30 オリビアと行動を共に
「どっこいしょ」
「年寄りくさいのう、お主」
「実際、あなたより年上だもの」
「嘘つくでないわ!」
私は、ベットで脚と腕を組んだ。
オリビアは床に正座をした。
ここは宿場町にある宿屋の一室。
彼女から話を聞かなければいけない。
あのまま森の中でもいいと思った。しかし、魔物に何回も襲われたから、町へ行くことにしたのだ。
こっちはこっちで、私を見るや食料たちが声をかけてきた。
鬱陶しいものの、敵意がないだけマシだと思わなければいけない。
「一歩でも入ったら殺すわよ」
ドアの向こう側にいる連中に言った。
天井を見ながらため息をする。
「で、私がいない間に何があったの?」
「……う、うむ」
「早く言いなさい」
「そ、そうじゃな」
「こっちを見なさい」
「お、おう」
「目がキョロキョロしてるわね。喋りたくないならいいわ」
オリビアに近づいた。
「エミリアは殺したわ」
「な、何と! あやつを? 妾ですら、かすり傷ひとつつけられんやつなんじゃぞ!」
「ウソよ。正確には殺す価値すらなかっただけだわ」
「な、なるほど。じゃから妾たちは解放されたのじゃな」
「言いたくないなら、それでいいのよ。二度と口もきけないようにしてあげるわ」
「ま、待て! 襲われたのじゃ! 二体の巨人に」
彼女の首を掴む。
「いや、ほんと待て! 妾らは善戦したが、さらに妙な小僧が現れての!」
そのまま持ち上げる。
「く、苦しい。息ができん。いや本当じゃ、小僧にやられて、さらに出てきた女に連れて行かれたのじゃ」
身体が赤く光る。彼女は命が危険にさらされると、このように輝くのだ。
上空で見たのはこれだった。紛らわしい。
手を放してあげた。
彼女は床にしりから落ちる。
「イッタいの」
「殺されなかっただけでも、感謝してほしいわね」
犯人は王子とメイドか。
魔界に連れ去ったのか?
あそこに戻る方法を私は知らない。
「困ったわね」
「おい、お主。何をしておるか?」
「もうすぐ朝だわ。だから寝る」
「ふたりが心配ではないのか」
「別にどうでも。あなたたちと私はもう何の関係もないでしょ?」
「クララは泣いておったぞ」
「――え?」
私はベットから飛び起きた。
オリビアの表情は憂いていた。
「お主が先走ってからずっとな。ご主人様と何度も呼んでは謝り続けておったわい」
「……」
私は壁の方を向いた。
彼女は何も言わなくなった。
突然、何かがかけられた。
クララのマントだ。
「連れ去るとき、あやつから渡されたのじゃ。お主はこれがないと昼間は出られんのじゃろ」
「彼女を助ける気はないわ」
「なぜそのようなことをほざく? 濃厚に接吻までしおったくせに!」
オリビアを押し倒した。
「ただ気持ちよかったからしただけ。彼女に対して愛情なんてないわ」
「貴様! それでも人の子か!」
「ただの吸血鬼よ。人々の恐怖や絶望を見て喜ぶ魔性のね」
「はぁはぁ……お、お主……」
顔が真っ赤になった。気持ち悪い。
だから私は部屋を出た。
廊下にいた連中は慌てて逃げ出す。
マントの小さなヒモを結ぶ。
オリビアは、部屋の中で大の字になったままだった。
「眠気が吹き飛んだわ。誰かさんのせいでね。ちょっと森を散歩してくるわ」
◆
空高くそびえ立っていた山は、半分くらいに縮んでいた。
頂上でクララのにおいを確かめる。
マントと同じものが微かに残っていた。
「世話が焼けるわね」
北西の方角を見た。
不気味な山が連なっている。
「あそこに行った、と考えるべきかしら」
ピョンピョン跳び跳ねながら、下っていく。
「ま、いなかったらそこまでね。運がなかったと諦めなさい」
ふもとまで行くと、人間界の植物は生えていなかった。
そこにあるのは魔界に似た草木だ。
「懐かしいわね。このまま進めば実家に帰れるのかしら? ついて来るならおもてなしするわよオリビア」
「き、気づいておったか」
「当たり前よ。で、何の用?」
「決まっておる! 妾も助け出したい!」
「役に立つとは思えないけど」
「なめるな! 三百年を生きた実力見せてくれるわ!」
私はあくびをした。
彼女はしょんぼりした。
「と言いたいところじゃが、あの小僧には手も足も出なかった。じゃから戦力にはなるまい」
「ふーん」
「じゃが、じゃがの! クララとフランツは妾の友じゃ」
空は分厚い雲でおおわれていたので、マントを脱いだ。
「フランツはお主から助けてくれた恩人じゃし、クララは親切にしてくれた」
「あっそ」
「妾だけのこのこ助かったのは謝る!」
「敵と関わってるんじゃないのかと、疑ってるのよ」
彼女をにらみつける。
すると立ち止まった。
「ならば殺せ」
「そうさせてもらうわ」
「これがふたりを守れなかった償いじゃ。年長者としての責任を果たそう」
首筋に口をつける。
彼女は震えていた。
噛みつくと、不味い血が入ってきた。
「くう、ああ」
見た目同様、かわいらしい声だった。
力が弱まっていくのが感じられた。
私は口を放し、傷をなめた。
中途半端な吸血行為は、相手を吸血鬼化させてしまう。しかしそれはあくまで人間に限られた話だ。
ドラゴンは大丈夫だろう、たぶん。
オリビアは真っ赤な顔をしていた。
「うう、お主、中々めんこい娘じゃな」
「くだらないこと考えないで。行くわよ」
魅了というやつか。
面倒くさいスキルだ。
しばらく進むと、廃城が見えた。
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