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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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集大成の結果

崋山優香が腰抜けてなんとか這いずり出る頃にはキッキ達が集まっていた。

ドードー鳥と一緒に絵心太夫達、チェシャ猫と一緒に竜宮健斗達も到着する。

大丈夫かと手を伸ばす竜宮健斗に、崋山優香は八つ当たり気味に遅いと怒鳴る。


「こっちはあの訳分からない帽子屋と一緒に空飛ぶわビーム砲で狙われるわで大変だったんだからこの馬鹿!!」

「お、俺だって棚に押し潰されたり滅茶苦茶な頭痛に襲われてたんだから仕方ないだろう!?」


若干押され気味な竜宮健斗だがなんとか言い返す。

まだ言い足りなさそうな崋山優香ではあったが、手を差し出して立たせてと頼む。

竜宮健斗は素直に手を差し出して、崋山優香はその手を握ってゆっくり立ち上がる。

その間にキッキが胴体の下に潜り込んでガラスの棺桶を確認する。

同時に玄武明良と扇動美鈴が到着、玄武明良は倒れるように地面に膝をつける。


「ぜぇ、はっ、と、鳥と猫と帽子…とゴーレム集まれ…」

<なんだにゃ?>

「お、おぇ、お前らのCPU内にあ、りゅ、る不可解なファイルを集め、て…二進法にへ、へふぅ…」

「えっとファイルを二進法に変換して、その配列でAliceのデータとあるデータを選別するんです」


息絶え絶えな玄武明良に代わり、扇動美鈴か息を整えつつ説明する。

本当に体力ないなぁという視線が集まる中、玄武明良は気にせずパソコン画面を開く。


「そ、んで…Aliceに触れてないロボットのCPUを使う。アンドールは駄目だ、遊園地のロボットは?」

「な、何の話だよ!?大体多くのロボットはAliceに…」


相川聡史が反抗する横で、皆川万結がフローゼを指差す。

体はボロボロだがCPUは無事で、言語機能なども問題なく機能している。

皆川万結は幼いながらも花咲くような笑顔で言う。


「ようせいさんならだいじょうぶだよ。だってまゆをたすけてくれたもん」





布動俊介は目の前の光景に目を疑う。

疑っても目をこすっても変わることない現実だがあまりにも非現実な視界。

遊園地の地面にはロボットや建物の残骸が散らばり、青空を映していた壁面のスクリーンもボロボロ。

駅の前には残骸を積み上げたバリケードに崩れ落ちた天井の一部。

一番の異様は駅の目前で動きを止めている巨大な銀色の龍。塗装や角ばった姿からロボットとわかる。

そのロボットの足元や周囲に見覚えある姿がいくつもある。


「い、行かなきゃ!」

「あ、待って…!?」


走り出した布動俊介を止めようと肩に手を置いた伊藤三月は瞬き一つ分の後に驚く。

確か瞬きする前は駅の前で有川有栖達と一緒にいた。

しかし瞬きした後は布動俊介と一緒に遠くにあったはずのロボットの近くまで来ていた。

龍のロボットを見上げればその大きさや仰々しい姿に言葉も出ない。

二人に気付いた錦山善彦が、口を大きく開けて動きを止めた後に抱きついてくる。


「うおおおおお!!無事だったんやなー!!心配したでぇ!!」

「うぐっ、よ、善彦さんぐるじ…」

「ぐずっ、汗臭い…」


走り回ったりして気にかけていなかったことを伊藤三月にズバリと言い当てられる。

だが錦山善彦は感動のあまり抱きつきを止めずに籠鳥那岐を呼ぶ。

すると竜宮健斗達も顔を覗かせて、嬉しさに顔を綻ばせてガッツポーズをする。

そこへやっと追いついたという様子で有川有栖達がやってくる。


「ちょ、二人共どうやって移動…!!けっんとさぁああああああん!!」

「おー、有栖も無事だな!良かった良かった!!」


勢い良く抱きついてきた有栖を受け止めつつ、竜宮健斗はいつも通りに笑う。

その様子を見て刺激された伊藤三月はどうやって移動したかを頭から吹き飛ばして、竜宮健斗に寄り添って袖口をつまむ。

明らかに計算された可愛らしく確実に男の保護欲を掻き立てるような幼い仕草。

もちろんそんなことは生まれた時から一緒である伊藤二葉と伊藤一哉はわかっている。

だが有川有栖も負けじと女性的に胸を押し付けて足を軽く絡めていく。

成長途上以前の問題である板のような胸に肉がつく前の細い脚では魅力半減ではある。

そんな静かな女の意地を布動俊介と基山葉月は理解し、下手に刺激しないよう見て見ぬ振りをする。

幼いながらもそんな女性らしい行動について、一切竜宮健斗が気付いてないのもいつも通りである。


「け、け、健斗さん…これなにが…」



傍らにある銀色龍の巨大ロボットを指差して布動俊介は尋ねる。

竜宮健斗は目を閉じてどう説明しようかどうかで迷い、答えが出る前にキッキが声かける。


「健斗、悪いけど棺桶を外すけど僕だけじゃ支えられないし体が大きい人は潜り込めないから小さな人何人か…」

「応、分かった!俊介達来て早々悪いんだけどキッキの作業手伝ってくれねぇか?」

「は、はぁ………あの棺桶外すって、なにさせられるんですか?」

「?…そのまんまだけど」


全く事情説明されてない布動俊介達はガラスの棺桶やキッキの兄について何も知らない。

なのでこの後龍の体の下に潜り込んで眼前に広がる死人のように寝ている地底人に対し叫び声を上げることになる。

叫び声を聞いた凜道都子は訳が分からないといった様子で呟く。


「本当の死体より綺麗なのに…どこに怖がる要素があるんだろう?」

「俺はテメーの言葉の方が怖ぇよ」


袋桐麻耶は深く追及せずに簡単に呟きを聞いた者達の心の声を代弁した。





帽子屋、レム、チェシャ猫、ドードー鳥の四体はCPU内にある不明のファイルを探し出す。

負けた時に個性を塗り替えるほどの動きを見せたファイル、忘れるはずがないとすぐに見つけだす。

現在AliceはピエロのCPU内でマスターが第三者の意思による変質を押さえているため、ただのプログラムとして存在するだけだ。

もちろん現場に合わせた自己変化の要素もあるが、マスターが操作権限を奪った際にすぐさま無効化している。

ピエロもその膨大なデータを感じているが、動きが見られないため内部監視だけしている。


「クローバー博士曰く、Aliceはウィルスとして必ずCPUに多大な負荷やデータ破壊を起こしているはずだ、と」


現場に合わせた変質に第三者による変容など、Aliceは未知な部分が多い。

システムエッグが作ったウィルスプログラムであるため現代科学で手に負えるかどうかわかった物でもない。

これから行う非常識で重要性の高い作業をするにあたり、Aliceに巻き込まれてない安全なCPUを確保したかった。


『こちら代理人…ANDOLL*ACTTIONの完全音源データ送信準備できました』

<…本当に私とオーナーのお兄様とクロスシンクロするのですか?>

「一部分だけな。じゃあ作業内容の確認だ」


クローバーは玄武明良にこれから起きる出来事を知っているように説明した。

Aliceに呑み込まれたキッキ兄のデータはウィルスの一部として活動していた。

だからAliceは側面的な考えをすればキッキの兄自身ということになる。

状況に合わせて自身を変質するAliceがもしも、キッキ兄の意識も混ぜ込んで活動していたら。

そのもしもを広げていき、弟のためにデータになってまで見守ろうとした兄が取る行動など一つ。


弟を守ること。


なら必ずAliceの足跡にはキッキ兄の意思が残り、確実に異変として残っているはず。

異変は変化となり、逆転するきっかけになったはずだとクローバーは言う。

そこで集められたのがゴーレムのレムを基本とした主犯格といえるロボット達。

彼等は本来破壊衝動や虐殺思考に満ちた人格データへとAliceによって改変させられていたはず。

それが負けた途端に本来の人格や人馴染しやすい性格へと変貌している。

まるで奇跡のような出来事でキッキとしては嬉しい出来事ばかりだ。

だが何度も都合よく奇跡が起きるはずない、起きたならそれはなにかしらの要素や必然性がある。

そして子供達を守っているようで、キッキにとって喜ばしいことしか起きていない。

レム達のデータ変化の根源はキッキ兄の意思であるはずだと、クローバーは言う。


『その意思の欠片を拾い集めて、Alice本体の中からキッキくんのお兄さんの意識だけを抽出する』


返歌を起こした小さなデータを集めて、Aliceに照合をかけて一部分だけの抜粋。

もちろん言うのは簡単だが、一人分のデータとウィルスのデータは膨大である。

処理には時間や負荷がかかるが、そこは玄武明良やマスター達がフォローすることになる。

そして繊細で危険性の多い作業のため、少しでも安全にするためAliceに関与してないCPU、フローゼが必要となる。

しかし摘出だけでは意味がない。その意識を人間の体に戻さなくてはいけない。

パソコンから人間のデータ変換、そして移行などは現代では難しい、というか今ある設備では無理と言わざるを得ない。

そこでANDOLL*ACTTIONが必要となる。


ANDOLL*ACTTIONとはアニマルデータ=本来人間のデータを別の体に移動させる方法である。


悪用すればそれこそ無差別に人間の魂をデータ化して、ロボットの体に移動させる暴挙もできる。

だが最小限かつ有効的な使い方をすれば、人間一人分だけのデータを元の体に戻すこともできる。

それには不完全な音源では不可能だったが、なぜかクローバーは完全な音源を手にしていた。

六つの本当の楽器と最高の演奏で奏でられた、現代にはないはずのデータである。

ここで玄武明良はクローバーの正体にあたりをつけていたが、追及せずに作業を進めていく。


まずフローゼのCPUでウィルスと欠片データの照合。該当するデータだけを移動させる。

データ移動とウィルススキャンを完璧に行い、問題なければANDOLL*ACTTIONによってクロスシンクロを行う。

その際にはヘッドフォンでフローゼとキッキ兄だけで行うように調整する。

あと目覚めるかどうかはキッキ兄自身の問題である。目覚めなかった時、それは本当の敗北を意味する。





棺桶が無事に外されて龍の腹の下から運び出される。

その段階で小さな歓声が上がるが、まだ終わりではない。

玄武明良と扇動美鈴は引き締めた顔で他の四人に合図を送る。

棺桶をフローゼの傍に持って行き、蓋を開けてヘッドフォンを装着させる。

フローゼ自身にもヘッドフォンをつけさせて、安定した場所に置く。


「よし、レム、帽子屋、チェシャ猫、ドードー鳥。フローゼにデータの欠片を送れ!」


一斉にフローゼのCPUにデータが送られてくる。


一つは映像データ。包帯を不器用に巻くロボット少年の笑顔。

一つはことわざの文字列。どんなに小さくても戦うという鳥のことわざ。

一つは写真データ。ガラスの棺桶が安置されていた場所。

一つは龍の弱点。虐殺を防いだ一番のきっかけ。スイッチの位置は棺桶が固定された真上。


四つ全てが確かに繋がっていた。そのデータを二進法に変換する。

その0と1の並びを整理し、Aliceにぶつける。

不要な並びは排除していく。泥を洗い落とすように、引きずり上げるように。


<…もう少し!もう少しなんです…、っ、もう少しなのに!?なんで!?>


フローゼが慌てたように声を出す。

照合して残ったデータが少なすぎる。これではロボット一体分にも満たない。

慎重に照合していたのに、欠片が足りないのかとフローゼは愕然とする。

しかしそれでは後どこに残っているのかと、Aliceに侵されたロボットはあと何体いたかと混乱し始める。

玄武明良達も声を聞いて目を見開く。ここまできてまさか足りないとなるとは思わなかったのだ。

キッキが青い顔をして両手を握る。竜宮健斗達も見守るしかできない。











<…フローゼ、最後はおそらく…私です>









元はピエロであった龍のロボットが自身に残っていた覚えのない記憶データをフローゼに渡す。

それは幼い兄弟の眩いほどの思い出。夜にしか行けなかった光の遊園地の記憶。

データの中にあった全ての光景はどこかで見たことあるもので、フローゼは気付いて呟く。


<…繋がって、いたんですね…>


幼いキッキと兄が訪れた遊園地。

光溢れる愉快なピエロや優しい妖精のような店員、優しい老婆からもらった蜜柑。

たった一日、いや一日にも満たない小さな思い出をキッキがとても大事にしていたこと。

その思い出だけを頼りに、支えに、心の拠り所として、地底遊園地ワンダーグラウンドが作られた。

キッキが大事にしていた思い出、それは眠っている兄にとっても掛け替えのない思い出だった。

その記憶データを0と1に変換、膨大な配列が表示されるが過負荷など気にしてられない。

集まった五つの配列を元に、再度Aliceにデータ照合していく。


丹念に丁寧に繊細に…赤子を抱くように少しずつ。











<この量なら…ウィルススキャンと容量確認を!>





玄武明良達はフローゼの中にある膨大なデータ一つを素早く検査していく。

少しでもAliceのような不純物が残るだけで体にどれだけ異変が起こるか分からない。

しかしこれさえ終わらせればクロスシンクロで、意識を体に戻すだけ。

全てを救う、馬鹿な妄想のような言葉を現実にできるところまで、あと少し。


『こちら代理人。データの容量は問題ありません』

『こちらマスター。ウィルススキャンの結果は良好。Aliceはどこにもいない!』

『こちら扇動岐路。クロスシンクロ深度調整プログラムをそちらに送信した』

「明良さん、音源再生はバッチリです!」

「…目を、覚ましてくれよ…クロスシンクロスタート!!」





玄武明良の掛け声と共に音楽がヘッドフォンから流れ始める。

フローゼはCPUに会ったデータが少しずつ移動していくのがわかった。

これで安心と思った矢先、違和感が生じる。

データは移動している、それは確実だ。






しかしどこに移動しているのか分からない。まるで行方不明になって消えているようにも感じた。






子供達やアンドール、ロボット達全員が見守る。その視線はキッキの兄に集まっている。

データ送信100%とパソコン画面には表示される。あとはキッキ兄が目を覚ませば何も問題ない。

キッキは白い手が鬱血して赤くなるほど強く握りしめる。

竜宮健斗は信じたことがあるかどうかわからない神様に祈ってみた。

誰もが頑張ってきた、夢中で行動して、全てを救うんだと意気込んていた。

だから目を覚ますはず、大丈夫だと誰かが自分に言い聞かせる。

一分経った。





































キッキの兄は目を覚まさなかった。




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