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私の勇者様

『ポメリア…ドゥケ……』


ライアーネ様に言われて鍛錬を切り上げた私は、汗を流すために湯あみをしながら二人のことを思い浮かべてた。


と言うか、勝手に浮かんできちゃうんだな。


焦りで胸が締め付けられる気分になる。このまま王都から飛び出して、馬を走らせて魔王のところに向かいたい衝動に駆られる。


だけどそんなことをしてもただ犬死になるだけなのは私にも分かる。


でも……胸が痛いよ……


汗を流して体はすっきりしても心まではまったくすっきりしないまま部屋に戻ろうとした時、


「あの…少しいいですか…?」


って不意に声を掛けられた。


振り返った先にいた人影に、


「ポメリア…!?」


と思わず声が出てしまう。


それくらいにパッと見の印象は似てるけど、もちろんそれはポメリアじゃなかった。


「ごめんなさい…!」


ってその子は怯えたみたいになる。


「あ、ご…ごめんね。こっちこそ」


慌てて声を掛けたのは、魔王の城砦から助け出した神妖精しんようせい族の女の子の一人だった。


「あ…あの…助けていただいてありがとうございました」


そう言ってその子は深々と頭を下げる。


そんな様子を見て、


『あれ…? ポメリアとはちょっと違うな』


なんて考えが頭をよぎった。


うん。確かに違う。ポメリアはもっと言葉少なく、どこか浮世離れした神秘的な印象だけど、この子はポメリアに比べると普通っぽい…?


実際、パッと見の印象だけなら彼女達はすごく似てるんだけど、よくよく話してみたりすると、やっぱり少しずつ違うみたいだ。


「あなたは…?」


名前が出てこなくてつい問い掛けてしまう。


「私は、ティアンカっていいます。助けていただいたお礼をちゃんとしたくて…」


ティアンカって名乗ったその子は、少しはにかんだ様子で私を見上げてた。顔つきや体つきはやっぱりポメリアに似てる。ただ、私を見る目が何となく熱を帯びてるように見えるのは、気のせいなのかな?


と思ったら、


「あの…シェリスタ様、私の<勇者様>になっていただけませんか…!?」


って。


は、はいい!?


突然の申し出に、言葉の意味がすぐに頭に入ってこなかった。だけど真っ直ぐに私を見詰める瞳を見詰め返してるうちにそれが染み込んできて、また驚かされる。


「ゆ、勇者? 私が!?」


「はい。私の勇者だった方は先の戦で亡くなりました。だからもう一度、勇者様を見付けたいのです」


「ちょ、ちょっと待って。勇者って、あなた達が決めるの?」


「そうです。私達が『この方だ』と感じた方が勇者になります」


って、ホントなの、それ……!?



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