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想定外の遭遇

「それでは、よろしくお願いいたします」


「はい、彼らのことはお任せください。必ず治してみせます」


最後にそういうやり取りがあって、私達は自分達の陣地に戻る為に馬車を出した。松明で夜道を照らしながらゆっくりと移動してたけど、帰りも順調だった。これなら明日の朝までには着けると思う。


重傷者達に水を与えたりしながら、私は改めて戦場というものを実感してた。ポメリアやリデムの支援がどれほど大切か、考えさせられた。


だけど、峠を越えてしばらく行った頃、見張りの団員が叫んだ。


「はぐれ魔族、来ます!」


私もすぐに剣をとって外に出た。でもそこには、何か白い柱が立ってるだけだった。


って、違う…? 足…か?


思わず見上げた先に、松明の灯りに照らされた無数の牙が並んだ口が見えた。


「スケルトンドラゴンだ!!」


誰かが叫んだ。死んだドラゴンの骨に魔力が宿って怪物化したものだった。生きてるドラゴンに比べればずっと格下だけど、それでも、善神バーディナムの祝福も受けてない人間じゃ絶対に敵わない相手だった。祝福を受けてる私達でも、かなり厳しい。


「くそっ! こんなのがはぐれでうろついてるなんて…!」


また別の誰かがそんな風に言った。私も声は出なかったけど、同じことを思ってた。このレベルのがここまで見付からずにいたのか…!


想定外の事態だった。精々がオークとかゴブリンとかだと想定してたからこの人数だったのに。


「散開! 固まってると一気にやられるぞ!! それぞれが随時攻撃して意識を一か所に向けさせるな!!」


隊長が叫んで足に切りかかる。太い骨が削れて破片が飛ぶ。善神バーディナムの祝福を受けた私達の剣なら攻撃が通る!


「休むな! 全員で攻撃だ!! 手数で削るんだ!!」


他の団員に頭を向けたのを見て、私も突っ込んだ。足に切りかかると、今度は私の方に頭を向けた。その隙に別の団員が同じように切りかかる。


「ギャッ!!」


誰かが悲鳴を上げた。スケルトンドラゴンの爪を受けて吹っ飛ぶのが見えた。


「怯むな!! 攻撃を続けるんだ!!」


って叫んだ隊長が尻尾の一撃を受けてやっぱり吹っ飛んだ。


起き上がろうとしてるから死んではいないのが分かったけど、それに気を取られた瞬間、私の目の前が真っ暗になった。


鎧の前と後ろにものすごく硬くて鋭いものが突き刺さるのが分かった。それが私の体にも刺さって、ビクンって撥ねた。牙だ。頭からスケルトンドラゴンに噛み付かれたんだ。


善神バーディナムの祝福を受けてない鎧だったらその一撃で串刺しになってたと思う。だからこのくらいで済んでマシだったのかもしれない。


でも、痛い…! 痛いよ……!! 死んじゃう……っ!!


私、こんなところで死ぬの……!?


だけど、そう思った私の目は、次の瞬間に松明の灯りを捉えてた。そしてその灯りに照らされた顔を見た。


「ドゥケ……?」



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