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人生って本当に

青白い月の光の下、しばらく抱き合っていた私とカッセルは、やがてどちらからともなく腕を緩めて見詰め合い、当たり前のように自然と唇を重ねていた。


ドゥケのそれとは違う、本当の意味での<口づけ>だった。


私は彼を受け入れて、彼も私を受け入れてくれてた。ドゥケのそれは、ある意味ではおまじないのようなものだったから。彼が一方的に私にしただけだから。


実際には<口づけ>なんて呼べないモノだったから。


『…なんか、不思議……このまますべてを委ねてもいいって気持ちになる…


そうか、私、カッセルのことが好きなんだ……』


ああ…カッセル……


口づけの後で見詰め合って、そしてまた抱き締め合って。彼の腕が私の体を捉えてるのがもうとにかくたまらなくて。


人を好きになるってこういうことなんだね……


だけどその時、なぜかドゥケの顔が頭に浮かんできて、胸がチクンと痛んだ。


『…え? どうして今、彼のことが頭に浮かんでくるの…? 私、ドゥケのことなんて別に何とも思ってないはずだよ。悪い人じゃないけどあんなにだらしなくて、悪い人じゃないけど身勝手で、悪い人じゃないけど女の子いっぱいはべらせてて、悪い人じゃないけど……』


「…どうしました…?」


そんな風にカッセルに訊かれて、


「いえ! 大丈夫です! 初めてだから緊張しちゃって…!」


って誤魔化した。そしたら彼も、


「僕も、女性とこんな雰囲気になったのは初めてです……」


だって、きゃーっ! きゃーっ! マジですかーっ!? あ~っ! 私の方が初めてじゃないのが申し訳ないです~っ!!


なんてこと考えちゃって。


でもでも、彼にそっと抱き締められてたら落ち着いてきて、ドゥケのことも頭から消えてて、はあ、良かったって。


それから二人で月を見上げて、また見詰め合って、二度目の口づけをして。


騎士を目指して、女に生まれてきてしまったことを恨んでしまった時期もあったりしたけど、今はもう、自分が女だってことが本当にありがたかった。彼と出会えて本当に良かった。


「あなたを好きになっていいですか……?」


ああ…そんな風に囁かないで。体の力が抜けちゃいそう……


好きになっていいですかじゃなくて、私、もう、あなたのことが好きですから。


「もちろん…私も好きになっていいですよね……?」


あ~! まさか自分の口からそんな言葉が漏れるなんてぇ~っ!


あはは、あはは、頭の中が蕩けそう。私は今、何をしてるの~?


こんなことがあるとか、人生って本当に不思議だな。


私、生きてて良かった……



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