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ニンジン食べて…

「ん…んん~……」


もそもそと身をよじって、むっくりとポメリアが体を起こした。明らかにまだ寝ぼけてる感じの様子で。そういうのを見ててもまだ子供なんだなって思ってしまう。


ふわふわサラサラの金髪が顔に掛かって、か、カワイイ…!


その姿を見てるだけだと、死んでさえなければどんな酷い傷でもたちどころに癒してしまうすごいヒーラーには見えなかった。だけど私も、重傷を負った団員が彼女に助けられるところを見たことがある。


だから彼女の力は本物だって思う。彼女のすごいところはそれだけじゃなくて、自分の視界の範囲内にいれば近付かなくても治せるってことだ。だからいつも、護衛の騎士に付き添われて一番危険の少ない位置に待機してる。それでも危険はあるし、魔王軍の攻撃から彼女を庇って危うく命を落としかけた団員もいる。


って、こう考えたら、青菫あおすみれ騎士団に戦死者が出てないのって、ポメリアのおかげじゃんと思ってしまった。ドゥケのおかげじゃないじゃんって。


なんてことを考えつつも彼女の前ではそれを顔に出さないように心掛けつつ、部屋のテーブルに着いた彼女がまだボヤ~っとした感じで食事を食べるのを見守ってた。


彼女の前でドゥケのことを悪く言うのはそれこそタブーとされてた。軍規として。それをすると彼女が拗ねてしまって闘いに集中できないからだ。


普通はそんなこと許されないけど、彼女ほどのヒーラーは貴重だし、元々ヒーラーってそういう気性の人が多いからそれに合わせた対応なんだって。


そういう訳で私も彼女の前では特に気を付けてる。まあそこまで気を付けなくても彼女を見てるだけで癒されるから、あんまりイライラもしないんだけどね。


「シェリスタ。ニンジン食べて…」


不意にポメリアがそう言ってフォークに刺したニンジンを私の前に出してきた。彼女は好き嫌いが多くて、嫌いなものはこうして係の人間に食べさせようとするのだ。


「ポメリア様、なんでもしっかり食べないと大きくなれませんよ」


とは言いつつも、差し出されたニンジンを口に入れる。すると彼女は嬉しそうににっこりと笑ってくれた。それがまた可愛くて…!


こういう好き嫌いについても、可能ならば治してあげるように言われてるけど、結局みんな、こうして甘くなっちゃうんだよね。この顔が見たいから。


「ごちそうさまでした」


手を合わせて彼女はそう言う。彼女の郷里の慣習なんだって。食べる時も「いただきます」と言いながら手を合わせる。それに対して私達は基本的に手を組んで神に感謝するんだけど、それと同じことだとは聞いてたんだよね。



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