弱者が剣を振るう先(★)
傷付けた気でいるあなたに教えてあげるわ
あなたが血の通った“人”である以上
こんな無様な負け惜しみだって
響かないということはないはずよ
私は怒らないわ
反論もしないし 掴みかかるなんてこともないわ
弱者には弱者のプライドってものがあってね
足掻けば足掻くほどみっともないって
痛いほど知っているのよ
代わりに笑っていてあげるわ
あなたの傍にちょこんと座って
もの言わない微笑みの上を
さめざめと冷やしていくわ
毎晩毎晩
音も立てずに泣き続けてあげるわ
青くさめざめと冷えていくあなたの顔へ
私はいつまでだって微笑むの
蝕んだ気でいるあなたに教えてあげるわ
あなたが血の通った“人”である以上
歪んだ感情にも共感ができるでしょう?
ついさっきの話よ
もう終わったこと?
どうかしらね
私が過去のあなたの鏡になってあげる
私は怒らないわ
そんなに見下ろしたいのなら お望み通り
いくらだってへりくだってあげる
こんな弱者にだって守りたいものがあるからね
ただそれだけの為よ
目には目を
痛みには痛みを
私はそれを全て自分に向ける
人様へ、なんて……
そうね
そしたらあなたと同じね
ちょっぴり羨ましいわね
でも真似したくないわ
絶対にね
正直でいたいだけなのに
いびられ体質 やんなっちゃう
ただの無神経を“サバサバ系”とかいって満足するの
いい加減やめてくれないかしら
幼いから見くびった
女だから甘く見た
心当たり無いかしら
無いって胸を張って言えるかしら?
生涯通してその信念を保ち続けられるのかしら
濡れた微笑みで見ていてあげるわ
私が満足いくまで続くわよ
さぁそろそろ覚悟を決めて頂けるかしら
あなたが血の通った“人”である以上
良心は必ず存在するし
良心には痛覚が存在する
全て己で受け止める
断末魔のような私の悲鳴を聞いて
蝕まれるのはあなたよ
それで清々しいっていうのなら
相当な大物だと見直してあげるわ
私の言葉に裏を探すのはお勧めしないわ
だってそんなに頭の回転良くないもの
皮肉を仕込むなんて……ねぇ
そんな高度な技術は持ち合わせていないわ
残念ながら
だけど 嘘をつかない人間なんて居ない
それくらいはさすがにわかっているわ
嘘があったのなら ただ一つ
――覚悟は決まったかしら?
言葉の形なんて関係なくてね
悪意が無いならどんなに鋭くたって受け止めたの
全身で感じたの だから言ってるの
だから示すの
笑っていたって その悪意
ちゃんとこの身に受けたのよ
人に当たって憂さ晴らしする手段を選んだあなたにもう他の選択肢は無いの
見届ける責任があるの
逃しはしないわ
耳を塞ぐことも目を伏せることも許さない
弱者を怒らせるってこういうことなのよ