その想いを
転移の魔法は膨大な魔力を必要とするから一日で二回が精々という高位魔法だった。それを私達の為に使ってくれたリデムと傷を癒してくれたポメリアには素直に感謝できるけど、ドゥケにはどうしてもそういう気分になれなかった。
ただ、あいつのキスが善神バーディナムの<祝福>に近い効果があるんだということで、その行為については納得……できるかあっ!!
だいたいあいつが言ってることがホントかどうかなんて分からないでしょ!? 確かに危ないところで助かったのは本当でも、それがあいつの、キ…キスのおかげかなんて分かんないじゃない!?
あいつが嘘吐いてそういうことにして女の子の唇を奪ってるって考える方がよっぽどずっと納得できるわよ!!
ギーッ! ムカつく~っ!!
なんて私がいくら考えても何事もなかったみたいにその日はそこで野営して、夜が明けてから回復した騎士や戦士達はそのまま歩いて自分達の陣地へ帰ることになった。少なくとも昼間ははぐれ魔族が出てくることもないから。昼間は、かなりの数が集まってお互いに補い合わないと魔族は弱体化するからね。だから魔王軍としての進軍はあってもはぐれ魔族がうろつくことはない。
そして私達は、リデムの転移の魔法で自分達の陣地に戻った。
なんか、すごく疲れた気がする。精神的に…
自室に戻って体を休めようとしても、なんだか気持ちが休まらない。よし、こういう時は体を動かそう!
私は庭に出て剣の素振りを始めた。でもそうすると今度は同じように鍛錬をしてて手が滑って大怪我しそうになった時のことを思い出してしまう。しかも、やっぱりあの時にもキスされたんだった。
ぐぎぎぎぎ!
くそっ! くそっ! くそっ!
またすごく体に力が入って剣を握った手がぬるりとなるのが分かった。
いけないいけない、また同じ失敗するところだった。
剣を鞘に戻してから布で体を拭いて、手もしっかり拭いて、柄もしっかり拭って、滑らないようにしてからまた剣を振るった。
集中…! 集中だ…! 雑念を追い払い、自らの体がどう動いてどう敵を打ち倒すのかをイメージするんだ。私はずっとそうしてきたんだ。立派な騎士だった父様に恥ずかしくない騎士になる為に。私はそれを目指してるんだ。あんな奴のことは気にしてる暇なんてない…!
幼い私が真似をして棒切れを振るってるのを見て、父様は、
「ほお? 良い筋をしている。シェリーは立派な騎士になれるかもしれないな」
その言葉を支えに私は頑張って騎士団にまで入った。その想いをあんな奴に汚されてたまるか!
だけど…そうなんだけど……




