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優良物件

こうして私達と一緒に西を目指すことになったカッセルだけど、私としては力強い仲間を得られたという実感だった。だって、もしドゥケほどじゃないとしても仮にも<勇者>なわけだから、本人も言ってた通り、はぐれ魔族くらいならそれこそ相手にならないだろう。


唯一心配があるとしたら彼が男性で、私達は女の子だってことだけど、その点についても彼はすごく奥手な感じで、ぜんぜん、私達に対して何か邪な感情を抱いてるっていう気配すらなかった。


だからといってももちろん油断はしない。寝る時は少し離れたところで、やっぱりポメリアと交代で仮眠をとるようにしたし、彼の前ではきっちりとした恰好を心掛けた。


これがドゥケならそれこそ私達に甘い言葉を囁いてきたりもするとこだろうけど、彼はとにかくそんなタイプじゃなかった。


だけど、少し気になることもない訳じゃなかった。


ドゥケに対しては子犬みたいに懐いてたはずのポメリアが、同じ勇者であるはずのカッセル相手には決して傍に寄ろうとしなかったんだ。


「どうしたの? ポメリア」


私がそう尋ねても、彼女は黙って首を横に振るだけで、要領を得ない。だけどまあ、好みっていうのは人それぞれだし、単にポメリアの趣味じゃないってことかもね。どっちかと言えば同じ大人しい感じの者同士、気が合いそうだなとも思ったんだけどね。


カッセルが加わってからは、実際、楽になった。私が戦わなくてもほとんど彼がはぐれ魔族を退けてくれるから、あくまでポメリアを守ることに専念できたし。


それに彼は本当に優しかったし女性に対する気遣いも素晴らしかった。私とポメリアが例の蔓から出る水で体を洗う時にはしっかりと目隠ししてくれて背を向けてくれてて決して見ようなんてしなかったから。


こういうところも、ドゥケに比べたらちゃんとデリカシーってものを持ってるんだなって意味でポイント高いね。


まあドゥケも、露天風呂の時には気遣うようなことを言ってくれたけどさ、でも結局、私がまだいるのに一緒の湯に浸かったりして、本当に恥ずかしかったんだからね!


なんてことが数日続き、私はカッセルが微笑んでたりすると、何となく胸の辺りがほわっとなる感じもしてたんだよね。


しかも彼がはぐれ魔族を苦も無く退けたのを見た時なんかは、その横顔に見惚れちゃったりなんかして。


よく見ると彼、思った以上に凛々しい表情する時があるんだよね。しかもその直後に、


「大丈夫でしたか?」


とかちゃんと私達のことも気遣ってくれて、いやあ、これはなかなかの<優良物件>って感じじゃないですかなあ。



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