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最高の料理

作者: 雉白書屋

 グルメであり、料理人でもある私の彼は、最高の料理を食べたいと常に息巻いていた。

幼い頃からその道を目指していたうえに優秀だった彼はあらゆる国の料理をマスターし

それら、またその組み合わせた料理を私に試食するよう頼んだ。

 当然、快く了承し、彼と私の二人三脚は何年も続いた。

 そして


「完成だ……」


 私は訊き間違いかと思った。なぜなら、そう呟いた彼の前には料理がなかったのだ。

いるのは私だけ。え? と疑問を呟きもしなかったのは

その迫力に押されたからだ。

 彼の目は狂気と言えるほど爛々と光っていた。

思えばここ数日、様子がおかしかった。

興奮を抑えきれない、でも、それはマラソンランナーのように

ゴールテープが見えたからだと思ってた。

 しかし、今、ストンと腑に落ちた気がした。

私も何か手伝えないかと料理の本を読み漁った経験がある。

 記憶が、頭の中でパラパラと捲られるページ。

止まったとき、そこにあったのは……


 フォアグラ。


 馬鹿な私にももうわかった。

 そう馬鹿だ。今更気づいても、もう遅い。

逃げようにもソファから立ち上がるのに毎回苦労するような私には無理だ。

現に今だって膝が重い。

 ああ、おしまい……ん? なに、これ?

 息を吐き、覚悟を決めたとき、彼は私の前に一枚の写真を差し出した。

 写っていたのは幼い頃の彼と


「母さん……」


 私そっくりの太ったその女性の写真を見下ろし、彼はそう言った。

 あるいは私を見て。



 私たちは食事を共にした。たぶん、これからもそうするだろう。

 だって、最愛の人と食べる料理はいつだって最高だから。

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