#6 森の外への準備
あけましておめでとうございます。
会社の忘年会と現場の書類等でなかなか更新できませんでした。
時間を見つけて書き溜めておきます。
今年も拙い文章ではありますが、時間つぶしで読んでいってください。
精霊の名前を考えることになったのはいいが、いきなり現れた得体のわからない俺なんかが決めていいのだろうか。
それこそ付き合いが長いであろうリゼが決めた方がいいと思う。
そう思いながら、抱きしめている精霊に視線を落とすと、精霊は顔を上げ、こちらを見ていた。
期待に満ちたように、目がキラキラしているような気がするが気のせいだろうと思いたい。
「んー……フウなんてどうだ? 俺がいたところだと風と書いてフウとも読まれるし、コウとも似ているから……ってうおっ!」
精霊に名前を付け、フウと呼んだところぐらいから暴れ始めたので、少し力を強めたのだが、それでも腕から抜け出し、空を飛び回り始めてしまった。
怒りから暴れまわっているんじゃなくて、喜びからはしゃいでいるのだと思いたい。
「精霊……フウってあんなにはしゃぎまわったりしますか?」
「あの子が感情を表に出すようなことは、いままでありませんでしたよ。コウ様の事が本当に気に入っているみたいですね」
精霊が感情を表に出さないっていうのは想像通りだな。
でも凄いスピードで飛び回っていて、体力持つのかどうかわからないハイペースなのだが大丈夫なのだろうか。
そんな心配をしながら眺めていたのだが、少しずつスピードが落ちていき、フラフラしながらこちらの方に降りてきたため、胸で抱きしめた。
『……コウ、グルグル』
「目を回しているのか、って感情表現へたくそか」
まるで首がすわっていない赤ん坊のように、頭がグラグラしている。
「ふふっ、フウという名前がそんなに嬉しかったのですね。いままで見た事ないほどのはしゃぎ方でした」
リゼは上品に左手を口に当て、こちらを見てほほ笑んでいた。
そんなリゼを見ながら、何故か家族のような感じを覚えた。
俺が父親、リゼが母親、フウが子供という家族。
「なんか家族みたいだな」
つい漏れてしまった言葉が、リゼの耳にも届いてしまったようで、顔を真っ赤にしてこちらを見た。
「か、家族だなんて。わ、私とコウ様が家族だなんてとんでもないです。もともと私は異性の方とあまり話したことがありませんのでドキドキはしていますが、あの、その」
真っ赤な顔のリゼは、早口気味に話すことを話すと、真っ赤な顔を隠すかのように、両手で顔を覆ってしまった。
顔を覆っていても、エルフ特有の長い耳が真っ赤になっており、顔を覆っている意味があまりなくなっている。
「い、いや確かにリゼは綺麗だと思うけど、俺なんかと一緒なのは申し訳ないと思うところもあるし、でも、一緒にいると楽しいし、ドキドキするし……って何言っているんだ俺」
『……コウ』
お互いいっぱいいっぱいな状態になってしまっている中、フウが目を回している状態から回復したらしく、コウの事を見つめていた。
「フ、フウ。もう大丈夫なのか?」
『……大丈夫』
リゼから視線を外すし、フウを見ることで、少し落ち着くことができたのだが、まだ顔が赤い気がする。
『……フウ、気に入った』
「名前気に入ってくれたみたいでよかったよ」
「フウ、よかったですね。その名前をずっと使っていきましょう。ところでコウ様、今後の事について相談なのですがよろしいですか?」
ようやく落ち着くことができた三人は、今後について話を始めることにした。
だが、今後についての相談というのはどういう事だろうか。
俺はこの森を抜けて、どこか近い町か村に向かう予定で、おそらくだが、二人は村に戻るだけで、相談の必要は全くないはずだ。
もしかして、勝手に森に入ったことをエルフの長に報告しに行くために、一緒に行かないといけないのだろうか。
それとも、森に入った奴を森の外に出してはいけないとかあるのだろうか。
色々なことを想像するがどれもピンとこない。
「相談というのは、私たちをコウ様と共に行動させてもらえないでしょうかという事なのです」
「俺と一緒に行動……それは構わないけど、エルフとか精霊って森から離れても平気なの?」
「はい、全く問題はありません。まあ、多少は不便な面が出てくるかもしれませんが、私たちはコウ様と共に居たいのです」
リゼの申し出は正直言うとかなりありがたい。
こちらに来て間もないため、こちらの情報が全くない状態で行動するのは危険すぎる。
そうすると、俺はこちらの知識があるリゼがいるとありがたいし、フウを見える人は少ないため、いざというときは情報収集等で力になってくれると思う。
何より一人は寂しいし、二人は可愛い。
断る理由は全くないが、二人になんのメリットがあるのかがわからない。
まだ会って間もないが、何か企んでいるという雰囲気はないような気がする。
「じゃあ、お願いしてもいいかな」
「はい、ではこの後の動きについて話し合いましょう」
その後三人で話し合い、一晩この森で過ごした後に、森を出て、一番近い町に向かうという事になった。
やっと冒険する事が出来るということで興奮してしまい、中々寝ることができなかったのはここだけの秘密だ。