機械天使
魔女ラムワイヤーの語ったゲームのルールは簡単なものだった。
この歌舞伎エリアで、千人の人間を殺害すればゲームクリア。
ただし、一ヶ月の期限付きであり、それができなければ、彼女自身を監視している『機械天使』なる者によって命を奪われることになる。
安堂光雄の戦略は、その『機械天使』そのものを殲滅するという大胆不敵なものだった。
ゲームのルールなど最初から無視した戦略だった。
「確かに、この作戦だとルールを守る必要もないし、あなたの言う勝算もわからなくもないわ」
ラムワイヤーは幼女の顔には似合わない口調で話を続けた。
「あの『機械天使』とやらを倒すことができるなら、さっさとそうしてるわ。でも、今までそうしようとした者はことごとく失敗して、悲惨な最後を遂げたわ」
暗い貌で語り終えた彼女の瞳は絶望的な光を宿してキラキラと輝いていた。
「まあ、カオルさんに任せておけば大丈夫!」
「安堂さん、丸投げですか!」
静かに話を聞いていた風守カオルが思わず突っ込みを入れてきた。
「僕は戦闘は不向きなので。作戦は考えるけどね」
「……う、まずいタイミングで到着したようね。カオルちゃん、お疲れ様。安堂さんも元気そうですね」
その時、安堂光雄の視線の先に、秋月玲奈が現れた。
どうも道場への到着が遅れていたため、迎えにきてくれたようだった。
「玲奈ちゃん、お出迎え、ありがとう。ナイス、タイミングよ!」
戦闘要員が増えたので、風守カオルは上機嫌だった。
安堂光雄が公安にいた時に通っていた格闘技道場は秋月流柔術であり、現在は彼女の祖父が当主をつとめている。つまり、師匠の孫娘に当たるのだが、その際、少しだけ面識があった。
秋月玲奈はつい最近までアイドル歌手として活躍していただけあって、長い髪をポニーテールにしていて、なかなか可愛い感じだった。
「そちらの不穏な空気をまとった幼女の方は誰かしら?」
何も言わずとも彼女には状況が飲み込めているようだった。
秋月玲奈は九州で生まれた秋月流柔術の免許皆伝であり、その才能においては祖父の秋月六郎をも凌ぐと言われている。
安藤光雄は今までの事情を簡潔に話した。
「なるほどね。うーん、先月は人狼に会ったし、今週は魔女とは、うちの近所はどうなってしまったんだろう……」
可愛い顔が苦悩に歪んでいるが、そこが、また、いいという話もある。
「それで、その『機械天使』とやらを倒せばいいのね?」
秋月玲奈は何かヤケになってる感じもしたが、安藤光雄はゆっくりと頷いた。
「これは推測だけど、たぶん、この辺りは異世界とのゲートが開いてしまってるんじゃないかと思う」
安堂光雄は六本木アンダーヒルの事件以来、考えていたことを口に出した。
風守カオルの人狼事件の話や、神沢少佐の異世界への誘拐事件の話を総合するとそういうことになるのではと思ったのだ。
「その辺りはカオルちゃんが専門なので、私には分からないわ。神沢少佐に聞いてみてね。気が進まないけど、『機械天使』とやらを退治しましょうか」
事も無げにそんなことをいう秋月玲奈だったが、神沢少佐と共に人狼事件を生き残った経験は彼女の武に少なからず影響を与えているようだった。
ただの生身の人間が怪物とどうやって戦うか?
そういう極限状態に追い込まれた人間が発揮する力の源は何なのか?
それは非常に興味深かったが、
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この「匿名捜査官タグ」なんですが、少女格闘伝説シリーズに属しています。
http://ncode.syosetu.com/s6664b/
このシリーズの作品全部を繋ぐものになりそうです。一応、うろ覚えの東京の地理を思い出しながら、ごまかしつつ書いてます。最近、東京行ってないのでよくわからないんだよね(泣)グーグルストリートビューでも見ながら書きますかね。
秋月玲奈については「少女格闘伝説」(第一部完結済)に書いてます。
http://ncode.syosetu.com/n4003bx/
美少女格闘技ものですが、実は容姿の描写がほとんどないし、格闘技好きな人はいいかもしれません。でも、実際には作者は格闘技やりませんので想像の世界ですが、北斗晶とか、長与千草のガイアジャパンという女子プロレスの試合とかよく見てました。
「人狼事件」も「人狼戦記~少女格闘伝説外伝~」に書くつもりですが、まだ、出だしだけです。
http://ncode.syosetu.com/n3963bx/