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支度

な~んてぽやぽやした気分に浸ってると時間なんてあっという間に過ぎて、月がかなり動いてたことに気が付いた。


「あ…と、ポメリアと交代しなくちゃ…」


って、正直、本当はもっともっと一緒にいたかったけど、そんな風に口にした。


「そうですね…シェリスタさんもしっかり休んでください」


とカッセルに見送られて建物に戻った。


で、ドアを開けると、ポメリアがもう起きてて、窓から差し込む月明かりの中で私を見てた。その表情が何となく沈んでるように見えたから、


「どうしたの…? もし具合が悪いんだったらまだ寝ててもいいよ」


そうすればまたカッセルと一緒にいられるかなと思ってそう言った。だけどポメリアは、


「ううん…大丈夫……」


と首を振っただけだった。


「……?」


私はそれがどういうことなのかよく分からなくて、でも、


『あ、もしかしたら私とカッセルに遠慮してる?』


とか思って、なんだか申し訳ないなと気恥ずかしくなってしまったりもした。


だけど今はとにかく体を休めないとと思い直して、またベッドの脇に横になる。けれど、目を瞑るとさっきのことが思い出されてきて顔が熱くなって胸がドキドキして、ぜんぜん寝られなかった。


そうやって悶々としてやっと眠りに落ちそうになった時、ハッと気が付いた。


『そろそろ交代した方がいいよね』


ほとんど眠れなかったけど、なんだか気持ちが昂ってるからか変に頭はすっきりしてた。


「ポメリア、交代だよ」


私がそう言うと、彼女は黙って頷いて、ベッドに横になった。そしてそのまま、空が白み始めるまで寝てもらったんだ。


「あ~、今ごろになって眠たくなってきた……」


外が明るくなって朝の空気が満ちてくると逆に眠くなってきて、ポメリアが起きてきたらすぐさま私も寝てしまった。


で、日がすっかり上り切ってようやく目が覚めて、ちょっとすっきりして出発の準備をしてたら、アリスリスも起きてきた。


「おはよう。よく眠れた?」


問い掛ける私に、まだ寝ぼけたあどけない子供の顔をした彼女が「うん…」と小さく頷いた。


湯あみした時にちゃんと洗ったからか、亜麻色の髪がサラッと揺れてた。


ああ、やっぱりこんなに可愛い女の子じゃないのさ。こんな子を戦わせるなんておかしいって思ってしまう。


これからは彼女にはあんまり無理をさせないであげたい。どうしてもって時には仕方ないとしても、なるべくなら。


私達と同じように支度をしながら、服を着て大きすぎる鎧を身に着け、やっぱり大きすぎる剣を携えてアリスリスもキッとした顔をしたのだった。



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