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神妖精

一糸まとわぬ姿で透明な羽を広げて空中に浮かび、陽の光を浴びてキラキラと輝く彼女の姿は、もう、夢を見てるとしか思えなくらいの美しさだった。


見惚れるとかそんなどころじゃない。魂そのものが奪い取られそうなくらい、と言うか、無条件に自分の魂そのものを献上したくなるような、わけの分からない美しさって感じなのかな。


神妖精しんようせい族ってそういうものらしいというのはお伽話の中でも語られてたけど、本当だったんだ……


だけど、でも、ポメリアがその神妖精しんようせい族って……?


いや、確かにどこか浮世離れした印象はあったけど……


たまに人間じゃないような印象を受けることもあったけど……


茫然と見上げる私の前で、ゆっくりと彼女は地面へ降り立ち、透明な羽を複雑に折りたたむとそれは彼女の体に隠れて見えなくなった。そして近くの枝に掛けてあった服を手にしてそれを身に着ける為に背中を向けた時には、羽の痕跡すらなくて、普通の子供の体をしたポメリアがいただけだった。


「こうして時々、体を作り変えないと、人間の姿を保てないの……


神妖精しんようせいは滅んではいない。こうやって人間に紛れて生き延びてる。数は少ないけど……」


そうだったんだ……じゃあ、ドゥケがポメリアを守って死ななきゃいけないっていうのは……


私の頭に浮かんだ疑問に答えるかのように、ポメリアは言った。


「勇者の力じゃ、魔族は倒せても魔王は倒せない……魔王を倒せるのは、神妖精しんようせい族の巫女だけ……


だからドゥケは、魔族の注意を自分に引き付けて、私のことを隠し、私を守って魔王のところに連れていくのが役目……


でも、それをすると、勇者は魔王に殺されてしまう……


ドゥケはそれが分かってて、私を守ってくれてる……


だからシェリスタ、ドゥケを嫌わないであげて…彼が女の子に優しくするのは、私のことを魔族に悟られないようにする為だったから……」


そう…だったんだ……


だから彼は、私に自分のことを好きになるように無理強いしなかったんだ。


だけど、


「だけどそれじゃ、どうしてドラゴンはポメリアを攫おうとしたの?」


そう問い掛けたけど、私にも何となく分かってた。それをポメリアが裏付けてくれる。


「さすがに気付かれちゃったみたい…魔族なら私には迂闊に触れられないけど、ドラゴン族には関係ないから……」


その上で、彼女は続けた。


「でも、ドラゴン族の力じゃ私は殺せない。私を殺すことができるのは、魔王だけ。神妖精しんようせい族と魔王は、お互いに宿命の天敵なの……」



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