どうなってしまうの
『不死の化け物なんだよ!』
そう言い放ったカッセルに対して、ドゥケが、静かに、でもきっぱりと言った。
「…たとえそうだとしても、関係ない。すぐに生まれ変われるからって命を奪われたということに納得できるほど俺は聞き分けのいい人間じゃない。魔王に命を吸われて崩れ落ちていくあの子の姿を見た時の痛みと苦しみはなくならない。
だから俺は魔王を倒す。お前はお前の正義を貫けばいい。そして立ちはだかるというのなら、俺はお前も倒す」
『ドゥケ…』
決して激しくはないけど、吠えるような感じではないけど、でも同時に途方もない力を感じさせる言葉だった。彼の姿が今まで以上に大きく見えた。
カッコいい……
こんな時に何を不謹慎なと思うのに、初めて彼のことを『カッコいい』と素直に思えてしまった。そんな彼に対して、カッセルも硬い表情で笑みを浮かべてた。
「どうやら君とは決して分かり合えないらしい。なら、僕も君を倒すとしよう。シェリスタのこともあるしね」
…え? 何でここで私の話が出てくるの?
戸惑う私の前で、ドゥケとカッセルが剣を構えた。二人がこんなことで争うのなんて見たくない…! そんな気持ちもあるのに、同時に見届けないといけない気もした。
私以外の青菫騎士団のみんなは、ただ戸惑いながら遠巻きに見ているだけだった。その中には、リデムの姿も。
他の勇者とその部隊の人達に至っては、完全に状況が掴めずに『置いてきぼり』状態のようだ。なんか本当に申し訳ないって気がする。
そんな中で、ドゥケとカッセルが睨み合う。二人の間の空気がギリギリと締め上げられて悲鳴さえ上げてるようにさえ見えた。
本当に、どうなってしまうの…!?
そう思った瞬間、ガツン!と体全体を叩かれるような衝撃が伝わってきた。ドゥケとカッセルがぶつかった時に生じたそれだった。その一合で、どちらが強いのか分かってしまう。カッセルももちろん強いし、アリスリス相手だと余裕だったけど、間違いない。この二人だとドゥケの方が強い。やっぱり、普通の人間だった時の素養がそのまま反映されるんだろうな。
優男風だけど実は頑健な肉体を持つドゥケと、芸術家肌で繊細な印象もあるカッセルとじゃ、ドゥケが有利なのか。
なのに、カッセルも一歩も引く様子を見せなかった。それが一層、彼の信念の根深さを物語ってる気もした。体で負けてる分を、信念で補ってるのか。互いに<祝福>を掛けて強化した剣を使ってるから大丈夫だけど、普通の剣だったら最初の一合で砕け散ってただろうな。




