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匿名捜査官タグ  作者: 坂崎文明
クロスロード
2/9

邂逅(かいこう)

 安藤光雄は首都東京にそびえ立つ摩天楼まてんろうを見上げていた。


 六本木アンダーヒルズにある映画館である女性と待ち合わせをしていた。


 【ムーンウォーカー】というハンドルネームをもつ彼女は、攻殻機動隊の草薙素子のコスプレという非常に目立つ格好で現れるはずなのだが。



 知り合ったのは【クロスロード】という日本最大のソーシャルネットサービスで、日本の人口の約一割に当たる1200万人のユーザーがいる。


 知っているのは携帯メールだけで、彼女の素顔についてはまったくの謎につつまれていた。




 というか、素顔こそ知らないが彼女がどういう人間かは熟知してる。


 公安オタクで過去の犯罪事件に詳しく、【クロスロード】の犯罪コミュティではその博学な知識によってカリスマ的存在である。


 まるでタイムトンネルか宇宙船のような映画館の廊下を歩きながら、安藤光雄は彼女の存在を視線でさがしていた。


 平日の水曜日の夕方で、レディースディのためか、OLらしい客が多かったが人はまばらですぐに彼女は見つかるはずだった。





 ところが、いっこうに彼女は姿を現さなかった。


 まさかデートと勘違いして15分遅れてくるとか。


 それはありえないか――携帯で時間を見たら、19:15分だった。


 きっかり、約束から15分遅れている……まさか。



『待った?』


 という軽いのノリの女性の声が背後から聴こえた。


 振り返ると、草薙素子がいや、違う、攻殻機動隊の草薙素子のコスプレをした女性が立っていた。


 彼女に違いなかった。




「はじめまして、【ムーンウォーカー】こと神沢優です。あなたが【タグ】さんね?」


 ショートカットにした黒髪、軍隊の制服のような黒のコートを着た女が紅色のサングラスを取りながら尋ねてきた。


 なかなかの美形で意志の強そうな双眸が印象的だった。



『よく分かったね?【タグ】こと安藤光雄と言います』


 そう言いながら右手を差し出して握手を求めた。


 彼女もクールな表情にちょっと笑みを浮かべて、彼の手を握り返した。


 安藤光雄はチャコールグレイの背広にベージュのコートを羽織っていた。


 中肉中背で、あまり目立たない容姿だが、深い闇を秘めたような目をしていた。


『まだ、時間があるから、ちょっと、あそこでコーヒーでも飲まない?』


 そう言いながら、神沢優は映画館に隣接するカフェを指差した。


『いいですよ』


 安藤光雄はうなずいた。





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