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幕前
朝、クロマルが猫用ドライフードを、カリカリと齧る音で目が覚めた。
もともとアラームとは無縁の生活だけど、今日は少し寝坊してしまったみたい。
おろしたての靴を初めて履いた日のような、わくわくする良い朝だ。
思い切り伸びをする。
昨夜はベッドにも入らず、クッションの上でクロマルと、重なるようにして眠ってしまった。
でも、覚えている。
私は誓いの儀式を済ませて、クロマルの正式な契約者となった。
存在力とやらが足りない問題はあるけれど、何もわからずに小さくなっていた昨日までと比べたら、なんて素敵な朝だろう。
私が目を覚ましたことに気づいたクロマルが、少し照れ臭そうにみゃーんと鳴いた。