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Elegy(★)



ソファに寝転んで瞼を閉じると


なんとも単調なエアコンの風音を押し退けて


なんとも切ないメロディが聴こえてくるよ



傷痕にじんわり染みていくみたい


気が付けば目尻を濡らしたりなんかしてた


センチメンタルな振動


置いてけぼりの衝動



好みはさほど変わってないみたいなのに


何処か変わってしまったラインナップ




あの頃はこんな傷さえ無かったんだ


だからわからなかったんだ


何遍なんべん 聴いても 聴いても


君の声を 聞いても 聞いても 響きやしなかった



みんながこぞって手にするほど夢中だった


センチメンタルな振動


やるせない情動



興味もなかった


泣き縋る女の歌



「あんたにはわからない!」



と、叫んで泣いた


君の気持ちが今ならわかるんだ




どうして選んでくれないの?


とか


私をわかって!


とか



そういう言葉が嫌いだった



わかんないものはわかんないんだと思った


選ぶ権利なんてそれぞれにあるし


強要なんて出来ないじゃん


知ろうとしてくれない相手に求めるなんて馬鹿げてる



そんな理想論を守り抜いて


実現可能なんだと示そうとしてた




好きで好きでたまらなくて


会うたびに彼の話ばかりしていた


置いていかれた君が泣き縋れるのなんて


私の胸くらいしかなかっただろうに




「そんな奴を選んでどうすんの?」



なんて言ったら


鋭く尖った涙目から伝わった


どん、と胸を突き返された気がした




「あんたにはわからない!」




……あぁ、そうだったんだね




ごめん、としか言えなかった私も


あの頃の君にいくらか追いついたと思う



私は経験が足りなかっただけだ


その傷を知らなかっただけだ


幼すぎただけだ


好きなものだけ好きに選んでいただけだ



手に入らないものが欲しかったり


異なる人格に自分を認めさせたかったり


居場所を得たいだとか


慰めてほしいだとか



今ならわかる


人間ってそういうもんだ




仰向けの首を少しだけ傾ける


鳴り響くプレイヤーと逆向きに


自分の手首を見つめたりして




ほら こうやって残ってる


表は癒えていても


深くへ達した傷痕が消えることはない





額を手で覆って瞼を閉じると


ガタガタ この身を揺らす振動と


ヒシヒシ 切ない衝動が聴こえてくるよ




今ならわかるって駆け付けたくても


君はもう


私以外の居場所を見つけただろう?



センチメンタルな激痛


届かない激情




あぁもう、こんなん言っててもどうしようもない




今からちょっくらひと眠りするから


良かったら夢の中へ会いに来て



あの頃の君よ……



傷だらけのこの手で


一晩だけ抱き締めてもいい?



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