。


 クロマルがエクーを連れてきてくれた。クロマルがシュウくんと私を繋いでくれた。


 そして今、人々の手に密やかな明かりが灯る。柔らかに、暖かい色で瞬きながら、想いが届く。


 見れば私のクマの手も、ぼんやりとオレンジ色に染まっている。私の手は、この明かりを届けることが出来る。


 両手を上げ、トートバッグから身を乗り出して、シュウくんの腕に手を添える。私の存在力は正しく届くだろうか。 


 キミが一緒に戦うと言ってくれたことを、私はこれからの人生で、繰り返し思い出すだろう。


 エクーに向けて両手を広げ大きく振る。オレンジ色の灯りが、サイリウムのように尾を引いて揺れる。


 私とクロマルのために、遠い星から来た小さな人。諦めなくて良いと、言ってくれた人。


 クロマルがいつのまにか戻ってきて、シュウくんの足元でにゃーんと鳴いた。


 ふふふ。ほんと猫みたい。


 トートバックから飛び降りて、クロマルの首に抱きつく。


 ほら、これ。クロマルのための力だよ。あげるよ、あげる。ほら、受け取って!


 私は少し調子に乗っていた。オレンジ色の光の渦に、酔っているみたいだった。嬉しくて、感情が昂ぶって、抑えられない。


 誰かに何かしてあげたくて堪らない。手の先から腕、腕から全身へ。熱が拡がってゆく。


 止まらない。


「いかん! 暴走だ! シュウ、クロマルとカナリを回収してくれ!」


 クロマルが、びっくりしたみたいに目を見開いている。シュウくんが慌てて、クロマルと私をトートバックに入れて走り出す。


 熱に浮かれたみたいに、ふわふわと心地よい。クロマルの首にしがみついたまま、急速に眠りに引き込まれてゆく。


 そうして、私は――。



 どんどん、小さく、小さくなっていった。






続きは11時。

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