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死ななくちゃいけない

どうしていいのか分からずに悶々としたままで、私はまたポメリアの世話の担当になった。


ゆるふわな彼女を前にすると、やっぱり癒される気がする。彼女は本当に穏やかで優しくて可愛らしい。


彼女も私達のことを気遣ってくれるし。


「シェリスタ…元気ない……」


またいつものように「ニンジン食べて…」と差し出されたニンジンを食べた私を見て、彼女はそう言った。その言い方がまた優しくてぐっときてしまう。


前にも言ったと思うけど、ポメリアのことは、実は誰もよく知らなかった。どこからきてなぜドゥケと行動を共にしていて、どうして彼をあんなにも慕ってるのかも分からない。


姿が幼く、その振る舞いは姿以上に幼いポメリアは、ドゥケと男女の関係にないことは一目瞭然だった。どちらもそういう振る舞いをしないし、同衾することもない。ポメリアみたいに幼い女の子にそんなことするならそれこそ許せないと思うけど、彼女を見るドゥケの表情は、幼い妹を見守る兄とか娘を見守る父親って感じなのも事実だった。


だからますます分からなくなる。ドゥケのことが。軽薄で女ったらしで実際に何人もの女の子と関係をもって子供まで生ませて、まるで王様みたいに君臨してて。


だけど、彼がいるこの部隊で戦死者が出ないことも事実でリデムやポメリアのことを大事にしてるのも確かで。って、どっちがドゥケの本当の姿なの…!?


「シェリスタ……」


ポメリアを見詰めたまま黙ってしまった私に、彼女はまた柔らかく声を掛けてくれた。その上で、ぽつぽつと語り始めた。まるで私に縋るような目を向けながら。


「私…シェリスタことも好き…みんなのことも好き……だから私が守る……


だからシェリスタも守って…ドゥケのことを……ドゥケは、私を守って死ななくちゃいけないの……


だからそれまでは守って…ドゥケの心を守って……


お願い……」


だけど、そこまで言ったところでポメリアは「あ!」って顔をして自分の口を両手で覆ってしまった。言っちゃいけないことを言ってしまったって感じだった。だけどこの時の私には、彼女が言ったことの意味がよく呑み込めてなかった。


……え? はい…? 死…? て? 『死ななくちゃいけない』? ドゥケが……?


正直、疑おうと思えばこの時のポメリアの様子だって疑うことはできてしまうと思う。思わせぶりなことを言ってドゥケに対する印象を操ろうとしてるんだって穿った見方をしようと思えばできる。


でも……


でも、あの時のポメリアの縋るような目が、演技だとか演出だとかとは、どうしても思えない。


でも、だからこそ分からないんだ……!



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