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この忙しい時に!

退団することになった三人に、ドゥケは次々とキスをしていった。道中の無事を祈るのと、簡易版<善神バーディナムの祝福>ということなんだろうとは思うけど、ついイラッとしたものが胸の中によぎるのを感じてしまった。


いけないいけない、あのコ達は逃げるんじゃない。あのコ達はあのコ達なりの戦いをする為に退団する道を選んだんだ。ライアーネ様がそれを認めてるのに、私があれこれ考えるべきことじゃない…!


翌早朝。退団するコ達を皆で見送った後、装備をまとめ、テントの点検をして出発に備える。他の部隊や魔王軍の動向を監視してる斥候達からの念話による情報に基づいて優先的に対応しないといけないところにリデムの転移魔法で騎士団ごと移動することになる。


リデムが転移魔法を使えるのは一日二回といっても、戦闘があれば当然のこととして魔力を消費するから、実際には一日一回が限度だろう。


また、どこを優先することになるかはライアーネ様の判断に任されてる。場合によっては厳しい選択をしないといけないこともあるのは十分に推測された。


『団員達の負担ももちろん増えるけど、ライアーネ様の負担はもっと増えるんじゃないかな……』


と心配になった。


そんなことを考えながら準備をしてると、ドゥケとライアーネ様が一緒にいるところに出くわした。思わず反射的に物陰に身を隠してしまった。でも、決して大きな声じゃない二人の会話が聞こえてきてしまう。


「ドゥケ様…これからのことを思うと私は不安で胸が潰れそうです…私の判断ミスで大きな犠牲が出るかもしれないと思うと、体が震えてきてしまいます……」


そんな弱気なことを口にするライアーネ様は始めてだった。いつもはとても凛々しくて何でも瞬時に決断して決して折れない挫けない方なのに……


そうか…そうだよね。ライアーネ様だって人間なんだ。怖くて怖くて仕方ない時だってあって当然なんだ。でも騎士団長という責任を背負う為に踏ん張ってるんだ。それができることがすごいんだ。


ライアーネ様の弱気なところを垣間見てしまっても、私はいっそう、彼女のことを尊敬したいと感じてしまった。


ただその一方でドゥケは、


「大丈夫。不安なのは俺も同じだよ。だけど俺は君達を守る。それは約束する。万が一のことがあってもそれはすべて俺の責任だ。ライアーネはライアーネにできることをすればいい」


とか立派なことを言ってるけど、私にはどうしてもピンとこなかった。だって、そんなこと言いながらライアーネ様のことを抱き締めて、キ、キスとかしてるし……!


みんなが忙しくしてる時にそれってどうなの!?



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