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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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アルファベットルームへようこそ

相川聡史は鞍馬蓮実が食べ物屋に走るたび、凛道都子と共に追いかけていく。

凛道都子は息を切らしつつも楽しそうに走っていく。

そしてアトラクションを見るたびに、竜宮健斗と一緒に行動することを夢見る。


「お化け屋敷…こ、怖いけど健斗くんと一緒なら…」

「まぁ健斗は怖いの平気だしいいんじゃね?」


相川聡史は小さな助言しつつ、凛道都子の楽しそうな顔を見る。

そしてなんであいつばかりモテるんだと憤慨するのであった。

鞍馬蓮実は完全に色気より食い気であり、両腕で抱えきれないほどの食べ物を食べていた。

大量に口に物を入れながら班として別れてしまった幼馴染を心配する。


「海里、怒ってないといいんよ…」

「ハムスターみたいに頬張りながら言う言葉じゃないよな、それ」

「わぁ、なんか可愛い!」


凛道都子が的外れな感想を言い、相川聡史はツッコミを入れようか少し悩む。

そして完全にタイミングを外したので、言わないことにした。




仁寅律音が単独行動しようとして先に進み、葛西神楽と筋金太郎がその後ろについていく。

その様子を全く振り返らず、進んでいくが距離は離れない。

シラハがいい加減に何か調べたらどうだと声をかけ、そこでやっと立ち止まる。


「…何か歩いてて分かった?」

「え、えっと…子供ばっかだなぁ…でござる」

「そうなんだなぁ…あと思ったより植物あって嬉しいんだなぁ」

「…他にはない?」


少し呆れたように二人を振り返る仁寅律音。

求めていたのはそんな単純な答えではなく、もっと核心に迫った物。

大体それ程度なら仁寅律音も既に気付いており、今更聞かなくて分かることなのである。


「…アルファベットルームでござる」

「ああ。ルール表に載ってた…そういえば遊園地の中心にある塔みたいな場所がそうだよね」

「そうなんだなぁ。一番人気だとピエロさんも言ってんだなぁ」


仁寅律音達は中心にある、塔、というよりは細長いエレベーターのような建物を見る。

そこには多くの子供達が集まっており、どの部屋へ行くか話し合っている。

キャストであるロボット達も賑やかに子供達を誘導している。


「目立つ場所だけど…なんでDルームは駄目なのかぁな…と思うでござる」

「ふーん…じゃあ、他の皆も呼んで入ってみようか」

「それが良いんだなぁ!きっと楽しいんだなぁ」


仁寅律音はすぐにデバイスの通話アプリを起動させ、一斉通信でアルファベットルーム前に集まるよう指示する。

すると少し時間はかかったものの、瀬戸海里以外の全員が集まった。

鞍馬蓮実が首を傾げて、一緒に行動していた錦山善彦達にどうしたと聞く。

二人は言いづらそうな顔をしつつも、少しずつ話し始めた。

それらの言葉を簡潔にまとめると、二人の喧嘩に嫌気がさして怒ってどこかへ行ってしまったらしい。


「ああ…海里だって怒るんよ…しかも一回怒ったら中々機嫌治らないんよ」

「般若の顔ってああいうことを言うんやと知ったわ…」

「似非関西弁のせいだろ。俺は悪くねぇ」

「…君そうやって逃げてばかりだと、絶対後悔するよ」


不貞腐れている袋桐麻耶に、仁寅律音は鋭い一言を突き刺す。

袋桐麻耶は素直じゃない上に口も悪い。そのせいでうっかり取り返しつかないことになることが多い。

それをクラリス事件のさいに味わったはずなのに、まだ懲りてないらしい。

舌打ちをして袋桐麻耶はパーカーを深くかぶる。


「とりあえずこのアトラクション調べようか…エレベーターで地下や地上にある部屋に向かうみたい」


仁寅律音は反省しない袋桐麻耶から視線を外し、アルファベットルームへ向かう。

キャストに案内され、エレベーターに乗り込む。

ボタンは数字ではなくアルファベットが描かれている。

まずはAルームへのボタンを押し、エレベーターが動き終わるのを待つ。

下へ動くのを感じ、ボタンを確かめる。

AからZのボタンがある中、Dのボタンだけがない。


そこまで確認してAルームに着いたのか、呼び鈴のような音と共にエレベーターの扉が開く。

目の前に広がるのは青い部屋、壁と天井は強化ガラスで水が満たされている。

その中には鮮やかな魚達が自由気ままに泳いでいる。

水族館の鑑賞部屋のように、光で水を照らしてアクアリウムを作り上げている。


「A…AQUAルームってこと?」

「き、綺麗…ここで健斗くんと鑑賞したいなぁ…」

「見たことない魚なんよ。食べれるんよ?」

「食べるなっつーの」


部屋は広く、教室二つ分ほどの床にはソファが置かれてゆっくりできた。

涼やかな音楽が流れ、室温も過ごしやすい冷たさで心地よい。


「ほ、他のルームも見たいでござる!!!」

「オラも見たいんだなぁ!!」


テンションが上がった葛西神楽に続くように、エレベーターに乗り込んではボタンを押す。





Bルームは風船が敷き詰められたバルーンルーム。

壁や天井が柔らかい素材で出来ていて、弾んで遊ぶことが出来た。


Cルームは水晶が飾られたクリスタルルーム。

巨大な鉱石が光を浴びて輝き、洞窟のような神秘さを見せつける。


Eルームは電気で動く物を集めたエレキルーム。

ボタンを押せば電気が流れ、部屋の何処かにある仕掛けが動く。ギミック仕掛けの部屋。


Fルームは様々な花が飾られたフラワールーム。

地上にはない花も飾られており、華やかな匂いで埋め尽くされている。


Gルームはフラワールームと類似した植物園のグリーンルーム。

これまた地上にない植物などが飾られており、色鮮やかな鳥も生息している。


Hルームは部屋にいる虫を好きに捕まえて良いハントルーム。

カブトムシなどがあり得ない大きさなどで木の蜜を舐めている。


Iルームはキャスト達がメイクや衣装を貸してくれるアイドルルーム。

豪華なドレスからお笑い芸人、海賊などのコスプレのような服を着て写真を撮ることが出来た。


Jルームは日本の文化を集めたジャパンルーム。

和服や和菓子に茶室といった日本の侘びさびが集められている。


Kルーム様々な重さの物体があるキログラムルーム。

力自慢の子供達が競い合って幾つも持ち上げている。


Lルームは数々の受話器だらけのリンクルーム。

必ず同じ部屋の受話器へランダムに繋がり、初めて会う子供と会話できる。


Mルームはオーケストラのような楽器達が調和するミュージックルーム

クラシックからジャズ、世界中の音楽が流れていく。


Nルームは好きなことが好きなだけ書けるノートルーム。

中には言葉じゃ伝えられない気持ちが、子供らしい字で書かれている。


Oルームは清浄な酸素製造機があるオキシジンルーム。

地底遊園地の空気はこの製造機によって作られており、園内全体を循環していると説明される。


Pルームはサツマイモからジャガイモまで集めたポテトルーム。

蒸かしたての食欲を誘う匂いが立ち込めていて、好きな物を食べれる。


Qルームは世界中の謎解きを集めたクイズルーム。

頭を抱えては誰かと相談して、正解すれば豪華賞品がもらえる。


Rルームは軽快な音が響くリズムルーム。

キャストがタップダンスや手拍子で、体だけで音楽を作っていく。


Sルームはお菓子を集めたスウィートルーム。

飴玉からチョコレートなど代表的なお菓子が溢れていた。


Tルームはあらゆる茶葉を集めたティールーム。

好きな茶葉を選べばキャストが最高の状態でお茶を提供する。


Uルームは最下層の部屋でその下の地底火山を眺められるアンダ―ルーム。

煮え立つマグマがガラスの向こう側で流れていくのが見える。ガラスの上での度胸試しが行われている。


Vルームは園内にあるゲームコーナーで記録を残した子供の写真が飾られたヴィクトリールーム。

写真に写っている子供達は皆自信満々の笑顔で喜んでいる。


Wルームは誰とでも楽しく踊れるワルツルーム。

優雅な音楽と一緒に友達同士でフォークダンスをするように拙く踊る子供達。


Xルームは期間限定の特別ルーム、クリスマスルーム。

今は時期ではないので改装中と表示され、部屋に入ることは出来ない。


Yルームは思い出せない記憶を思い出すことが出来るイエスタデイルーム。

コールドスリープするカプセル機械のような装置に入り、脳波を測定すれば過去の映像を録画できる。


Zルームは愛らしい小動物を集めたズールーム。

ロボットではあったが本物と寸分たがわぬ動きをする動物たちが、愛想よく近寄ってくる。




葛西神楽達が全ての部屋を楽しむ中、仁寅律音は考えていた。

Dルームは一体どこにあり、どんな内容の部屋なのか。

ルールで禁ずるならそれなりの理由があるはず。

そして子供達がうっかり迷い込みそうな場所にあるということだ。

しかし探すそぶりを見せることは出来ない。

何故ならルールはこう書いてある。


3 アルファベットルームのDルームは探さないこと


それはつまり探すのも禁じるという警告だ。

仁寅律音は音楽溢れるMルームで渋い顔をする。

ちなみに葛西神楽達とは別行動である。

一人で考えたいから邪魔しないで、と言ってMルームから動かないこと前提で離れたのだ。


「D…禁ずる意味がある…頭文字…」

<…声に出てるぞ。聞かれたらやばいのではないか?>


シラハが悩んでいつの間にか声に出していた仁寅律音を注意する。

もう被害者は出ている、このルールによるお仕置きが脅しではないことを理解している。

そのためシラハ悩み続ける仁寅律音に変わり、部屋中を見回している。

楽器自体がロボットとなって演奏している。入ってくる子供達に素晴らしい音楽を聞かせる。

時には子供達のリクエストに答えた曲を流す。人工知能がなければできない芸当だ。


「…地底人って、キッキ…だっけ?それ以外にいないのかな?」

<そういえば見ていないが…裏方スタッフとかではないのか?>

「もしもだけど…本当にキッキだけだとしたら?」

<どういうことだ?>


「地底人がキッキ以外全滅していたら…その墓はどこに?」


仁寅律音は仮説の話を出す。

地底人はキッキしか確認はとれていないが、ほぼ人間と同じ容姿をしている。

そしてMルームで子供達がリクエストする曲には、地上で放映されているアニメ曲などもある。

ロボット達はそのリクエストに快く応じ、演奏していく。

地上の文化などに精通していないとできない芸当である。

商品や遊園地の内容、様々な物に地上の文化が取り入れられている。

それはつまり地底人が地上の文化を取り入れ、生活様式も似せているということだ。


「もし地上の文化に精通しているなら…埋葬は?火葬…いやそれじゃあ煙が発生してしまう」

<その前に酸素の問題もあるだろう。まぁ、酸素製造機…Oルームがあるから平気なのかもしれないが…>

「…土葬。もしくはマグマがあるから…そこに落とせばいいのか?」


Uルームの地底火山を思い出し、少し悩む。

それなら死体は跡形もなく処理できる。

部屋など作る必要がない。もしかしたら埋葬だけ文化が違うのか。

仁寅律音がそこまで考えて、自分の父の墓を思い出す。

幼い頃に他界してしまった、自分によく似ていたと言われている父親の墓を。


「…仏壇、墓石…そう、生きている人は死んだ人の証を残したいはず」


地底人でオーナーのキッキの話は人伝に聞いている。

人間によく似た、人間の言語を話す、人間のような感情豊かな地底人。

仁寅律音は考えに考えて、ある一つの自分なりに出した答えを呟く。


「Dは…Dead…部屋の正体は死んだ地底人に関することか…」






キッキが地底遊園地を広げるために穴掘りをしている時、一体のロボットが近づいてくる。

花の妖精のような姿をしたキャスト、キッキはフローゼと呼んでいる。

女性のような体構造をしているせいか、機械音声や口調も女性に近い物である。


<オーナー。アルファベットルームで要注意人物達に動きが…>

「…アルファベットルームね…彼らがもしDルームを探していたとしたら…お仕置き開始だね」


キッキは笑顔で振り向きながら、玉のような汗を拭きとって指示する。

フローゼは了承して、すぐに園内通信で全ロボットキャスト達に指示を広げる。

ドリルを動かしながら出てくる鉱石をトロッコに入れ、キッキは言う。


「ちぇっ、ダイヤモンドか…園内の飾りにしか使えないクズ鉱石じゃん」


まるでガラクタを見つけたような子供の声で、ダイヤモンドの原石をトロッコに放り投げる。

ぞんざいな扱いは価値が分かる人物からすれば冷や汗を流す程乱暴である。

しかしキッキは価値を知らないのではなく、地底独特の価値観で扱っているのである。

地底人にとって宝石とは生活用品にならない駄目鉱石という価値観なのだ。








仁寅律音はアルファベットルームで遊んでいたメンバーを集め、Uルームへと向かう。

葛西神楽はワルツルームで楽しく遊んでいたのか晴々とした顔でいる。


「いやー、やっぱダンスはいいな…でござる」

「か、神楽くんのお家ダンス教室だもんね」


凛道都子の説明に、相川聡史と鞍馬蓮実が目を丸くする。

特に相川聡史が胡乱気な目で怪しんでいると、葛西神楽がエレベーター内で軽やかなステップを見せる。

タップダンスの動きにワルツの動き、フォークダンスやバレエの簡単な動きまで見せる。


「どうでござるかぁっ!!」

「お、おお…」

「人は見かけによらないんよ…」


素人目でも理解できる足取りに、相川聡史と鞍馬蓮実はただ感心する。

そういえば袋桐麻耶も神社が実家だったな、と西エリアメンバーの意外な家庭事情を思い出す。

そして次に二人の視線が集まるのは凛道都子である。


「わ、わた、私の家はその、あの…クリーンな会社経営している…よ?」

「滅茶苦茶きょどっているのに疑問形!?」

「き、気になるんよ!!」


眼鏡の下にある目を泳がせまくり、冷や汗を流しながらあらぬ方向に顔を向ける。

錦山善彦と睨み合いしていた袋桐麻耶が同情するような目で凛道都子を見ている。

袋桐麻耶の珍しい視線に錦山善彦も凛道都子の方を見る。

すると筋金太郎があっさりと言う。


「確か関東極道連合所属凛道組の一人娘のはずなんだなぁ」

「いやぁああああああああああ!!!太郎くん!?」

「毎度お世話になっているんだなぁ。白い菊や献花用の花束…」


仁寅律音を含め、全く知らなかった東エリアの二人と錦山善彦は口が塞がらなくなる。

その気配を察した凛道都子は慌てて言い訳をし始める。


「で、でも土地経営とか不動産関係とかそういうのをやってる…」

「ショバ代?」

「ち、ち、ちがぅうううう、ま、祭りの屋台とかもやってるし昔からの地主みたいな…」

「的屋?」

「うううう…や、ヤクとかチャカはないクリーンで地域の皆様に信頼のある…極道一家です、はいぃいいい…」


目の前にいる気弱そうで恋に恥じらう乙女、凛道都子。

その正体が極道一家の一人娘とあって、エレベータ内に緊張が走る。

しかし凛道都子本人はもう涙目で、お嫁に行けないよー、と泣き言を呟いている。

流石に可哀想になった相川聡史がフォローを入れる。


「ま、まぁ婿養子を取ればいいんじゃね?」

「それが…」

「確か親との約束で15までに伴侶見つけないと、組が決めた相手と結婚するんだろ?…ござる」


葛西神楽の追い打ち情報に相川聡史は言葉を続けることが出来なかった。

しかし凛道都子は葛西神楽の言葉と同時に、強い意志を目に宿す。


「ええ…だからぜひとも健斗くんと!!私絶対絶対…お嬢とか姐さんとか呼ばれない生活を進むんです!!」


ということは今は呼ばれているのか、というツッコミを押しとどめる錦山善彦。

そんな会話で時間を潰していたら、一番最下層のアルファベットルームに着く。

最下層の部屋は地底火山が眺められるUルーム。

床はガラスで、度胸試しのような部屋である。

仁寅律音はその床下にある流れるマグマを眺め、そして葛西神楽の方を見る。




それもとびきり美しく、見た相手が赤面するほど華やかな笑顔で。





もちろん葛西神楽は赤面し、すぐにこれで男かぁ、と少し落ち込む。


「神楽くん。僕のお願い…聞いてもらえるね?」

「うっ、うっす!?」

「じゃあ…今すぐジャンプ。床が割れるくらいジャンプ」


下は地底火山。流れるマグマは全てを溶かしそうな程の高温。

今立っているガラスの床は、恐らく強化ガラスではあるがどれくらいで割れるかは想像できない。

葛西神楽は少しずつ顔を青ざめていき、視線を彷徨わせてしどろもどろになる。


「えっと、その、俺としては…それは危険があるのではないかと、とと…」

「僕…神楽くんのカッコいい所見てみたいなー…ね?」


仁寅律音の顔は美少女のような顔立ちに笑顔付きである。

しかし目が笑っていない。冗談ではない、本気の目をしている。

それでも葛西神楽が渋っていると、さらに花咲くよう笑顔で言う。




「神楽くん、副ボスとして頼りにしてるよ!!!」

「イエッサー、ボス!!!!」




テンションに任せた元気のいい返事をした後に、葛西神楽はしまったという顔をする。

ビャクヤと袋桐麻耶が同時に溜息をつく。


「あの馬鹿…単細胞が…」

<それじゃあ侍口調じゃなくて軍人口調だろうが…でござる>


しかし誰も止めには入らず、ただ見守ることにした。



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