リメイク
人に好かれる努力をしよう、そう思った。
志穂に、いち早くまともになった僕を見せて安心させたかった。それに、時間には限りがある。いつの間にか高校生活が終わってしまった、なんて事になったら取り返しがつかない。高校の記憶は、高校生のときにしか得ることができない。
それに、心を入れ替えただけで、人はきっと変われない。だから、僕は地道に努力をすることを決めた。
具体的にいうと、ランニングをした。引きこもりのせいか、筋肉がたるみ、どっちかというと、だらしない体格だった。筋肉をつけ、背筋を伸ばすことができれば、人からの印象も良くなる。
志穂に報告すると、『いっそ部活に入っちゃえば?』と精神的に無理なことを言われたので丁重に断っておいた。
夜、家から二三キロ離れた公園まで走る。ランニングは意外と気持ちの良いものだった。引きこもりだった僕が久しぶりに身体を動かしたせいか、夜はぐっすりと眠れた。
そして、あと、ラジオを聞くことにした。
コミュ力は、ほとんど会話力だ。映像が見えない視聴者にも、分かりやすく話しているラジオDJや芸人からは学ぶものが多くあると思った。
疲れた身体で、三十分ぐらいすると寝落ちしてしまったりしたが、会話の面白さが分かったような気がした。
そういう生活を始めた僕を、両親と中学一年の妹は意外そうに見ていた。
もちろん志穂は喜んでいた。