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#5 和解と自己紹介

人間には見ることも触ることもできない精霊。


そんな精霊を見ながら、どう説明しようか困ってしまう。


正直に自分の思う力について説明する、多分言ったところで信じてもらえるか微妙なところだ。


もし、矢を防いだのが思う力によって防いだといっても、この世界に似た能力があれば、それではないかと疑われる可能性がある。


考えてもなかなかいい考えが出てこないため、諦めて正直に話してみようかと思い、目線をあげ、エルフの方を見た。


彼女も足元にいる精霊を見ていたようで、口は動いていないが、何か精霊と話している様な感じがする。


少しすると話が終わったようで、彼女はこちらに顔を向け、先ほどまで使っていた弓と矢を後ろにしまいこみ、こちらに精霊と一緒に近づいてきた。


「いきなり命を狙うようなことをしてしまい申し訳ない。あなたがいきなりこの森に現れたと精霊から聞いて、森を狙う不審者だと思って攻撃してしまった」


「いや、こっちもいきなり現れてすみませんでした」


どうやらこちらに敵意がないことをわかってもらえたようだ。


多分、精霊が彼女に話をしてくれたのだろう。


その精霊は俺の周りをぐるぐる回っているので、腰を落とし、両手で持ち上げ、また頭の上に乗せた。


ちなみに全く重さは感じない。


『……むふぅ』


「精霊がとてもなついていますね。異世界から来られたと言われてもここまでなつくのは珍しいみたいですよ」


「そうなのか、というか俺が異世界から来たって言いましたっけ」


言おうか迷っていて、言っていないはずだ。


もしかして、彼女か精霊が相手の考えていることが読み取れるのか、それとも、他にも異世界から来た人がいるのかもしれない。


考えるより聞いた府が早いかもしれない。


「もしかして、俺以外にもこの世界にいきなり森に現れた人とかいたりしましたか」


「まあ、ほんの一部の方々は超高速航法、瞬間移動を使えると言われていますが、ほんの一握りのはずです。あなたの場合もその可能性がありましたが、見たことのない服装でしたので、精霊に聞いてみたところ異世界から来た可能性があるという事でしたのでこちらの警戒を解いたというわけです」


確かに服装は前の世界のままだから怪しまれるのも当然なことだな。


ちなみに服装は上が黒のポロシャツに、下が黒のジーンズで全体黒に固めている。


おしゃれ関係には疎いので、黒系で固めれば外れはないだろうというおしゃれ素人の考えをもっている。


『……むふぅ』


「なんか頭の上が気に入られたようなんだけど、この精霊って君と一緒にいないといけないとかないの」


完璧に精霊になつかれているうえに、頭の上でリラックスされているのだが、これはいいのだろうか。


猫にはなつかれていたが、まさか精霊にまでなつかれるとは思いもしなかった。


なにもないときは精霊が飽きない限り乗せてあげようと心の中で思った光なのだった。


光の頭に乗っている精霊に近づく彼女。


それは必然的に二人の距離もかなり近くなるという事になり、女性に対しての態勢があまりないため少し緊張する。


肌は日焼けを全くしていなく艶もある、吊り目で長い睫毛、鼻のラインがしっかりしている、柔らかそうな唇……


考えるだけで、顔が赤くなっているのがわかる。


「日常生活の際は、一緒にいなくても問題はありません。今回のような戦闘の場合は極力近くにいないと精霊の力を最大限に借りることができません」


「なるほど。精霊とは日常生活でも常に一緒にいるのか?」


「いえ、精霊は結構気まぐれというか、気分屋なので、常に一緒という事はありません。この子は結構なつっこいので、一緒にいることが多いです」


まあ、何となくそんな感じはしていた。


初対面の相手の頭に乗ってこんなリラックスできる奴なんて、そうそういるものじゃないからな。


『……』


心なしか頭の上にいる精霊が静かな気がするのだが、もういなくなったのかもしれない。


でも、彼女の目線は頭の上に集中しているため、いるのであろう。


「あの、エルフさん。精霊ってまだ頭の上にいるんですか?」


「はい、まだいるのですが、その……眠ってしまったようです」


まさか、人の頭の上で寝られるなんて思いもしなかった。


個人的には、電車とかで立って寝られるくらい凄いと思う。


「それと自己紹介が遅くなりました。私はエルフ族のリゼッタと申します。リゼとお呼びください」


「自分は小倉光といいます。えーとリゼさん、あまり敬語とか使わないでいいですよ」


「……小倉光? こちらではとても珍しい名前ですね。話し方はこっちの方が楽なので、このままで話をさせてください。逆にそちらの方がもっと崩した話し方でいいですよ」


なんかイメージ通りの展開で、本当に漫画の中にいるような不思議な感じだ。


この世界で、小倉光の名前を使うのも後々面倒な感じがするから、ここの世界用に名前を変えた方が良さそうだ。


『……コウ』


「うん? 起きちゃったみたいだな。それよりコウっていうのは俺の名前か?」


光と書いてコウとも読めるからいいかもしれない。


頭の上の精霊を掴み、顔はリゼの方を向け、胸元で抱きしめてみる。


全く暴れないからぬいぐるみを抱きしめているみたいなのだが、二十歳の男性がぬいぐるみを抱きしめているというのも嫌な図だな。


「じゃあ俺の事はコウって呼んでくれ。リゼ。」


「わかりました、コウ様」


『……コウ』


こんな美人と可愛い精霊とすぐ仲良くなれるなんて、異世界ってすごいな、現実ではありえないからな。


「ちなみにこの精霊には名前とかないのか?」


「はい、基本的に精霊には名前はありません。もしでしたら、コウ様がお付けになったらどうですか? この子はコウ様になついているので、きっと喜ぶと思います」


精霊に名前を付けるのか。


異世界に来て最初のお仕事が名前決めになるとは思いもしなかった。


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