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天衣無縫

テルニナとアリエータの二人を前にしても、アリスリスは平然としてた。まるで<お姉ちゃん二人に迎えに来てもらった幼い妹>みたいに。


彼女にとってはまるで相手にならないからだろうな。青菫あおすみれ騎士団全員で一斉にかかったって勝負にはならないと思う。


「はあっ!」


テルニナとアリエータが声を揃えて同時に斬りかかる。でも、テルニナの剣を自らの剣で受け止めて、アリエータの剣に至っては素手で掴んでしまった。いくら本物じゃないからって無茶苦茶だ。


剣を受け止められた二人が思い切り体重をかけて押してもびくともしない。こんな小さな体の女の子なのに、二人がかりでも一歩も下がらせることができない。


「くっ!」


剣を合わせてたテルニナは、敢えてそれを滑らせて外し、開いた胴へと剣を奔らせる。のに、届かない。届く前に、テルニナの体自体が弾かれて吹っ飛ばされた。


自分の胴にテルニナの剣が届くよりも早く、アリスリスの剣がテルニナの胴を捉えたんだ。


『…剣筋が全く見えない……』


横目でその様子を見てた私はそんなことを考えていた。実際、まったく見えなかった。


そんな私の腹にも、ドスン!っていう衝撃が。


「よそ見をするな!」


思わず下がった私に、ソーニャの叱責が飛ぶ。


そうだ。今は目の前の相手に集中しなきゃ。


思い直し、態勢を整え直す。それと同時にソーニャに斬りかかると、彼女も正面から受け止めてくれた。


「剣戟が重くなったね」


ギリギリと剣を合わせると、ニヤリと笑いつつソーニャが呟く。


「でも!」


今度は突然、フッと彼女の力が消えて、私は前につんのめるように体が泳いだ。そこに、背中側から一撃が。


私がバランスを崩してる間にソーニャは体を一回転させて、私の背に剣を振り下ろしたんだ。


ソーニャは元々、剣よりも無手での格闘が得意な女性だった。でも女性では格闘家として身を立てるのは難しかったから騎士団に入ったっていう経緯があるんだって。


単純に剣の腕だけだったらそんなに差はないと思う。だけど、闘いとして相手を打ちのめすという点においては彼女の方が私より上の境地にいるんだろうな。


対して、アリスリスの方は、それこそ天衣無縫を絵に描いたような戦いぶりだ。今は相手が弱すぎるからその場で棒立ちなだけで、魔王の城砦に攻め入った時なんかのそれに至っては、『剣も使う』だけの、ほぼほぼ獣のような身のこなしと攻撃だった気がする。


相手に剣を突き刺したままそれを手放し、周囲の敵を変幻自在の動きで翻弄して蹴り飛ばし、そして再び剣を握るっていう。


真似なんてできないけど、だからこそ予測のつかない相手と戦う時の鍛錬にはなるんだろうな。



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