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先にいったよ

二頭のドラゴンを倒し、残り一頭になった時、ドゥケが叫んだ。


「剣を突き立てろ!!」


言われて私たちは、一斉に剣が通るようになったところに突き立てた。


「離れろ!」


という叫びに、反射的に飛び退く。それと同時にドゥケは、


「リデム!! ぶっぱなせ!!」


って。


その瞬間、爆発するみたいな雷鳴と共に、かあっとドラゴンの姿が光に包まれた。リデムの放った雷霆の魔法だった。それが、ドラゴンの体に突き立てられた剣を通して、体内から破壊する。


肉の焼ける匂いがその辺りに充満し、最後の一頭が崩れ落ちるように倒れた。


すごい…! 本当に私たちがドラゴンを倒した。しかも三頭も。


だけどそんなことで喜んでる暇はない。私たちの目的はあくまで魔王討伐だ。ドラゴンを倒したくらいで喜んでちゃいけない。


魔王の城砦のさらに奥へと私たちは進む。ドラゴンを倒したという興奮で、もう、魔族の雑魚なんてほとんど目に入らない。


私達が押し通ったところを、神妖精しんようせい族の巫女たちを連れた青菫あおすみれ騎士団のみんなが続く。


『分かる。この先に魔王がいる!』


何故かは分からないけど、すごくそう感じた。これも私が<勇者>だからなのかな。


だけどそれは同時に、なにか、誘い込まれるような感じもあった。なのに、それを不思議とは思わなかった。そうするのが当たり前って感じだった。


隣を走るドゥケに思わず視線を向ける。すると彼も私を見てた。私を見て微笑んでくれてた。でもその微笑はどこか寂しそうにも見えた気が。


「君も勇者になったんだね……」


祝福してくれてるというよりは、なんだか辛そうにも聞こえる。


でも私は、彼が生きてたことが単純に嬉しかった。


「無事だったんですね。本当に良かった。ポメリアも無事なんですね」


魔族を倒しながらでも、そんな話ができる。これも勇者ならではかな。なのに、彼はその私の言葉には答えてくれたなかった。


その代わり、


「彼女は…先にいったよ……」


って。


「一人でですか!? じゃあ、急がなきゃ!!」


この時の彼の言葉を、私は、『先に魔王のところに向かった』っていう意味で聞いてた。


ポメリアを一人で行かせてしまうなんてと思った。


『ドゥケらしくない…!』


けどきっと、そうするしかなかったんだろうなって思えて、彼を責める気にはなれない。それよりも急がなきゃって。


魔族を薙ぎ倒し、奥へ、奥へと。


すると、首筋がなんだかちりちりとしてくる。ヤバい気配って言うか。『危険が近付いてる』っていうのが分かる。


『これが…魔王の気配……』


体は燃えるように熱いのに、背筋からは冷たい汗が噴き出るのを感じたのだった。





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