表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/39

13 クララを助けろ!

「ウウウウ」


「やあ!」


「やめなさいクララ。いちいち相手にしなくていいの」


 普段はおとなしいのに、急に積極的になった。

 しかしゾンビを全て倒す必要はない、ここでは。


「まずは狭い所へ誘き寄せて一網打尽」


「はい! ――前です!」


「……仕方ない。我慢しよう」


 一体、木から飛び降りてきた。

 避けたらクララに攻撃を受ける。

 そう判断して、拳でつらぬく。


「ウワアアアア」


 崩れていく身体を掴み、首筋に噛みついた。

 血、というか変な液体を吸いとる。


 ゾンビは痩せ細り、霧のように消えた。


「不っ味!」


 吐きそうなのを必死にこらえた。


「ご主人様!」


「知ってる」


 回し蹴りで背後にいたのを吹っ飛ばす。その後に続いていた連中も巻き込んだ。


「空腹なのは分かりますが、今はご自重ください」


「そうじゃないわ……」


 彼女をお姫様抱っこして走り出す。


「育て親からの言い付けなの。殺したら食べろってね。こればっかりは死ぬまで続けないといけないわ」


「はあ」


「まあ、ゾンビはすでに死んでるから変な話よね。面倒くさい女って軽蔑してくれていいのよ、フフ」


「いえ、とんでもございません。立派なことだと思います」


 褒める要素はどこにもないのに。

 背中がむずがゆい。この子の言葉に調子を狂わされっぱなしだ。

 でも、嫌じゃないのは確かだ。


 森を抜けると、崖に来た。

 壁の側面を歩いていく。下は川だ。


「ご主人様?」


「動かないで」


 彼女にギュッと抱き締められた。

 このまま崖を登って、川沿いに進む。そうすれば街に着く。

 クララには待っていてもらおう。私ひとりの方が楽だ。


「――!?」


 突然カラスの群れに襲われた。

 身体が腐敗してあった。ゾンビ化しているのか。


「邪魔よ!」


 片手で払うと、一羽が三つに切断された。


 ――爪の切れ味が増している?


 理由はどうあれ食さねばならない。

 目に求まらぬ早さで、頭部が付いている箇所の中身を飲み干した。


「げぇ」


 人間ではなく、おまけに動く死体だから腹を壊しそうだ。


 すると今度は、崖の上からゾンビたちが落ちてきた。


「ああ!」


「クララ!」


 彼女は噛みつかれた。

 反対側の壁へジャンプする。


 するとまたカラスに邪魔をされた。


「虫ケラ風情が!」


 両手で切り裂いた。肉片は細かくそして蒸発した。もう食べられない。


「――しまった!」


 クララは、投げ出された川へと真っ逆さまだった。

 そこへ、一際大きな鳥が、彼女目掛けて飛んできた。


 やはり狙いは、生きているクララか。


 私は体勢を変え、急降下した。

 鳥よりも先にクララを掴み、大口を開けている鳥を蹴りで真っ二つにする。


 そういえばなぜ、空中で体勢を変えることができたのだろう?


 その疑問は水に入ると同時に消えた。


「があ! あ、ああ! ぐっ!」


 完全に忘れていた。

 吸血鬼は流水に無力だということに。


 私から離れたクララの姿は、どんどん遠退いていく。


(ちっ、逃がさないわよ!)


 彼女は――私の獲物だ。

 しかし情けないことに、力は全く出せない。


 このまま流されれば、やがてどこかに打ち上げられるだろう。


 しかし私はともかく、クララの息は持つのか?

 死から時間が経ちすぎると、生き返らせることはできなくなる。


(根性見せなさい! 私!)


 急に魚みたいに動け、彼女を掴む。その勢いで水から出て地面に転がりこんだ。


「クララ!」


 起きてくれない。

 脈はあるものの、呼吸をしていない。


 心臓マッサージをする。


「まだ死ぬのは早いわよ。どうしても死にたいなら、私に殺されなさい」


 ぽかんと開いた口に、唇を着ける。

 息とともに唾液も流しこんだ。


「だけどまだ殺さないわ。今はあの小太りの所有物でしょ。あの脂っこそうな味がしてそうだわ」


 何度も、何度も、動作を繰り返した。


「束縛から解放されなさい。自由になりなさい。そうすれば血が美味しくなるのよ」


 強く抱き締めた。


「私に殺されるまで生きなさい」


 クララは、激しく咳をした。

 水を吐き出す。


「ハァハァ……!? ご、ご主人様!」


「フフ、中々体力があるわね、あなた。案外、才能あるかもね」


「大丈夫ですか?」


「平気よ」


「で、でも、泣いておられますよ」


「え?」


 指で触れると、涙が流れていた。

 原因は分からない、この私がなぜだ?


「何でもない、ただのかすり傷よ」


 私は先に立ち上がった。そしてクララを助け起こしてあげる。


「ありがとうございます――あっ!」


 よろけた彼女を受け止める。

 かなり身体を冷やしたみたいだ。

 優しくさすってやる。


「すみません」


「気にしないで……ふぅ、あなたたち、少しは空気読みなさい!」


 ゾンビに囲まれた。


「ご主人様」


「あなたは休んでなさい」


 手に力をこめると、爪が刃物のように伸びた。


「遊びは終わりよ! 皆殺しにしてあげるわ!」


「ウウウウ!? ギョワアアアアアア!」


 突然、火だるまになって灰になった。


 太陽の光だ。


 ゾンビは太陽に弱かったのか。

 ひとつ新たなことを知る。

 そして――私の命も終わることも知った。


 炎に包まれた。


「ご主人様!」


 口を必死につぐむ。

 クララに、悲鳴を聞かれたくないからだ。理由は分からないけど。


 今まで感じた物より、一番熱く感じた。

 目をつぶる。

 指先が灰になって崩れていた。これ以上は何も見たくない。


 今度という今度は、もう再生しないのかもしれない。

 まあ別に構わないさ。

 その程度の女だったというだけだ。


「ご主人様!」


 熱くなくなった。

 クララに押し倒されたおかげで、影になっていたのだ。

 炎も消え、指も元に戻っている。


「全力でお守りします。たとえ、もうじきお暇をいただくとしてもです」


「あなた!」


「ですが、今はわたしは、ご主人様の従者ですから!」

お読み下さって、誠にありがとうございました。


「面白かった」

「続きが気になる」

「主人公オプトゼチはこれから何をするの?」


と思いましたら、高評価およびブックマークをつけて頂けると大変助かります。


面白いと感じられたら☆5を、つまらないと思われた場合は☆1を出来たらで構いませんので、つけて頂けると大変嬉しいです。


身勝手なお願いですけど、どうぞ何とぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ