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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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地底遊園地ワンダーグラウンド

事件から少し時間が経った。

と言っても一年は経っておらず、季節が少し変わってきたかと感じるくらいである。

キッキの遊園地は青頭千里の会社BlueBloodと御堂正義の会社CrowCrownの極秘開発施設として処理された。

名目は近代的かつ近未来を想定した地下遊園地として、NYRONの観光名所建造であること。

もちろんいくつか議論の声や否定的な意見が飛び交ったが、そこは青頭千里達がもみ消したの言うまでもないだろう

政府にも許可を貰い、駅からさらに新しい駅への通路建造や遊園地施設の再建などを怒涛の勢いで進めた。

キッキに関しては若作りということで青頭千里が戸籍をマスターに頼んで作ってもらった。

元から戸籍がなかったため、トットの分もついでに作って二人に住民権なども与えた。

そして遊園地を売る名目として地底人が運営する遊園地、というチラシを大量にばら撒いた。

地底人の写真としてキッキとトットの顔写真を載せたが、大抵の人は話題作りと本気にしなかった。

しかし地底遊園地という言葉に惹かれた者は多くいて、再開日は満員御礼と言わんばかりの盛況となった。


適度な値段設定や新感覚ポップコーンに、スタッフの多くがロボットいうことで来客者に未来を感じさせることも出来た。

人気のロボットは美しい姿を取り戻したフローゼや江戸っ子口調がウケてしまったモグリ。

マニアックな方面として帽子屋やチェシャ猫、ドードー鳥も関連商品が売れるほどだった。

ピエロは元の姿ではなく、ピエロの姿に銀の龍をモチーフにした衣装を身につけていた。

なんだかんだで龍の姿を気に入っていた、とレムは風船を配りながら苦笑していた。


トットは定期的な薬の投与によって回復していた。

まだ車椅子が必要だが、少しずつ動けるようになっていた。

そして眠っていた残りの地底人、女性三人を目覚めさせてみた。

キッキが水晶による解毒法や毒を完全に取り除く浄水装置を開発していたため、もう花を恐れることはない。

女性三人、ネーネ、メ―メ、クーク、は目覚めて最初は戸惑った。

まさか遊園地になっているとは思っていなかったし、自分達も働くとは思っていなかった。

しかし地上の人間で溢れ、活気ある遊園地に心惹かれていつしか楽しそうに司会などの仕事をしていた。

三人とも美しく、花盛りの年齢であったためすぐさま遊園地アイドルとして活躍することになる。


皆川万結の祖母、葉桜哉子は皆川万結に手を引かれて電車に乗る。

電車内は期待に胸を膨らませた家族連れが多く、恋人同士や子供だけの集団もいる。

全員が暗い電車道の先にある光溢れる地下施設に興味津々だ。

駅に着けばピエロのロボットがお出迎え、今はイベントをしているとのこと。


<四体のロボットが出す難題をクリアして、スタンプゲット☆数に応じて景品も変わりますよ!>


帽子屋がバランスゲーム、バットに額を当てて十回回り、目的地まで辿り着けるか。

ドードー鳥は物拾い。頭上から落ちてくる大量のゴムボールを一個でもゲットする。

チェシャ猫は的当て。水鉄砲で姿を消したチェシャ猫の居場所を当てるのだ。

レムは鐘鳴らし。台にハンマーを打ち付けその反動で寸胴が壁を登り高い位置にある鐘を鳴らす仕組み。

見事クリアすれば四体のロボット番人からスタンプがもらえる。

皆川万結は葉桜哉子に後で一緒に回ろうと言う。一人でも可能だが複数で参加しても楽しい遊園地巡りのイベントである。

しかし今回の遊園地を遊びに来た本当の目的は別にある。

各所に設置されたポップコーンワゴンでオレンジ味のポップコーンを買い、アルファベットルームへ向かう。


Dルーム、それは墓場に通じる部屋でなく、アルファベットルーム前の大広場の名称だ。

Dearroom、親愛的なという意味を持たせた場所として名称看板も立てている。


その大広場からエレベータで地下へ行く。そこにはアスレチックを組み合わせた大きな会場が用意されている。

アンドールとデバイスを用意した子供達が、目の前の旗を眺めながら始まりの合図を待つ。


『さーて、今回のフラッグウォーズ!!地底遊園地での開催だぁああああ!!実況はお馴染DJ・アイアンでよろしくぅっ!!』

『今回は男前アイドル目指してみた霧乃ちゃんが解説についてやるぜ、野郎共!気合入れて勝ちに行けやぁっ!!』


男前アイドルというか、それ素だろうと何人かが心の中で呟く。

会場は観客席が360度見渡せるようになっており、皆川万結と葉桜哉子は空いている席に座る。

観客席は程よく満員で、皆川万結は瀬戸海里の姿を見つけて名前を呼びながら手を振る。

瀬戸海里は気付いたらしく鞍馬蓮実に話しかけて、二人で手を振ってくる。

竜宮健斗や遊園地で出会った面々も皆川万結に手を振る。

すると会場内が暗くなっとかと思うと、オーナー挨拶という音声が響き渡る。

スポットライトが会場の真ん中を照らし、そこにはマイクを握ったキッキが立っている。

白い髪に白い肌、赤い目が光に照らされて目立つが、地底人の容姿設定だろうということで大きく騒ぐ人はいない。

まさかその色が生まれつきと思う者はおらず、設定ということで現実ではまかり通っている。

その不可思議な外見容姿が若者で流行り、今では地底人ファッションスタイルという単語まで存在するようになった。


『今回は我が地底遊園地へようこそ!わたくしがオーナーのキッキでございます』


キッキは笑顔で朗々と声を出していく。

その堂々とした姿を管理室からトットは見守っていた。

車椅子で仕事するならここが良いと選んだのだ。

今はもう自分をデータ化して弟を見守る必要はない。

自分の体と目で、歩いていける強さを持った弟を見守ることができるのだ。


『沢山のお客様に来ていただき、わたくしも嬉しい限りでございます』


マスターと青頭千里は管理室映像を密かにハックして眺めていた。

地底人の未来は決して明るくはない。本当の意味では全部救えたわけではない。

脅威のウィルスAliceは現在マスターのパソコンの中に保管されている。

消そうとしても変質してしまうためワクチンが作れない。ある意味永遠の存在と言える。

全てを終わらせられた訳でもない。また牙をむく存在が出てくるかもしれない。

それでも目の前で流れるキッキの映像、その表情は明るかった。

ずっと孤独で一人で殻に閉じこもっていた子供はどこにもいない。

キッキは今光の下で歩いていける場所にいた。


『今回は地上で行われているアンドールの大会、フラッグウォーズをこの場所で開催できることに感謝いたします』


代理人はテレビパソコン片手に会場の観客席の端でその様子を眺めていた。

テレビパソコンにはこちらから映像が見ることはできないが、向こう側からは映像を見ることができる。

クローバー博士は懐かしそうな微笑みで、キッキの勇姿を眺める。

きっとこれから多くの困難や現実の厳しさが襲ってくるだろう。

しかしキッキはもう一人ではない。協力してくれる友達も家族も仲間も手に入れた。

立ち向かう強さを手に入れた今なら、なにも不安に思うことはないだろう。


『とまぁ堅苦しい言葉はここまで!さぁ、皆この地底世界で全力を尽くして戦おう!!』


キッキが手を上げた瞬間、会場内の至る所でクラッカーが破裂して紙吹雪を散らす。

色鮮やかな紙吹雪は温度差で溶ける特別性の紙で、殆どは空中で消えてなくなる。

しかし紙吹雪に紛れていくつか新しいフラッグが競技場の中に投げ込まれる。

中には金色の大得点フラッグも紛れていた。何人かが落ちた先を確かめようとしたが、すぐに見えなくなってしまう。

キッキはニヤリと笑って、マイクパフォーマンスを決めながら高らかに宣言する。






『合戦開始だ!!』







その声は始まりの合図。竜宮健斗達は一斉に走り出す。

その様子を楽しそうにキッキは眺めていた。

応援する声が会場内を反響し、御堂霧乃とDJ・アイアンが状況を説明していく。

時には奪い合ったり、正々堂々とぶつかったり、得点を競ったり。

地上となんら変わりない光景が目の前に広がっていた。

キッキは邪魔にならないように競技場を鼻唄を歌いながら離れていく。





自由気侭に楽しく過ごす我等は地底人。

太陽がなくてもこんなに自由で、こんなに幸せ。

夢と希望の遊園地で、我等は確かに生きている。


我等は…僕はここで生きている。















遊園地編終了









遊園地の事件の数日後、いつもの日常を過ごした時永悠真は家に帰った。

雪に埋もれているように見える北エリアの小さなアパート。

その二階の一部屋を借りている。一人暮らしではなく保護者代わりの柊という同居人もいる。

乱暴にドアを開けて時永悠真は同居人の挨拶に反応しないまま、布団に倒れ込む。

梟のアンドールであるロロは時永悠真の代わりに同居人の元に近寄る。


<すなまい。今日も新規アニマルデータの中に奴を見つけられなくて不機嫌なんだ>

「いえ、問題ありません」


機械的な返答の仕方。同居人の柊は少年のような容姿だった。

特徴的なのは目深にかぶったニット帽と指先しか出ない長袖。

髪はひとくくりにしているが、どこか作り物めいた雰囲気を感じさせる。

その背後にはテレビパソコンが置かれている。

クローバー代理人が使用していたのと同じ物である。


「彼が僕を嫌っているのも知ってます。それ以上に…生きている自分が許せないのも」

<…俺はよく覚えてないけど、昔の悠真は…>

「ロロさん。その昔は、まだ訪れていない時間のことです。だから振り返ってはいけません」




柊は人間のように一呼吸おいてから、冷静に答える。


「もう二度と戻れない…未来の話ですから」







そしてまた別の場所ではエッグシステムを前に、ジョージ・ブルースは息切れ切れに呟く。

激痛に耐えながらも、憎い青い血の男、青頭千里の顔を思い出して自分を奮い立たせる。


「まぁいい、今回は負けてやろう…しかし最後に勝つのは、私だ!!」


ジョージ・ブルースは今回手に入れた要素やデータをシステムエッグに詰め込んでいく。

少しずつ集めているデータを基にシステムエッグはあるプログラムを稼働し続ける。

それはジョージ・ブルースの本当の計画。今回の地底遊園地のことでさえ座興である。

必要だったのは危機的状況下における竜宮健斗達の行動や結果。

まるで物語の主人公のように逆転して勝利を掴む素質。


その素質をジョージ・ブルースは主人公の絶対条件であり、絶対的な勝利に必要な要素として捉えていた。


二番である自分が一番に勝つにはその素質を掴むこと。

そのための準備を着々と進めていき、最終的には勝利をこの手に掴む。

だから当分は気付かれないように大人しく隠れていよう、と嫌な笑いをもらす。

隠れている間に事件がおそらく二つくらい起きるだろうが、準備期間としては十分である。

システムエッグに集めたデータ、主人公に必要な素質を詰め込んでいく。

その情報を元にしてシステムエッグはジョージ・ブルースの望みを叶えようとする。

システムエッグに意思はない。ただ唱えられた望みを叶えるだけである。







これは次の事件に繋がる未来の話と、その事件の遥か先に起きる最悪の前兆である。


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