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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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入場でござる

電車に揺られながら、仁寅律音は重い溜息をつく。



きっかけは西エリア事務所にきていた御堂霧乃からのメール。

それは地底遊園地についての連絡。すでに何人か被害にあっているという話。

それだけなら仁寅律音は無視できた。しかし御堂霧乃はさらなる罠を仕掛けていた。


『友達と楽しく遊べる場所だよなー、遊園地』


これに反応したのが葛西神楽。描き直したお守りを握る。


『デートスポット探して大胆に好きな子へ迫っちゃう肉食系女子ブームきてるかも?』


次に反応したのが凛道都子。顔を赤らめつつ、デートと夢を見る。


『でも隙多くなるから、危険も多いんだよねー』


仁寅律音から葛西神楽のお守りを処分するよう頼まれている袋桐麻耶が反応する。


『地底だから太陽がなくても育つ不思議植物とかあるんじゃないかな?』


花屋の息子である筋金太郎が不思議植物に反応する。





『で、頼もうかなーと思ったけど…四人じゃ危ないから北に頼むわー、バイビー★』




とどめである。

期待に期待をと膨らませておいて、この仕打ち。

逆上した袋桐麻耶が五人揃えて行くから、北に頼むんじゃねぇと勢いで返信。

すぐに御堂霧乃からメールで、行くメンバーの名前を送れと返ってくる。

売り言葉に買い言葉、袋桐麻耶は西エリアの四人の名前と、ボス候補である仁寅律音の名前を送った。

もちろん仁寅律音自体になんの断りもなく。

仁寅律音はそれを聞いて、すぐに御堂霧乃に訂正メールを送ってと言った。

しかし袋桐麻耶は半ば脅迫するような上目づかいで言う。


「お守り…処分するのにお前も手伝えや、ごらぁ」

「それは君が…」

「お前の母親に息子さんキラキラネームですねと言ってやろうか?」


母親である仁寅董子を出され、仁寅律音は黙るしかなかった。

つい最近知ったことではあるが、名前に音楽に関する意味をつけた名前である。

しかし僅かながらその名前は世間一般でいう、流行に乗った恥ずかしい名前、キラキラネームに近い。

精神が安定してきたとはいえ、まだ仁寅董子は病院通いの身である。

もし動揺するようなことを言われたらどうなるか、仁寅律音は想像する。


『そんなっ!?律音がキラキラネームなんて、どうしましょぅううううう、奏さぁぁああああああん』


少し誇大被害妄想が入るが、おおむねそのような言葉が出てくるだろう。

仁寅律音は苦汁を舐めるような顔をしつつ、袋桐麻耶に言う。


「絶対に!!あのお守り処分してよね」

「よし!じゃあ遊園地に行くぞ!!」


ちなみにほぼ全てが御堂霧乃の計算であると仁寅律音は感じた。

人間観察が上手であるため、このように相手をどう動かすか心得ているのだ。

恐らく社長である父親の御堂正義の下で教育を受けていたというのもあるのだろう。

クラリス事件の時には、多くの者が御堂霧乃の手の平の上で踊らされた。

仁寅律音は敵でも味方でも厄介な相手だと、御堂霧乃を評した。




そして最初の溜息に戻る。

仁寅律音自体を動かすには周りを動かした方が得策と判断されたのだろう。

なにせ仁寅律音は御堂霧乃に対して相手取れる実力がある。

下手に手を出せば痛い目に合うと分かって、周りに働きかけたのだろう。


「してやられた…」

「た、楽しみでござ…る…」

<ビャクヤ…自分のキャラづくりに神楽を巻き込むなよ>

<駄目でござるか?>


仁寅律音の膝の上に座っている白馬のシラハが呆れる。

昔からキャラ付けに悩んでいる、元部下である今は白虎のアンドールのビャクヤ。

最近までは四字熟語だったが、次は侍を目指しているらしい。

周りから見れば滑稽極まりない上、巻き込まれている葛西神楽が可哀想に思えてくる。


「で、デートスポット…健斗くんと…ど、どうしよう!?健斗くん絶叫系好きかな?」

<嫌いだったら嫌いで介抱イベントが出来るわよ!無駄かもしれないけど!!>

「だよなー。無駄だよなー。どうせ健斗なら優香が介抱するだろうよー…はぁ」

<おお、神よ。この試練の前に我等は一体どうすれば…>

「新しい花見つかれば新入荷できたらいいんだなぁ」

<商売熱心なのは感心する故>


いつもより賑やかな電車は地底へ向かう。

真っ暗な地下道を走り抜けて、光り輝く遊園地に。





錦山善彦達は西エリアの面々を見て、気付かなかった振りしてこの後どうするか話し出す。

仁寅律音はヴァイオリンケース片手に単独行動しようとして、葛西神楽に止められる。

袋桐麻耶は知らない振りされたことに激怒し、凛道都子と筋金太郎は遊園地を見回す。


「無視してんじぇねぇぞ、生意気似非関西弁キツネ顔熊野郎!!」

「ひとまとめにすんなやぁっ!!あと似非いうなや!!」

「まぁまぁ善彦くん落ち着いて…」


背の低い袋桐麻耶と錦山善彦は対峙すると、お互いを見上げ見下しの位置になる。

まるでヤンキーのメンチ切りのような体勢に瀬戸海里は苦笑いを零す。

ガキだなっ、と相川聡史が言えば睨み合って二人がお前が言うかとツッコミを入れる。

すると睨み合いに相川聡史も参戦することになり、周りからあそこの集団は何やっているんだと注目を浴びることになる。


「あ、あの、なんかデートに使えそうなアトラクションとか…」

「んー、それならさっき乗ったメリーゴーランドに可愛い乗り物あったんよ」


凛道都子が浮足立ちながら聞けば、鞍馬蓮実がパンフレットを片手に説明する。

聞けば花のアーチを象った馬車があると聞いて、筋金太郎も話題に参加する。

そんな様子を横目で見て、仁寅律音はさらに周囲を見渡す。

葛西神楽は何があるのかと注視しているが、小さな溜息と共に呟かれる。


「健斗は来てないのか…残念」

「り、律音、さん…そんなにあのヤローがいいのでご、ござるかぁあ…」

「その口調止めたら?聞いてるこっちが戸惑うし」


涙目で見上げてくる葛西神楽をうっとおしそうに見る仁寅律音。

どうしても前の関係のまま接してしまうことが多く、ぎこちないままだった。

その様子をシラハとビャクヤが内心穏やかじゃないまま見守る。


<なんで律音は神楽に厳しいでござるか?>

<うーん、おそらくあのおどおどした姿が気に入らないんじゃないか?というか口調>


既に侍口調で進めていくことを決めたビャクヤに対し、シラハは無駄だと思いつつ律儀にツッコミを入れる。

シラハから見れば葛西神楽の気を使ったような態度が、仁寅律音にとって気に入らないのだろう。


仁寅律音は見かけによらず堂々とした少年である。素早く自分の決断を下す。

母親のために父親も演じてきたこと、死ねばいいと言われて本当に死のうとしたこと。

精神が不安定な状態でも根本的な性質は変わらず、正しいと信じてすぐ行動に移す。

たまに突拍子もないが、その判断は迅速で時に冷血だが、迷う暇など見せなかった。

唯一父親を演じていき、精神が不安定な状態の時のみ軽い迷いを見せたが目的を曲げることはなかった。

そのせいか迷いや不安に対して敏感に反応し、苛つくことも多い。


葛西神楽はいまだにビャクヤに振り回され、キャラ性の迷いなどが多い少年である。

基本明るくはつらつとしているが、どうしても仁寅律音を前にすると動揺したり不安そうにする。

それが鼻につき嫌なのだろう、とシラハは推測している。


<逆に健斗は迷いなく接してくるから好意的なんだろう>

<…なるほど…でござる>


単純というよりは馬鹿という言葉がよく似合う竜宮健斗。

馬鹿ゆえに無意識的に間違わないように行動する少年。

自覚はしていないだろうが仁寅律音に対して迷いなく接する。

仁寅律音との正しい接し方をするため、仁寅律音も無下にしない。

なにより竜宮健斗の功績もあって、母親との関係を修復できた一面もある。

シラハは葛西神楽を少し不憫に思いつつも、自分で気付かなければ駄目だろうと結論を出した。


<…都子はいいのか…でござる?>

<女性だからな。あいつもああ見えて男だ>


外見上としては美少女と間違われることが多い仁寅律音。

その実はとても男らしいことを知っているシラハは、人知れず溜息をついた。

もちろんアンドールというロボットの体であるため、息は出ずに機械音声だけの溜息である。



瀬戸海里は苦笑いのまま二人に挟まれていた。

右には袋桐麻耶、左には錦山善彦。

何故か二人は仲悪く、なのに歩く速度がほぼ同じなためどうしても一緒に行動してしまう。

さらには離れようと急な方向転換をすると、なぜか同じ方向へ向いてしまう。

これでは埒があかないということで、間に入れて平気そうな瀬戸海里を挟んで行動することになった。

ちなみに今は三組で別行動しており、相川聡史と鞍馬蓮実、凛道都子がもう一つ。

最後の組は仁寅律音と葛西神楽と筋金太郎である。

少しでも多くの情報を集めるための組み分けなのだが、これで本当に良かったのかと瀬戸海里は悩んでいた。


「似非関西弁、影薄い、空気読んでるとかキャラ性としてありかよ?常識じゃね?」

「そっちこそその罵倒ボキャブラリー実は少ないんとちゃう?そんで急にデレてツンデレでも気取るつもりちゃう?」

「あのー、僕を挟んで喧嘩しないでぇ…」


お互いを見ていないのにひたすら口を動かして喧嘩する二人。

瀬戸海里はどうすれば仲良くなるかを考えるのを諦め、とりあえず口だけで抵抗する。

しかし二人は棘を吐き出すように喧嘩を続ける。


「…蓮実の班が良かったなぁ」


穏やかで愛称森のくまさんの異名を持つ幼馴染の顔を思い浮かべ、瀬戸海里は呟く。

すると袋桐麻耶がきつく瀬戸海里を睨み上げる。


「俺じゃあ…不満ってか?」

「口汚い喧嘩に巻き込まれたら誰だって思うよ」

「ほんま、あんさんが口閉じればいい話と思うんやけど」

「あんだとぉっ!?」

「やるかいっ!?」


少しずつ瀬戸海里の笑顔が氷のように冷たくなっていくことを、二人は気付いていなかった。


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