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匿名捜査官タグ  作者: 坂崎文明
クロスロード
3/9

モバイルギア

「神沢さん、【サークル7】ってどんな組織なんでしょうね?」

  

 安藤光雄は神沢優の顔をのぞき込みながら尋ねた。


 黒い瞳が優しく見返す。


「たぶん、犯罪組織の下部機関でめぼしい人材をスカウトする部門、もしくはサポーター、つまり下っ端を集めるものでしょうね」


 神沢優はこともなげに、しかも自信満々な様子で答えた。

 さすがにカリスマ公安オタクである。

 だが、予想が当たってるかどうかは定かではない。


「神沢少佐の予想はそういうことですか。とりあえずの僕らの戦略目標はどうしましょうか?」


 いつもの【犯罪捜査コミュ二ティ】のノリになってきた。


 【ムーンウォーカー】少佐こと、神沢優の指示でいつも僕らは犯罪捜査を開始する。 


 といっても、ネット上のアメリカ発の大手検索エンジン【サークルライト】を使う、あくまで机上の捜査である。

 実はそれが結構、当たってしまって、現実の事件をいくらか解決しまったりしていた。


 それゆえ、【ムーンウォーカー】少佐である神沢優のカリスマ性はネットで伝説となっていたのだ。


 ちょっとワクワクしてきたな。


 神沢優は流線形の未来型デザインのメガネのようなものを、腰のバックから取り出してテーブルの上に置いた。

  

「まずは、この【モバイルギア】をつけてくれるかな。我が神沢潜入捜査隊の基本装備だ。モバイルネット接続できて通信機能もある」


「これって【サークルライトグラス】ですか?」


「まあ、そんなものね」

 

 安藤光雄は大手検索エンジン【サークルライト】が、最近、発売したスマートグラスのようなメガネをかけてみた。


 【モバイルギア】という名前らしいが、モニターに何かの数字のようなものが写っていた。


 小さな画面のようなものもみえ、そこに緑色の光点がふたつ見えた。


「神沢少佐、この緑色の光点は現在位置ですか?」


「そうよ。敵が来たら、赤色の光点が現れるわ」


「なるほど、敵っていうのは?」


「敵は敵よ。状況が変わったら、また指示をだすわ。では状況を開始する!」


「了解です!」  


 安藤光雄は短く答えた。

 神沢優はテーブルを立って、紅色のサングラスをかけなおした。


 そのまま、タイムトンネルのような紅い照明の廊下を通って7番スクリーンに入る。


 そこはプライベートルームのように貸切になっていて、【サークル7】の説明映像が流れるということになっていた。


 ふたりは椅子に腰かけてしばらく待った。


 スクリーンが少し左右に拡大して映像が写りはじめた。


 それによると、【サークル7】はネットのコミュ二ティサイトを基本として、専用のモバイル端末【サークルライトグラス】によって通信を行うらしい。


 それじゃ、この【モバイルギア】と全く同じじゃないかと思った。


 その時、安藤光雄の【モバイルギア】のモニターに、赤い光点がひとつまた、ひとつと増えていった。


 そして、あっという間に赤い光点が無数に増殖していく。


「神沢少佐、これは――」


「周りは全部、敵よ」


 神沢優は安堂光雄に拳銃を手渡した。


「発砲許可は取ってあるわ。公安の訓練プログラムB-2-7で対応してね。私も公安なのよ。公安の安堂光雄さん」


 彼女は席を立った。

 周りの客たちも亡霊のように立ち上がる。

 手には拳銃、重火器、ブレードソードなどの武器を持っていた。


「……B-2-7、強襲要撃一点突破か。なんてこった!」


「状況開始! 幸運を祈るわ」


 神沢優は一瞬で通路へと舞い降りて全力で走りだした。

 安藤光雄もそれに続く。


 用心のために、あらかじめ入り口近くの席を取っておいたのだ。

 

 だが、赤い照明のある廊下に出ようとした瞬間、機銃掃射きじゅうそうしゃに見舞われた。


 壁がみるみるうちに穴だらけになっていく。


 射撃がやんだ一瞬に、思い切りよく神沢優が床を転がっていった。


 転がりながら、手榴弾しゅりゅうだんと照明弾、スモーク弾をばらまいて、反対側のスクリーンの入り口に身を隠す。


 爆裂音と共に機銃の打ち手は沈黙。


 爆煙の中をふたりは同時にダッシュを開始する。


 その頃には、後ろからふたたび機銃掃射が来ていた。


 間一発、壁に隠れてやり過すが、そこからもう一度ダッシュした。


 エレベーターホールに辿りつくが、中央のエレベーターが開いて、そこには重装備の数人の兵隊が現れた。手にはやはり自動小銃がみえる。


「……まずい」


 安堂光雄は自分の死を覚悟した。


「出でよ、黒鋼クロガネ! 式鬼召喚しききしょうかん!」


 神沢優は不思議な呪文のようなものを唱えた。


 安堂光雄の眼前に、黒い鎧をまとった鬼が現れた。


  

 

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