表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密のクロマル  作者: はなまる
第四章 二人目のマスター
50/96

第二話 眠りのリズム

「昨夜、カナリの存在力の流れや、幼ガルーラの存在力の処理の様子を、データに取らせてもらった」


 エクーが眠そうに、目をしばしばさせながら言った。


「やはりカナリが存在力を渡す際、負荷が少な過ぎる。“差し出されている”と言っても過言ではないな。これは我らよりも、母ガルーラとのやり取りに近い」


 その弊害で足りなくなってしまったの?


「いや、効率の問題だな。幼ガルーラが受け取りきれずに、溢れてしまっている」


 えーっ、勿体ない!


 エクーが壁に、折れ線グラフを表示する。


「眠りの深さと、存在力を数値化したグラフだ。こっちがカナリ、こっちが幼ガルーラ。グラフの見方はわかるか?」


「はい。折れ線グラフ、エクーの星にもあるんですね!」


「折れ線? ああ、なるほど。面白い表現だな」


 グラフはレム睡眠の時に、存在力が多く渡されている事を示している。レム睡眠中は夢を見ることが多いらしい。だからクロマルと飛ぶ夢を見るのかな?


 それと……。クロマルのこと、名前で呼んでいいですよ! 私は気になりません。


 契約者を持つガルーラの名前を呼んで良いのは、そのガルーラと契約者が許した者のみ。


 誇り高き孤高の獣と、唯一無二のその契約者。うーんカッコイイ!


 クロマルがエクーに顔を寄せ、長い尻尾でふわりと包み込む。クロマルの許可ももらえたらしい。


 エクーが「それは光栄だな」と、嬉しそうに鼻を擦りながら言った。だんだん普通の兄ちゃんに見えて来たぞ!


「このあたりを見てくれ。クロマルとカナリの、眠りの深さのタイミングが合っている。この場合は、効率よく渡されている」


 エクーが貸してあげた爪楊枝で、グラフを指し示しながら説明する。


「ここで大きくズレてしまうから、二時間ほど眠ったら、一度カナリだけ起きると良いかも知れん」


 それは……! まさに授乳中のお母さんみたい。大変そうだけど、在宅ワーク中の私なら、なんとか頑張れるかも。


「色々試してみよう」

「はい!」


 エクーの心強い言葉に、非常に良い返事をしてしまった。効率良く存在力を渡せれば、クロマルの成長に足りるだろうか?


「それは今のところ、何とも言えんな」


 エクーの言葉を濁す様子に、がっくりと肩が落ちてしまう。やっぱり足りないのか。


 私がぐーすか寝ているうちに、無駄にしてしまった存在力を、かき集めに行きたい。


「エクーの一族の人は、存在力が足りなくなったりしないの?」


「そういう前例はないな。我らの眠りは、ガルーラと一致している」


 眠りのバイオリズム、契約すら忘れていた私。エクーの一族の人たちが、ガルーラと一緒に過ごしてきた長い時間、知識や技術、心構え……。


 何も知らなかった私には、とても太刀打ち出来るものではない。


 だからと言って諦める訳にはいかない。私はたった一人のクロマルのマスターなのだ。


「存在力については、気になることがある」


 エクーが顎を撫でながら言う。考え込んでいる時に、何度か見た仕草だ。


「この星には、存在力が漂っているんだ。こんな星は見たことがない」


 私が無駄に垂れ流してしまった分ですかね?


「カナリ一人の量とは、到底考えられんな」


 クロマルが、それを集めて使うことは出来ないの?


「それも調べてみないとわからん。それと、クロマルには、もうひとつ回路が形成されつつある」


 回路?


「存在力を受け取り、取り込むための器官だ。人間の目で確認する事は出来んよ」


 それってもしかして……。


「ああ。クロマルは、もう一人マスターを選ぶ準備をしている」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ