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ゴーストライト  作者: 綿貫ソウ
第二章
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クラスメイト

 毎日学校に来る僕に、クラスメイトは意外そうな目を向けた。

 僕は肩身の狭さを感じながらも、なんとか馴染もうと努力した。以前のように無愛想に答えるのではなく、なるべく愛想よく話すようにした。それをまた、クラスメイトは意外そうに見ていた。

 正直なことを言うと、苦痛だった。今までとは違う行動をとっている僕を、みんながあざ笑っているような気がした。今さら友だち作りかよ。そう陰で言われているような気がした。

 それでも、なんとか踏みとどまった。

 志穂のために変わる、そう決めた。

 もちろん自分のためでもあるけれど、志穂のためなら変われる気がした。これ以上みっともない姿を晒すわけにはいかないと思ったのもある。


 *


「先生~、浅野くんが携帯弄ってます」

 二限目、国語の授業だった。

 窓際の、僕の席の後ろである山本潤平がいった。

 隣の浅野春彦が、慌てて携帯を机の下に隠す。

「なんにもしてないです、なんにも。いやマジで。神に誓ってですよ。本当に」

 先生は、次やったら没収ね、と真顔でいって授業に戻った。クラスからくすくすと笑い声が聞こえる。

「……っおまえふざけんなよ」

 浅野が冗談とも本気ともつかないような力で、山本を小突く。

「痛った! あー、先生。浅野くんが殴ってきました。骨いってると思うので保健室いってきます」

 再びクラスに笑いが起きる。

 今度は先生も冗談と分かったようで、口元に笑みを浮かべながら、やんわりと注意した。

 浅野も笑いながら、山本に文句をいった。楽しそうな、授業中の一幕だった。

 その光景を、僕はぼんやりと眺めた。

 こんな風にじゃれあうことができていたのは、いつまでだったろうか。友だちがいたのは、きっと志穂が死ぬ前だ。死んでから落ち込んでいる僕に何度か友だちから連絡はあった。でも、僕はそれに応じることはしなかった。

 自分から友だちとの関係を切っていたことを、今さらのように悔やんだ。


 山本から話しかけられたのは、昼休みが終わる五分前くらいのことだった。

 彼は前の席の机に座り、ただ窓の外を見ている僕にいった。

「佐原、今日は小説読まねーの? もしかして家に忘れた?」

 急に話しかけられ、正直少し戸惑った。

 なんとか返事をするために、思い当たる言葉を探す。

 小説は、志穂との約束をしてから持ってきていなかった。学校の昼休みに本を読んでいることを話すと、志穂がいったのだ。

『それじゃあ人間関係を断ち切ってます、入ってこないでください、って思われちゃうから、学校に本は持ってかない方がいいと思う』

 そうかもしれないと思った僕は、持っていくのを止めた。

 ただ、その事情を話すわけにもいかないので、「忘れたっていうか、少し飽きたんだ」と僕は答えた。

 山本はそっか、といって、再び何か話そうと口を開いたが、彼を探していた友人に強引に連れ去られ、会話は終わった。

 山本潤平は人気者だった。 

 友だちは多く、彼の周りでは常に笑いが起きていた。どうすればあんな風にできるだろうと、純粋に疑問に思う。

 山本が友だちの頭を叩き、笑いが起こったところで、昼休みのチャイムが鳴った。

 

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