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秘密のクロマル  作者: はなまる
第二章 僕とお姉さんの夏休み
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第一話 僕に出来ること

 お姉さんは、だんだん小さくなることを隠している。


 子供のふりをしているし、人気のない夜中や朝にしか外に出て来ない。自分が普通でないことをわかっていて、隠れるように暮らしている。


 お姉さんが隠れているのは普通の人たちからなのだろうか。それとも僕には太刀打ちできないような、敵や追っ手がいるのだろうか?


 お姉さんにまつわる疑問はたくさんある。


「なぜ小さくなるのか」

「そもそも何者なのか」

「小さくなるのは想定内のことなのか」

「どのくらいまで小さくなるのか」


 僕は全ての疑問を、一旦忘れようと思う。知りたくないと言えば嘘になるけれど、秘密を突きとめたって仕方ないんだって気がついた。


 お姉さんが僕に打ち明けてくれなければ、意味なんてない。僕は、今の僕の出来ることを、探さなくてはならない。


 ボールペンをくるくると回しながら、思いついた事をメモしていく。


『未来人・宇宙人・異世界人の場合』

・できる限り力になる

・帰る方法を一緒に探す(でも帰ってしまうのは嫌かも)

・敵がいるなら僕も一緒に戦う(出来るのか?)

・現地人(地球人)にしか出来ないことを協力する。 


『特異体質や病気の場合』

・小さくなる病気について調べる

・治療方法を探す(命の危険は?)


『小さくなって困っている事を手助けする』

・話し相手になる

・悩みの相談にのる

・行きたい所に連れて行ってあげる

・重いものや大きい物を運んであげる

・高いところの物を取ってあげる


 最後の方……なんか普通の親切な人みたいだな。年配の人向けのボランティアする時の注意事項みたい。


 僕はただの中学生だ。特に選ばれた存在でも、何かに目覚めた訳でもない。僕にできることなんて、たかが知れている。


 おまけに、いくら小さいからと言って、お姉さんは大人だ。大人が中学生に相談ごとなんて普通はしない。そして力になるには、困っている事を打ち明けてもらわないと話にならない。


 せめて僕がお姉さんと、同じくらいの年齢だったら良かったのに。


 無力感に圧し潰されそうになって、机に突っ伏してため息をつく。でもこのまま何もしないでいるのは嫌だ。


 具体的に考えてみよう。


一、お姉さんの秘密を知らないふりして、影ながら見守ったり、力になったり、守ったりする

二、お姉さんの秘密を知っていることを明かして、全面的に協力する


 これは一番だ。お姉さんは全力で隠れている。僕が秘密を知っていることに気づいたら、どこか遠くに行ってしまうかも知れない。


一、隣の部屋に住む、中学生として協力する

二、雨の日に会ったお兄さんとして協力する


 これは二番かな。子供のふりをしているお姉さんなら、僕を少しは頼ってくれるかも知れない。

 隣の部屋の中学生としては、関わり合いにならないにようにしよう。僕の方が混乱してボロを出してしまうかも知れないし、お母さんに秘密を知られてしまうのも困る。


 もうすぐ夏休みがはじまる。そうすれば部活は毎日あるけれど、宿題もきっとたっぷり出るけれど、僕がお姉さんのために使える時間は、少なくはないはずだ。


 冷蔵庫から牛乳パックを取り出して、直接ゴクゴクと飲み干す。夏バテなんかしてる場合じゃない。


 エクスカリバーやレベルアップポーションを持っているのは、ゲームの中の僕だけだ。今の僕が手にする事が出来るのは、牛乳が関の山だ。


 お姉さんの圧倒的に不思議な事情に怖気づきそうになる。


 けれど、後に引く気はない。


 僕はお姉さんと、ほんの少しでも関わり合いになっていたい。


 欲しいものはクリスマスの朝、枕元の靴下に入っていた。困ったことは、大人がどうにかしてくれた。


 そんな子供みたいな僕は、あの雨の日に置いて来た。



 僕はほんの少しでも、今より強くならなくてはいけない。



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