手合わせ
とにかく、私達は連れ立って鍛練場に行って、まずは実際に見てもらうことにした。私自身、自分にどれだけのことができるのか確かめたかったから。
そのために、アリスリスがいてくれたのは助かった。たぶん、他の団員たちじゃ怪我をさせてしまう可能性もあったし。
手を合わせる前からそう感じるくらい、自分の力が圧倒的なのが分かってしまった。
誰かに教えたわけでもないのに、私達が鍛練場に向かうのを見ていたらしい団員たちまでがぞろぞろ集まってくる。
私に昼食を持っていこうとしてたのに部屋の前まで来るとどうして自分が食事を持ってきたのか分からなくなってしまうというのを二度三度と繰り返してしまったというソーニャも、食堂での私の異様な食べっぷりから気になってついてきてた。
「シェリスタがアリスリスと一対一で…?」
「どういうこと? 何があったの?」
「だけどシェリスタの雰囲気、今までと違わない?」
なんて、みんながひそひそと話してるのも、まるですぐ横で聞いてるみたいにはっきり聞こえた。耳までよくなったのか。
でも、アリスリスは私の前に立って嬉しそうだった。
「さー! かかってこい! 後輩勇者!」
アリスリスがそう言った瞬間、みんながざわってなるのが分かった。
「勇者?」
「シェリスタが?」
「え? どういうこと?」
というざわめきが、息をのむ音に変わるのには時間はかからなかった。
ダン! と床を踏み鳴らす音が聞こえた瞬間には、私の体は弾け飛ぶようにアリスリスに迫り、その体を吹っ飛ばしたからだ。
「!!?」
団員たちが三人がかりで打ち込んでも一歩も下がらせることができなかったアリスリスを私が吹っ飛ばす光景に、ライアーネ様までが唖然とするのが見えた。
だけどやっぱりアリスリスは嬉しそうで、
「やるな! じゃあこれはどうだ!!」
って、まるで獣が走るみたいにものすごく姿勢を低くして、すさまじい速さで奔った。たぶん、勇者になる前の私だったら目で追うことすらできなかったと思う。
でも今は、それがはっきりと見えていた。
鍛練用の木の剣で、その突進を受け止める。
すると、僅か二度打ち合わせただけの、鉄の芯が入った木の剣が、爆発するみたいに、曲がった鉄の芯だけを残して弾け飛んだ。しかもその破片は、壁に背を預ける形で離れて見てたみんなのところにまで飛び散った。
今の私には完全に受け止めることができたアリスリスの突進だけど、勇者になる前にこれをもろに受けてたら、暴走する馬車に撥ねられたみたいになって、下手したら命を落としてただろうな。
そんなことに感心しながらも、私の口元には笑みが浮かんでたのだった。




