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秘密のクロマル  作者: はなまる
第三章 秘密のクロマル
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第四話 仮説

 クロマルが毎日外に出るようになってしばらくして、私の『毎日2ミリ小さくなる』という法則が崩れ出した。


 小さくなるのが止まったわけではないらしく、不規則になったのだ。その変化に、私は戸惑いを覚えた。喜んで良いのか、どうなのか……。


 私は今、約85センチ。三歳児くらいの身長だ。このあたりで止まるならば、この身体で生きてゆく覚悟を決めなければならない。


 そんな宙ぶらりんな気持ちを持て余して、私は検証をすることにした。


 小さくなる日と、ならない日。その日の行動や食べた物を書きとめて、比べてみることにした。


 私の行動からは、法則性が見えて来ない。


 けれど、クロマルの行動に目を向けた時。私が小さくなる日とピタリと一致した。


 クロマルは外に遊びに出掛けると、家でごはんを食べない日がある。どこかで食べ物をもらったりしてあるのだろうか? そんな日の次の日、私は小さくなっていないのだ。


 クロマルが出掛けても、家でごはんを食べた日は、いつも通りに小さくなる。


 一度、思い切って丸一日、ごはんを抜いてみた。エサ入れのお皿の前でみゃあみゃあと鳴く様子に、罪悪感が半端なかったけれど。


 その次の日、私は小さくなっていなかった。


 もしかして……。


 私が小さくなるのは、クロマルと関係があるのだろうか?


 考えられるのは、クロマルの食事か食欲だろうか? クロマルはごはんと一緒に、私の『何か』を食べているのだろうか。


 それって……妖怪か悪霊みたい?


 ごはんを食べ終わったクロマルが、食後の毛繕いをはじめる。


 何となく不服そうに見える背中を、プスプスと指でつつく。つついた部分の毛を、ピピピッと揺すって迷惑そうに振り向く。



 例えば。クロマルが原因で私が小さくなっているとしたら――。


 私はクロマルを手離すのだろうか?

 

 クロマルをどこか遠くへ捨てに行く。ベランダのサッシを締め切って、中に入りたがるクロマルを締め出す。


 考えただけで、胸が締め付けられた。私にそんなことが出来るのだろうか。


 クロマルが長い尻尾をふわりと私に巻きつけるようにして、そのままスルリと素知らぬ顔ですり抜ける。あ、行っちゃうのかなと思ったら、戻ってきてストンと私の膝の上に腰を下ろした。


 大きくなったなぁ。私が小さくなった分を差し引いても、クロマルは大きくなった。無理やり私の膝に乗って、はみ出している尻尾をフリフリと振っている。


 私は今、クロマルを捨てに行くことを考えていたんだよ? 悪い妖怪なら、退治しなきゃダメなのかなって思っていたんだよ?


 私は呑気に喉をゴロゴロと鳴らしているクロマルのほっぺを、びよーんと引っ張った。


 私にそんなことが出来る筈がない。


 クロマルは、普通の猫ではないのだろうか? 夢の中でクロマルは、夜空を駈けるように飛んでいた。



 クロマルとはじめて逢った日のことを思い出す。クロマルは迷い猫だった。あの日。冷たい小雨の降る真冬の朝。



 大きな公園の坂道に、クロマルはびしょ濡れでうずくまっていた。




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