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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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団体様御招待

錦山善彦は新しく来た三人からの連絡に驚いた。


「はぁああああ?三月ちゃん達が昏倒って…どないなっとんねん!!」

「いやー、その腕時計を外される事件があって…新聞もそのことを地方面で載せてたよ」


瀬戸海里が持ってきた新聞の切れ端を見せる。

そこには子供六人が不良による傷害事件と小さく載っている。

錦山善彦は腕時計とルールの説明を聞いて、愕然とする。

尋ねなければ貰えないルール表。錦山善彦は戦慄する。

もし知らない内に破っていたら、お仕置きという謎の制裁が行われていたのだ。


「まじかいなぁ…そんなんあったら早く出せっちゅーねん…」

「俺もスタッフにそう聞いたら、聞かれませんでしたので、とか笑顔で言われた」

「オイラもなんよー。でも聞けば答えるらしいんよ?」


新しく綺麗な状態のルール表と、山盛りのポップコーンバスケットを手にした鞍馬蓮実。

相川聡史も片手にホットドックを持っている。更には黒猫のアンドールであるキッドも園内アイテムらしき物を身に着けている。

瀬戸海里も飲み物を片手に辺りを楽しそうに見回している。

錦山善彦はその様子を見て、虚ろな目で低い声を出す。


「…あんさんら、遊ぶ気満々やないけぇっ!!」

「そんなことないんよ!でもほら、腹が減ったら人探しは出来ないんよ!!」

「戦な、い・く・さ!」

「それに…僕達と霧乃ちゃんの考えだと…那岐くんすでにお仕置きされているという結論が」


三人がここに来る前に、布動俊介達のアンドールから聞いた話とルール表。

それらを全て鑑みて、協議し、長い付き合いの中で籠鳥那岐を一番理解している御堂霧乃は言った。



いや、なっちゃんこれどう見てもお仕置き済みだろうよ。



真面目で少し堅物で、目つきが鋭く正義感が強い少年、籠鳥那岐。

御堂霧乃曰く、融通とかできないから真向から打破しようとして失敗してるのではないかと。

つまりは目の前にいる黒幕に馬鹿正直にぶつかり、馬鹿正直に返り討ちに合っているだろうとのこと。

一番長い付き合いの御堂霧乃が断言し、相川聡史達もその意見に頷いた。

冷静キャラのようで実は熱情一直線であることを少しの間で理解した。

そして一度思い込んだらそれを中々直さないことも知っている。

ずっとクラリスを許せなかったように、ずっと扇動涼香を好きだったように。

一途で一直線で一通りの考えでしか進めない一人の少年。

籠鳥那岐はそんな少年だった。


「だからこそ、僕達がするべきは彼を救うことじゃない」

「なんやて?」

「きっとこの遊園地は俺達が思っている地の底なんかじゃない」

「もっと深くて暗く危ない所に、本当の地底が、真実があると思うんよ」


「僕達がすることは…次の人に渡すための情報、データを集めること」


データに振り回されてきた、人というデータに。

だからこそ瀬戸海里達は知っている、情報というデータがどれだけの悲劇を防ぐことが出来るか。

出来たかもしれないという事実が目の前にあったことを知っている。

過去も未来も現在も、その情報という存在自体の価値は変わらない。


「さぁ情報を集めよう。僕達にはまだ仲間がいる」


七人いなくなった。今遊園地にいるのは四人。

しかし御堂霧乃を入れたエリアチームメンバーは残り十三人。

更に団員を入れれば五十人は超す、アニマルデータも数に入れたなら百を超す。

アニマルデータ一つ、子供一人、それぞれの個の力は大人一人に敵わない。

しかしそれが集まり、連携していけば大きな組織力になる。

足が遅い者がいたら、代わりの足が速い者を走らせればいい。

頭悪い者がいても代わりに天才を使えばいい。

彼等は脆弱な子供ながら、自分に何が出来るかを知っている。

そして誰がどのような利点を持っているかも知っている。

だからこそ無茶をせず、自分に出来ることをしようという。


「…せやな。俺の性格は空気読むやし…それ以外何も良いところあらへんもんなぁ」

「そういうこと。でさ、このお化け屋敷に行きたいんだけど」

「あ、聡史が全力で逃げてるんよ!!待つんよぉおおおおおお!!」

「なぁ!?良いこと言っといて全力で遊ぶ気満々な姿勢ってどないことやねん!!?」


真剣な話から一転、いきなり賑やかになっ遊び始める四人。

はぐれないように一目散に逃げ出した相川聡史を追いかけていく。

その様子を監視カメラや従業員の目に取り付けた事故防止用カメラ映像で確認する、オーナーのキッキ。

彼はロボットである従業員を修理しながら、カメラで危険がないか、怪しい行動をしている者がいないか確認する。

もちろん監視用のロボットもいるが、感情的な部分はキッキが一番正確に読み取れた。


「うーん…腕時計外した子と一緒に行動していた子だけど…問題ないかな?」


近くにいる子供一人分の大きさの拳ロボットが、修理用器具を渡してくる。

今修理しているのは、入場口で明るく対応してくれているピエロのロボット。

多くの子供を相手にするため、小まめな調整が必要なのだ。


<キッキオーナー?なんか気になることでも?>

「少しね。でもルール違反さえしなければ…僕は手を出さない。全ての秘密はルールの中にあるからね」


そう言って修理を続けるキッキは、不自然なほど白い肌をオイルで汚していく。

作業場の机の上には一枚の写真。そこには二人の少年が写っている。

夕方の、もう日も沈む遊園地の中。今より幼いキッキと、キッキによく似た少年。

その少年もキッキのように不自然なほど白い肌に赤い目、そして白い髪をしていた。

二人は楽しそうに笑っている、光り輝く遊園地の背景よりも明るい笑顔で。


「遊園地は光り輝く夢の場所…だから、ルールの中にある秘密は見せられない」



その秘密は地底の闇より深い、暗闇だから。



キッキは一人で修理を続けていく。

ロボットが手伝う中、たった一人の地底人として遊園地を運営していく。

薄暗い作業場で火花が散る、ロボット達はオーナーの指示に従い、遊園地を守る。

支配者で創造の神様で、自分を作って命を与えてくれたオーナーのために。


孤独な地底人の子供のため、ルール違反する地上の子供を見張る。





西エリアの事務所に御堂霧乃から連絡が入る。

伝えられた内容は地底遊園地の調査に行って欲しいこと。

強制ではなく自主的な行動を求めているが、今は少しでも力が欲しいこと。

しかしその連絡が見られるのはメールが届いた翌日になる。

何故なら西エリアは、いまだにボスの問題で荒れたままだった。


「うぐぅぉおおおお…このケーキ…歯が、歯がぁあああ」

「ふぅ、まさか母さんのケーキが役に立つとは…」

「律音?それどういうことかしら…」


ボスの件を頼みに来た葛西神楽達は、仁寅律音の家でお菓子を馳走になっていた。

出てきたのはホールケーキのシフォンケーキ。生クリームも添えられた一品。

ふわふわな触感がフォーク越しに伝わり、葛西神楽は勢いよくそのケーキに食らいついた。

食らいついた瞬間、ケーキの中からまだ焼けきれてない熱い生地が口の中に広がったのだ。

その熱さは舌や歯に直撃し、口内に多大なダメージをもたらした。


「酷いわ…律音、母さんのケーキを生物兵器みたいに使うなんて…」

「ご、ごめんなさい…って、このケーキ母さんの手作りじゃないか!!」


泣き崩れる仁寅董子に、仁寅律音は思わず謝ったがすぐにそういう問題じゃないと指摘する。

今まで精神を患って入院していたため、仁寅律音は母親の味を知らなかった。

もちろん小さい頃、父親が生きていた頃も手料理は食べていたが、思い返せばそれは全て父親の手作りだった。

その父親がいない、仁寅董子が仮退院している今、母親の手料理を初めて知った、その威力を。

率直に言うと、仁寅董子は破滅的に料理が下手だった。それこそドジっ子で済むようなレベルではないほど。


「…くっ、この…親馬鹿に馬鹿親どもがぁあああああ…」

「麻耶くん、言っとくけどお守りの件忘れてないから悪態つくならそれを先に済ませてね」

「うぅううう…見た目に騙されたぁ…」

「はい、都子さんにはジュース。これはお婆様手作りだから害はないよ」

「おかしいんだなぁ…どこからこの熱い生地が出るのか分からないんだなぁ」

「母さんの料理はね、諦めるしかないんだよ…タネも仕掛けもないのに摩訶不思議だから」

「律音、タネはあるわよ!?よく言うじゃない、生地をタネって…」

「そのタネじゃない!…父さん、貴方も苦労していたんですね…ヴァイオリンケースはすいません」


少し遠い目をして仁寅律音は独り言を呟く。

しかしその表情は明るく、色んな感情を自然に浮きだたせては普通の少年のように振舞う。

前は不安定だった精神も安定したせいか、最近では仁寅董子とも親子のような会話が出来るようになった。

白馬のアンドールであるシラハは賑やかなその光景を見ながら、仁寅律音の確かな変化を嬉しく思っていた。

その反面、いい加減押しに負けて西のボスになればいいのになぁ、とも思っている。


<なぁ、シラハ。四字熟語キャラじゃ駄目なら侍キャラはどうでござろうか?>

<ああ、神よ…この哀れな無個性が故に自分に似合わない個性を身につけようとするものに慈悲を…>

<侍ってかっこいいよね!ビャクヤに全く合ってないけどね!!>

<個性とは滲み出る物故…無茶をしない方がいい故…>


でないと、この個性溢れる元部下たちの面倒を見る建前が出来ないのだ。

今のままだとのんびりしたい時でも、このように面倒を見るのは些か辛かった。

特にビャクヤに関しては、もうキャラづけ諦めろよ、と堂々とした態度で言いたい気持ちが一杯だった。


「僕はボスにならないので、今日は皆帰って!!」

<お前らいい加減俺がお人好しのまま面倒見るとか思ってんじゃねぇ!!>


アニマルデータは波長が合う者の元にインストールされる。

前は似ていない二人だったが、今は非常に似てきていることに気付いていなかった。


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