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秘密のクロマル  作者: はなまる
第一章 小さくなる日々
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第十四話 僕と深夜のお姉さん

 ある日の夜。


 明日は土曜日だから大丈夫かなと、つい夜更かししてしまった。ゲームに夢中になって、気づいたら夜中の二時を回っていた。明日の部活は午後からだけど、さすがにもう寝ないとヤバイなぁと思いながら、キッチンに向かった。


 冷蔵庫から牛乳を出して飲んでいると、ガチャリと隣の部屋のドアが開く音がした。


 キッチンの鎧戸から覗いたら、お姉さんがダボダボのジャージを着て部屋の鍵をかけていた。袖と裾を何度も折り返したジャージは上下揃っているのに、何故かとてもチグハグに見えた。

 僕は少し迷ったけれど、夜中に女の人が一人で歩くのは危険なので、後をついて行くことにした。


 夜の尾行は難易度が高い。夜だというだけで、対象者の警戒心は無意識に高くなる。人混みに紛れることができないし、雑音も少ない。見失うリスクを覚悟の上で、距離を置くことも必要だ。


 と、敏腕探偵が言っていた。


 僕は絶妙な距離を置いて、お姉さんの背中を見ながら歩く。帽子を被っていないと、よりいっそう小さく見える背中を見ながら歩く。

 子供ぶりっ子をしていないお姉さんは、小さくてもやっぱり大人に見えた。


 人気のない商店街を抜け、公園に入って行ったお姉さんは、まっすぐ鉄棒のところまで歩いて、おもむろにブラーンとぶら下がった。


 まさか夜中に鉄棒しに来たの?


 ぶら下がったお姉さんが、前後にゆっくり揺れる。揺れながら歌を歌いはじめる。


 お姉さん! なんか怖いよそれ!


 僕はちょっと涙目になった。


 でも、ボディーガードのつもりでついて来た僕が、守るべきお姉さんに恐れをなして、逃げ帰るわけにはいかないじゃないか!


 いやしかし! 相手は、だんだん小さくなっていく、ちょっと普通じゃない人だ。


 お姉さん戻ってきて。そしていつも通りへにょっと笑って! いやいや、待って! やっぱり今笑うのダメ。きっと余計に怖いいいっ!


 僕は更に涙目になった。


 耳を澄ませて良く聞けば、お姉さんが歌っているのはさっきまで放送していた深夜アニメの主題歌だった。呪いの歌じゃなかったことで、僕は心底ホッとした。


 そのあとお姉さんは、ブランコで立ち漕ぎしたり、ゾウの滑り台を滑ったりと、割と大人げない感じで遊んでいた。

 ご機嫌な様子だったけれど、幼児サイズの人が夜中に公園で歌いながら遊んでいる光景は、やっぱり少し怖かった。


 僕は帰ってからも目が冴えてしまって、朝まで一睡もできなかった。



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