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仙台スタジアムで行われるホームゲームを前に、ベガルト仙台レディースの千葉結弦ちばゆづる監督はスタンドを見上げた。

 チームカラーのゴールドのユニフォームを着たサポーターで座席が埋まっていくと、空へ向かって黄色い大輪が咲いたように映る。青空に包まれたデーゲームは、とりわけ美しさが引き立つ。

彼らのために、優勝しなければ、という湧き上がる瞬間だ。

 ベガルト仙台レディースの監督に就任して初めてのシーズン、クラブはリーグ戦で優勝争いを演じ、最終節でリーグ優勝の可能性を残していた。

 最終節は仙台でのホーム最終戦である。対戦相手はリーグ戦2位の浦和レッドスターズレディースとの優勝が懸かった直接対決である。

 試合前のマッチコーディネーションミーティングで浦和レッドスターズレディースのヨハン・ペトロビィッチ監督が千葉に鋭い視線を向けてきた。

「スタジアムの芝生が長いのはあなた方の戦術なのか?」

とペトロビィッチがドイツ語でいった。千葉のことを仙台レディースの監督ではなく一人のスタッフだと思っている。

「本当のところを言うと、私達ももっと短く刈ってほしかったんですよ。実際にそういうリクエストもしたんですけど、思った以上に刈っていなくて。ウチの選手達も『短くなってないなあ』って思ってたところです。」

と千葉がドイツ語で返した。

「失礼ですが貴方は?」

とペトロビィッチがドイツ語で返した。

「申し遅れました、私、ベガルト仙台レディ-スの監督を務めております。千葉結弦と申します。母がドイツ人で大学はドイツのミュンヘンの大学に通っていたのでドイツ語は普通に話せます。ペトロビィッチ監督、本日の試合よろしくお願いいたします。」

と千葉がいった。

白く透き通った肌を持ち、金髪碧眼きんぱつへきがんの身長一四五センチのジャージ姿の女性にペトロビィッチは眼を奪われた。

「貴女がベガルト仙台レディ-スの監督、千葉結弦監督でしたか、こちらこそよろしく」

とペトロビィッチがドイツ語でいった。

千葉とペトロビィッチが会うのが今日が初めてである。

千葉は今シーズンからチームの指揮を執っているが、ペトロビィッチが浦和レディースの監督の就任したのがこの年の7月である。それまでは昨年の7月から浦和レッドスターズのトップチームの監督をしていた。昨年の12月の天皇杯決勝で埼玉スタジアムでベガルト仙台と戦い、1-0で仙台に勝利し、天皇杯優勝を果たし、AFCL(アジアフットボールチャンピオンズリーグ)の本戦出場を決めた、しかし今シーズン浦和は所属するジャパンプレミアリーグで残留争いに巻き込まれ、6月末の時点でリーグ18チーム中18位と最下位に低迷してた、このため浦和のフロント陣は7月にペトロビィッチを解任し、浦和のヘッドコーチだった鬼庭健おににわけんを監督に昇格させ、解任されたペトロビィッチは浦和のフロント陣の要請で浦和のレディース監督に就任した。

一方の千葉は初めての監督キャリアだったもののリーグ前半戦を2位で終えるとそのまま無敗をキープし、クラブの初優勝に王手をかけたのだった。

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