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それぞれの選択

夕食の後で集まった団員達三十余名を前にして、ライアーネ様の目に光るものが見えた気がした。でもライアーネ様はそれを敢えて無視して、団員達に向かって声を上げた。


「これほどの者達が残ってくれたことを、私は心より感謝する。本当に心強い限りで誇らしい。我が青菫あおすみれ騎士団は魔王軍などには決して屈しないと改めて感じた。礼を言う」


そう言って皆に向かって頭を下げたライアーネ様に、団員達が口々に言った。


「私達は誇り高き青菫あおすみれ騎士団です! 国王陛下と民の為に戦うのは当然です!」


「私達はライアーネ様と共にあります!」


「ともに魔王軍を討ち滅ぼしましょう!」


みんなのその声を浴びながらもライアーネ様が頭を下げたままだったのは、きっと、泣きそうになってる顔を見せたくなかったからだろうなって気がした。そうしてしばらくしてやっと頭を上げた時、皆も一斉に静まってライアーネ様を見た。さっきより一層、目に涙が溢れそうになってるのがはっきりと分かった。


だけどそれ以上は言葉にならなかったのか、何度も口を開きかけるけどライアーネ様は何も言わなかった。そして、そんなライアーネ様の肩にポンと手を触れてドゥケが脇に立った。


「後は俺が……」


ドゥケのその言葉を受けて、ライアーネ様は下がって行った。残ったドゥケに皆の注目が集まる。なのにあいつは、へらへらと笑って頭を掻いた。しかも、


「いやあ、俺がここにいたばっかりにみんなには貧乏くじ引かせちゃったな。ごめん!」


とか言って頭を下げた。でもみんなは、


「そんな! ドゥケ様の所為じゃありません!」


「そうです! すべてはあの憎っくき魔王軍の所為です!」


「私達はドゥケ様とライアーネ様について行きます!」


って逆に盛り上がってた。


「……」


この時の空気にも、私は正直言ってついて行けないものを感じてた。ライアーネ様が話してくれてた時には泣きそうになってたのに、ドゥケが出てきた途端に涙も引っ込んだ。


ただ…


ただ、だからといってドゥケの所為で貧乏くじを引いたという気分には不思議とならなかった。むしろ、これまで以上に魔王軍と戦うことになるのなら、それこそ望むところっていう気分にすらなれてた。正直、魔王軍に対して<八つ当たり>したいって感じだった気がする。


軍議の後でみんなに囲まれてでれでれしてるドゥケのところに、みんなに押し出されるようにして三人の団員が近付いた。退団することになった三人だった。その中には、先日、初めての夜伽の日に出撃があって結局流れてしまったコもいた。彼女には親がいなくて、親戚のところに幼い弟妹を残してきてるってことだった。


泣きじゃくるそのコの頭を、優しい目をしたドゥケがそっと撫でてたのだった。



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