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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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ドッキリハウス再び

ミラーハウスに観覧車、ジェットコースターにアスレチック広場。

遊園地にあるようなアトラクションだけでなく、売店も様々な種類が並ぶ。

地下世界という狭さを感じさせない、広大な子供の国のように見える。

遊ぶ子供達の多くは不安を感じさせない、楽しそうに笑う顔が多い。

ルールさえ守れば何も怖いことは起きない。ただ楽しく無料で遊べる場所なのだ。

口うるさい大人もいない、勉強もない、地下だから雨も降らずにいつでも外で遊べる。

陽気なロボット達に囲まれて、なに不自由なく遊べるワンダーグラウンド。


相川聡史達はそれを満喫していた。それこそ遊園地特有の動物耳を買う程に。


「キッド、どうだ猫耳?」

<違和感なさすぎるな…>

「って、本気で情報集める気あるんかぁあああああ!?」


錦山善彦は数十分ごとに真面目にやって欲しいというものの、ほぼスルーされている。

一応瀬戸海里がフォローとしてアトラクションになにか違和感ないか探している、と言う。

鞍馬蓮実は売店を見るたびに何かを頼んでは調査とのたまうので、錦山善彦は内心が疑心暗鬼に溢れていた。


「まじ勘弁してほしいわー…ドッキリハウスではボスと同じ顔あるし…なんやねん、もう」


与えられた情報以外、実際は何が起きているか分からない錦山善彦の理性は爆発寸前だった。

そのため言うまでもない、気のせいだと思っていた情報を口から洩らす。

瀬戸海里は初めて聞いた情報を逃さず、そのドッキリハウスに連れて行ってほしいと言う。





結果、相川聡史が叫びまくってうるさい状況になった。

しかし人面壁のコーナーに行くと、叫び声すら出なくなってしまう。

鞍馬蓮実も途中までは笑っていたが、人面壁の所では顔を青ざめる。

瀬戸海里だけが冷静に人面壁のコーナーの顔を見て、籠鳥那岐の顔によく似ている壁を触って確かめる。


「うぉう…海里、度胸あるんよ」

「料亭で使う生の食材に比べれば平気かな…うーん、質感は壁だけど精巧すぎないかな?」


まるで職人が作品を見るような目つきで顔に触りまくる瀬戸海里。

真面目にやろうと言った手前だが、錦山善彦も腰が引けていた。

一通り触ってから、瀬戸海里は少し考えてからルール表を見る。


「…ずっと気になってたんだけど、ルールにあるお仕置きって具体的に表記されてないんだよね」

「そ、そうやけど…あの、すごぉおおおく怖い妄想ちゅーか想像が…」


人面壁の部屋は床以外の壁や天井に隙間がないんじゃないかと言う程顔が凹凸している。

瀬戸海里は一回頷いて、自分なりの考えを言う。




「この部屋、お仕置きされた人達の顔が象られたんじゃない?」



その時点で相川聡史は出口に向かって走り出していた。

もちろん鞍馬蓮実と錦山善彦も同様である。

ただ一人残された瀬戸海里は、別に埋まっているとは言ってないんだけど、と見当外れなことを呟く。

そして出口に向かって走り出した三人を追いかける。


出終わった錦山善彦は、怖いこというなやぁあああああああ、と歩いて出てきた瀬戸海里に向かって怒鳴る。

鞍馬蓮実と相川聡史はひたすら辺りを見回している。


「い、今の怪談や幽霊な話じゃないから…本物は出てないよな!?」

「大丈夫そうなんよ…いや、それにしても海里には迂闊に怖い話させたくないんよ」


前に本物の心霊写真が撮れたことにより、鞍馬蓮実と相川聡史は瀬戸海里の怖い話が極端に駄目になっていた。

相川聡史は元から怖い物が苦手だが、鞍馬蓮実は本物だけが駄目である。

瀬戸海里自身は意図していないが、確かに怖い話をすると何かしらの現象が起きている。

しかし今回は何も起きないまま、遊園地の賑やかさだけが周囲を取り巻いていた。


「ふぅ…ん?ということは!?」

「そうなんよ!!幽霊はいない証なんよ!!あの人面壁は生きている人の顔ということなんよ!!」

「な、なんやねん、急に!?」

「ああ、実は…」


瀬戸海里の怖い話をすると本物が出るという話を知らなかった錦山善彦。

説明をされた後はあんさん霊能者かなにかいな、と若干驚きつつひいていた。

その反応に不服な瀬戸海里は、昔聞いた血天井の話をし始める。

相川聡史と鞍馬蓮実は慌ててその話を止めに入る。

遊園地で本物の幽霊というトラウマになりそうな事態を全力で回避したいが故の行動だった。


ちなみに血天井の話を少しだけ話した時、近くのロボットが動作不良を起こしていたことを四人は知らない。





キッキは裏のスタッフルーム、修理室で動作不良のロボットを直していた。

原因は不明、どこにも異常がないのにジュースを汲むはずの動作がジュースを零していた。

監視カメラの映像を確認すれば、近くにはルールを破った籠鳥那岐と一緒に来ていた錦山善彦。

今は新たに三人を加えて、一緒に行動している。


「…暴行を加えた様子はない…むしろ話をしているだけだし…一応警備は強化しようかな」


キッキは監視映像を元に戻して、改めて原因を探求していく。

その最中、新しい電車が遊園地にやってくる。また多くの子供が入場口をくぐる。

ルールを守る子供は一時的に地上に帰される。手首にリミット表示された腕時計をして。


また一日が経過するが、天井と壁は青空のまま時間経過を感じさせない。


キッキはこの青空以外の空をスクリーンに映す気はなかった。

夕焼けも夜空も、見ようと思えば見れるからだ。

しかし青空だけは見れない。青空だけ地底人は見れない。

不自然なほど白い肌がそれを許さない。


誰もが空を見上げれば、太陽が輝いているのが見れる。

それを希望として、奉った宗教も存在する。

かつてはクラリスも闇を照らす希望として、民衆を鼓舞させる存在とした。


地底人の文明にも、宗教は存在した。

しかしその多くは、太陽は業火を扱う悪魔の主とした。

闇は身を守る天使であり、地底人は広がる青空を悪魔が作り出した幻影と決めつけてきた。

キッキも幼い頃はそう思い、外出ることを恐れた。


夕焼け空の中、光り輝く遊園地を見るまでは。


自分よりも大きな手に連れられて、闇が薄まる光の中で楽しんだ。

ずっと恐れていた光は色とりどりに自分を囲んでいた。


キッキ、この遊園地が地底にもあるといいと思わない?


幼い自分に素敵な光を見せてくれた存在。

それが問いかけてきた言葉にキッキは全力で頷いた。

遊園地は光溢れる、人が集まる場所、楽しい夢の国。

もし作れたらきっと、地底人がまた多くなるかもしれないと期待を込めて。

さらには地上の友達ができるかもしれないと、未知の喜びを感じて。





あの日連れて行ってくれた大きい手は、もうない。




それでもキッキは地底を掘り進め、遊園地を広げていく。

ロボット達を作って、運営をしていく。

たった一人で、暗い地底世界に光を少しでも多く作るため。


修理の手を止めて、ドリルを片手にスタッフルームのさらに奥にある部屋に行く。


至る所から生える水晶に光を当て乱反射させている部屋。

水晶の壁の隙間からは地下水が少しずつ流れて川のように部屋を巡る。

床は地面だが、水晶の光で生える花で埋め尽くされている。

花の色は地上に咲く花の色より淡く、白に薄く色を混ぜたようなものだった。

部屋の中央には硝子のような水晶で作られた棺桶。

一人の青年が胸の上で手を組んで眠っていた。

青年はキッキと同じ白い髪と不自然なほど白い肌をしている。

キッキは棺桶の蓋を少しだけ開き、組んでいる手の上に手を重ねる。


「兄さん、待っててね。僕と兄さんの夢…もっと大きくしてみせるから」


夕焼け空の中、遊園地へと導いてくれた手は今は冷たくも温かくもない。

生死の最中を彷徨っているような体温は、まだ死んでいない証拠。

キッキは改めて棺桶の蓋を閉じて、一礼してから部屋を立ち去る。

後に残るのは流水の涼やかな音と、耳を澄ませても聞こえ辛いほどの寝息だけだった。


遊園地は夢の国。

キッキとその兄が作り上げている夢でもあった。

しかしそれを知る者は、キッキとそのスタッフであるロボット以外いない。

人間と地底人だけに限定すれば、キッキ以外いなかった。


いまだキッキ以外の地底人は姿を現さない。


その理由を知る者も同じく、キッキ以外いない。

そして知るには、ルールを破る他にはなかった。


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