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秘密のクロマル  作者: はなまる
第四章 二人目のマスター
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第八話 冒険家エクーと調査準備

「地球人の手から、存在力が流れているんだ。ほんの微量だがな。おそらく何十年も続けて、ようやく数センチ分といった量だろう」


「垂れ流しって事ですか?」


「もう少し考察と外に出ての検証が必要だが、自分の意思で触れる事が発動キーになっているのではないか?」


 いや、聞かれても私わかりませんて。第一存在力の定義すら理解できていない。クロマルのごはん、ってくらいに考えてましたから。


 それに、外に出て検証って……。他の人の存在力を調べるって事?




▽△▽



「へぇー! エクーの仕事、冒険家なんだ!」


「冒険家というか、辺境宙域や未開発惑星の探索と調査だな。宇宙開発は金も時間も莫大な一大事業だ。その点ガルーラ乗りは比べものにならないくらい身軽だ」


 チクチクと縫い物をしながら、エクーの話を聞く。

『未開発惑星の探索と調査』かぁ。パワーワードてんこ盛りだな。


「地球は辺境宙域の未開発惑星なの?」


「未開発というわけではないが、いかんせん他の文明がある星と離れ過ぎている。コストがかかり過ぎるんだ。よほど物好きなガルーラ乗りくらいしか、近寄りもしないな」


 グレイさんとか、ちょっと来てるっぽいですよ?


「ああ、こんな感じの人たちかい?」


 エクーが牙の装置を起動して、ホログラムが浮かび上がる。のっぺりとした顔、大きな目。すっかり地球でお馴染みの宇宙人だ。


「そう! その人たち! お知り合い?」


「彼らは故郷の星を失ってしまった流浪の民なんだ。大船団で移住先を探して、もう長いことさすらっている」


 グレイさんたちは、エクーに辺境調査の依頼をくれるお得意様なのだそうだ。

 あの小さくて無表情に見える宇宙人に、そんな事情があったのか。なんとも気の毒で物哀しい。あ、でも侵略されちゃったりするのは困ります!


「非常に平和的な民族だよ。だからこそ、なかなか安住の地が見つからないんだ」


 むむ。という事は、侵略的な方法を取る人たちも存在するのか?


「過去にはそういった悲劇が、起きてしまった事もあるな」


 なるほど。そのへん詳しく聞きたいです。



 エクーの話は面白すぎて、すぐに縫い物の手が止まってしまう。そして肝心の存在力の話から逸れてしまう。


 私とエクーは、現在チクチクとぬいぐるみ加工中だ。


 私の今の身長は約六十センチ。枕より若干大きいくらいだ。外に出るにあたり、生身では無理なので、クマさんのぬいぐるみの中身を出して、着て行こうと思っている。


 うちに私サイズのぬいぐるみは、クマとアザラシだけだったので、必然的にクマさんに決まった。アザラシでは身動きが取れない。


 ぬいぐるみのふりをするなら、動けなくても問題ない気もするけれど、なにかあった場合はやはり困るだろう。


 エクーはチクチクというより、パチパチやっている。ホチキスみたいな感じ。ハンドミシンはネットで見たことがあるけれど、それよりも作りが単純に見えるのに、使い勝手が良さそう。


 下糸とか無いように見えるけど、どうなってるの? あとでちょっと使わせて欲しい。糸が特殊なのかな?


 ちなみにエクーは、ぐでたまのぬいぐるみを着る。だってちょうどいい大きさで、手足のあるぬいぐるみ、他にないんだもん。


 一応ぐでたまのキャラクターを説明して、シャキシャキ歩かないように言っておいた。……要注意点は、ソコではないかも知れないけれど。


『とろーり液状なんです』と私が説明した時の、エクーの表情が忘れられない。


 さて、私とエクー。二人でぬいぐるみを着て、地球人の存在力とその流れを調査に出かける。調査するのはエクーで、エクーを運ぶのはクロマルだ。


 つまり私は特に行く必要はない。強いて言うならば現地の通訳兼案内係かな? 翻訳うちわは、あまり離れていると言葉を拾えない。


 私が着いて行くのは、純粋に面白そうだからだ。他の星の人と一緒に、地球人の隠された能力を探りに行く。こんな楽しそうなイベント、見逃したらもったいないじゃない?


 同じ理由で、シュウくんも誘おうと思っている。断じて、私を運んでくれる大きな人が必要だからではない。本当だよ?


 もちろんその前に、色々話さなければならないことがある。シュウくんの気持ちにきちんと向き合おうと思っている。でも、ソレはソレ、コレはコレ。


 シュウくんは、このワクワク感、わかってくれるタイプの人だと思うんだ!


 恩返し的な意味もあったりする。夏祭り然り、猫集会所巡り然り。シュウくんは私を、とても楽しいところに連れて行ってくれた。



 このワクワクイベント、ぜひ一緒に楽しみたい。






続きは10時投稿。

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