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ましゅこん~願いを叶えるキノコの娘~  作者: ちょっと様子見
ホコリタケ~埃原茶狐 ~
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   1

メインヒロインは吉田さんです(震え声)

 昨日の疲れがまだ残っている。

 大体、俺は寝ても覚めてもキノコと一緒に過ごすのが日課だ。だから、ああ言う女の子と接したことも、まともに話したこともない。

 なのに、だ。女の子と接したことも、まともに話したこともない俺が、初めて会った女の子と一晩を共にしたのだ。気疲れをしてもおかしくないと思う。

 第一、叶を“女の子”としてカウントするのもおかしいのではないだろうか? 彼女のことを“キノコ”として接すればいいのか、“女の子”として接したらいいのか、俺には判断がつきそうになかった。


「昨日はこんなにまともに見ていませんでしたけど……。ここは無双さんらしいお家ですね」

 ちゃぶ台の向こう側には、にんまりと笑う叶が居る。

 俺は味噌汁をすすり、一息ついてから口を開いた。

「俺らしい家ってなんだよ」

「そこら中キノコだらけです。キノコのフィギュアとかマニアックすぎます。そして、料理に至っては味噌汁もナメコをふんだんに使っているのに、エノキ氷を入れちゃったり。それも、エノキの石づき部分をバルサミコ酢で味付けをしてしまうとは……」

 叶は瞳をキラキラさせながらエノキの石づきステーキにかぶり付く。

「そして、これがまた美味しい……! 無双さんは男ながら料理も出来るのですね! お見逸れしましたっ」

「いやいや、今じゃ男だって料理する時代よ? 追いオリーブとかしちゃう男だっているし。それにネットで調べればレシピなんていくらでも出てくるぞ? 俺なんかクックノート先生を絶賛活用中だ」

「なな、なんと! 人間世界……恐るべし!」

 口の回りにバルサミコ酢をくっつけながら、叶は驚いた表情をしている。

 その叶の顔を見て、俺は味噌汁を吹き出しそうになった。

「お前……その顔っ」

「えっ?! 私の顔がどうかしたんですか?」

「だから、その顔……っ!」

「はっきり言ってください!」

 口の周りがバルサミコ酢だらけの叶は頬を膨らまして俺を睨みつけてくる。だが、恐くない。むしろ、拍車を掛けて面白くなっているのだ。

「ぶっ……っ! かな、叶……鏡…………ぶふっ!」

 笑いを堪えきれない俺は、口元を抑えながら叶を指さす。

 そりゃ、他人に指をさすのはとても不快だ。俺がやられたら、そいつにラリアットを食らわすだろう。だが、どうしたってその顔芸はシャレにならない破壊力を兼ね備えているのだ。

 俺の行動に不快感を抱いた叶は、その破壊力抜群な顔のまま頬を膨らました。

「鏡? 洗面台で鏡を見て来いってことですか? んもう、無双さんってば酷いですっ!」

 可愛いお尻をぷりぷりさせながら、叶は居間を後にした。

「――ひぃー、笑った笑った」

 俺は叶がその場から居なくなったことを確認してから声を出す。でなければ、呼吸困難にでもなりそうだった。

 腹をさすりながら呼吸を整えていると、チャイム音が響く。もう少し呼吸を整えてから玄関に向かおうと思っていたのだが、一回だったチャイムが二回、三回と回数を増やしていく。うるさいなぁ……と思っていると、次にドアを突き破らんばかりの音が何回も何回も聞こえてくるのだ。

 俺はその音と一緒に聞こえてくる声に聞き覚えがあった。

「…………吉田、さん?」

 玄関の扉の向こう側から聞こえてくるのは、間違えなく吉田さんの荒ぶる声だった。

「粉奈さん! 出てらっしゃい!! 今すぐ、早急に出てらっしゃいっ!!」

 このままだと扉を突き破られるんじゃないかと思った俺は、大慌てで元気の鍵を開ける。

 すると、待ってましたと言わんばかりの勢いで扉が開いていく。

「よよ、吉田さん。なななに――」

「ちょっときなさい!」

 また強引に腕を掴まれると、そのままずるずると吉田さん宅へと連行されていった。

 どうして連行されるのか? と疑問に思う。すると、つい二日前に吉田さんが言っていた言葉を思い出した。

 俺ん家の庭にあるホコリタケちゃんの駆除を昨日する、とか言ってなかったか? だとしたら、吉田さん昨日来たはずたよな? だけど俺だって昨日はずっと家に居たはずだから気付かないわけがない。確かに昨日は叶のことでいっぱいいっぱいだったが、たからと言って家に誰が来たのを知らないわけがない。

 それにしても、吉田さんのこの表情……なかなかの険しい顔だ。そうとう怒っているに違いない。

 一昨日(おととい)は少し……いや、かなり適当にホコリタケちゃんを抜いたかも知れない。だけど、こんなに怒る原因になるのか? と不安になった。

 それでもこのまま何もしなければ俺の脳天に雷が落ちるのが目に見えてる。だったら、何もしないより何かをした方がいいのてはないか? と思った。

「よよ、吉田さん。きききょ、今日もお美しいですねっ!」

 口から出た言葉は、お世辞にもならないお世辞だった。

 すると、ピタリと吉田さんの足が止まる。

 お、やったか?! なんて思っていたら吉田さんは、

「ああん? 今、何か言ったかい?」

 と、ドスのきいた声でガンをとばしてきたのだ。

 さすがにビビった俺は、「ひい! 何でもないですっ!」と声を裏返しながら叫んだ。

 吉田さんに無言で手を引かれた俺は、一昨日も連れ込まれた彼女の家へと足を踏み入れる。

 どうして俺をまた連れ込むのかと彼女に尋ねたかったが、今さっきのお世辞にもならないお世辞を言ってしまったせいで聞くに聞けなくなってしまっていた。俺がもじもじしていると、吉田さんは俺の腕から手を離すとくるりとこちらを向き窓の方を指さす。

「それよりも、あれは粉奈さんのお友達かしら?」

 吉田さんが指さす方向はあのホコリタケちゃんのフェアリーリングがあった庭であった。その庭のなかなか広い芝生の上に、女の子が座り込んでいるのが俺の目に入る。それもよく目を凝らして見てみると、その子は湯呑みを両手で律儀に持ち、すすっているようではないか。

「まるでホコリタケを思わせる服装。そんな変わり者なんて、粉奈さんの同類しかいないでしょう?!」

 確かにあの格好……ホコリタケそのものであった。あの頭から煙のようなものがふわふわしているのも、なかなかホコリタケを愛していなければ出来ない仕掛けだろう。

 だが、しかしながら俺と同類の人種……“キノコオタク”を見かけることがない。知人にそんな“キノコオタク”が居れば俺は苦労していないはずだ。しかも俺が知る限り、あそこまで高度なキノコのコスプレを見たことがない。きっと知っていたらお近付きになっていたのは明白だ。

 ……むしろなりたいんだが。

 そんな気持ちを吉田さんに悟られぬよう、俺は首を振った。

「いや、あんな高度なコスプレっ子は知りませんよ。……知り合いたくてもなかなか居ませんし」

「嘘は吐かないで! あんな物好きな格好しているんだから、あなたの同類に決まっているでしょう?!」

「知らないものは知らないです」

「知らなくったって同類に変わりないでしょう! さっさと連れて帰りなさい! まったく、類は友を呼ぶとはこの事なのかしらっ!」

 吉田さんは顔を真っ赤にして怒りながらそう言う。

「そんな、無茶苦茶な」

「うるさいわよ! さっさとどうにかしなさい!!」

 吉田さんがそう怒鳴ると次の瞬間、俺の腕をまたがっしり掴むと庭に放り投げる。

「あいたたた…………」

 勢いよく先に落ちた尻を撫でながら、俺は周りを見た。すると、すぐそこにはそのコスプレっ子が居るではないか。

 その子は俺の方にくいっと顔を向けてから話しかけてきた。

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