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秘めてしまう(☆★)
誰に教えられた訳でもなく
いつの間やら芽生えたそれは
いつだって口にすることがためらわれた
あまりいい顔をされないと知っていた
甘い響き
淡い想い
切なくて苦しくて
平静を装えど
この胸の中では
幾多もの花弁が乱舞する
甘い香り
愛しい声
もっと欲しくて欲しくて
溢れ出してしまいそうよ
隠しておかねばと思うのは
……何故
みんなこうして育んで
未来へと続いていくのよね
おかしなことではないのよね
だけど
ああ 何故
否定の言葉ばかりがこの胸でこだまする
いけないことなの?
これは恥ずかしいの?
口にすることがためらわれる
言った途端
罪になってしまいそうで怖いの
微睡みの中で密かに怯えた
臆病者の私を
どうか離さないで
お願い
私を名前に当てはめないで
それは形でしかないもの
お願い
この声の中に私を探さないで
言葉になんて出来ていないもの
“何が好き?”
“何が欲しい?“
“何が食べたい?”
ありがとう
だけど
実体があって無いような私には無意味なこと
ちゃんと見つめて
真っ直ぐなその瞳の中に
何者でもない“私”が居るのよ




