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真相

「厳密に言うと、私達は、善神バーディナムの御心に従って勇者を選んでます。それが、『この人だ!』って感じる形になるんです」


って、言われても……


正直、戸惑いしかない。それに、そんな形で決まるなら、どうして教えてくれなかったの? 誰も知らないの?


なんて疑問に思ってたら、


「本当は、私達が勇者様を選んでるってことは、勇者様御自身以外には教えないことになってるんです。でないと、勇者になろうとして私達を利用しようとする者が出てきますから」


と言われてみるとなんとなく『ああそうか』と思えた。強引に選ばせようとする不埒な輩だって出てこないとも限らないよね。


だけど。


「だけどそんなこと、まだ勇者になってない私に教えちゃっていいの?」


って訊き返したら、ティアンカは、


「大丈夫です。その時は記憶を消させていただきますから」


なんて、サラッととんでもないことを口にする。


「記憶を、消す…?」


「はい。私達が持つ力の一つです。そしてこれ自体が、魔王を倒すための手段の一つなんです」


…って、なにその重大情報…!?


「どういうことなの、それ?」


ってまた訊き返してしまう。


「私達は、魔王の<記憶>を奪うことでその力を封じるんです。そして同時に、魔王の<時間>も奪う。そうすることで魔王は何も知らない幼子に戻って、<封印>される。


そうすれば次に魔王がまたその<力>に目覚めるまでは平和になるということです」


「ちょ、ちょ、ちょ! 魔王を倒すっていうのは、魔王を殺すっていう意味じゃないってこと!?」


「ええ。まず第一に、魔王は殺せません。魔王には魔王の役目があるんです。殺してしまったらそれが果たせなくなるし、私達には魔王を殺す力もありません。あくまで記憶と時間を奪い、一時的に封印するだけなんです」


「え? でもそれって、何の為に? <魔王の役目>って、なに?」


とんでもない話に混乱する私が問い掛けると、ティアンカはさらにとんでもないことを言い出した。


「魔王は、人間の数が増えすぎないように淘汰するって大切な役目があるんです。善神バーディナムの加護が世界にいきわたるように、世界が大きくなり過ぎないように」


「……!」


嘘でしょ……そんな……


あまりのことに、私の自分の体中から血が流れだして地の底へと消えていくような気分を味わっていた。それと同時に、カッセルの言ってたことの意味が染み込んでくる。


『僕はね、知ってしまったんだ。バーディナムの<目的>を、善神だなんてとんでもない。やつこそが僕達人間を苦しめる悪神だよ。そして魔王こそが、バーディナムを止めるために立ち上がった救世主なんだ』


という言葉の意味が。



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