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ドゥケ様のおかげ

「私も一緒に道具の手入れをするから、座りなさい」


ライアーネ様にそう言われて、私も「はっ! 光栄であります!」と応えて腰を下ろした。滅茶滅茶緊張したけど、


「ほらほら、緊張してたらちゃんと手入れできないでしょ」


って微笑みながら言われて、「恐縮です!」と応えながらも落ち着こうと努めた。


ライアーネ様も私の隣で、ご自身も鎧や剣の手入れを始める。ちらりと視線を向けると、鎧も剣もよく手入れがされてるというのが私にも分かった。


「どう? 青菫あおすみれ騎士団での暮らしにも慣れた?」


鎧の手入れをしながらライアーネ様が訊いてくる。


「は! 私のようなものには過分の待遇に身が引き締まります!」


と応えると、


「まだぜんぜん肩の力が抜けてないわよ」


って笑われてしまった。


「私達、青菫騎士団は、確かに規律正しく清廉であることを是としているけれど、それは決して堅苦しく四角四面でいることを良しとしている訳じゃないの。私達団員は、生まれは違えども家族のように互いを大切にし、支え合って我がバーディオン王国に尽くすのが誉なのよ。


公務の間は無私でいるべきでも、わたくしの時間でまで堅物でいる必要はないわ」


優しくそう言われて、私は胸がいっぱいになるのを感じた。なんという心の広い、器の大きなお方なのか…!


でも、だからこそ納得がいかなかった。どうしてこれほどのお方が、あんな女たら…じゃなかった不埒な男に…!


なんて思いつつも、それは言葉にはできなかった。なのに、


「…あなたもドゥケ様のことが嫌い?」


っていきなり図星を突かれてビクンッと体が撥ねてしまった。


「い…いえ、けっしてそのような……!」


とは言ったものの、自分でもバレバレだということは分かってしまった。するとライアーネ様は悪戯っぽくクスクスと笑って、


「いいのよ。私も最初はあなたと同じだった。だけどね、ドゥケ様のことを知れば知る程、あの方の素晴らしさが分かってきて、今では命を投げ出してもいいと思ってるくらい」


『……ええ…?』


思わず声に出てしまいそうなのをようやく呑み込んだけど、やっぱり私にはまったく分からなかった。ライアーネ様ほどのお方がどうしてそんなことを言うのか。しかも、最初は私と同じだったって……それがどうしてこうなってしまうの? やっぱり魅了チャームか何かを掛けられてるんじゃないかって思ってしまった。


なのにライアーネ様は言うの。


「今は分からないかもしれないけど、しばらく一緒に戦ってる間にあなたにも分かるわ。


知ってる? ドゥケ様と一緒に戦い始めてから、我が青菫騎士団は一人の死者も出してないの。


それも全て、ドゥケ様のおかげ」



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